第120話 山積み
双眸を失ったクラビーを抱えてダンジョンを歩いていると、意外にもあっさりと出ることができた。
というのも、クラヴィアが入ってきた道を進んだのだが、先にはもう一つ広い空間と、その先に扉があった。
やはり、待ち構えてダンジョンボスをやるのも想定していたのだろう。
リーによって別のエリアに移動させられていたおじさんとお姉さんもすでに脱出しており、扉を開けると不安そうな顔で待ち構えていた。
どうやら、扉はダンジョン内からしか開けなかったらしい。
心配になって集まっていた住民たちから盛大な拍手で迎えられる形となった。
ダンジョンらしいことなど一つもなく終わったが、街に大きな被害はなかった。
街の中央に現れたダンジョンだが、これもまた意外なことにあっさりと破壊できた。
中に誰もいないせいか。
リーにお願いして、魔法で一瞬だったから、リーが極端に強いだけかもしれない。
***
翌日になって、俺とオウカはギルドに呼ばれた。
ギルド長室に入ると、おじさんとお姉さん、それにマティヴァさんが椅子についていた。
クラビーは昨日のうちに教会へと連れて行って休ませている。
「それじゃあ、被害報告を頼む」
俺とオウカが座るやいなや、話が始められた。
お姉さんが立ち上がって一枚の紙を読み上げる。
「魔族と称する二名の少女、およびクラヴィアカツェンによる急襲でしたが、
まずは守衛所で一名。
ダンジョン内部で八名が殺されています」
「全員、Bランクはあったはずだがな」
「クラヴィアカツェンによって操られていた死体と同じ数なので、間違いないかと」
Bランクなら、相当な実力を抱えているはずだ。
それを一人で屠ったクラヴィアカツェンの実力は本物だったのだろう。
「まあ、俺とモードもぼっちがいなかったら殺されてただろうしな」
「ツムギさん、感謝いたします」
お姉さんが深々と頭を下げる、俺は軽くうなずき返した。
「それで、俺たちがいなくなった後……クラビーのお嬢ちゃんだが」
俺は起こったことを語れる部分だけ語った。
まとめれば、クラビーが邪視にかかって操られていたというだけだ。
「そうか……邪視の呪いか」
「本当に忌々しいですね。妖狐の力は」
お姉さんの言葉に、オウカの身体が微かに震えた。
俺はそっとオウカの手を握りつつ、会話を移す。
「今まで街に魔族含めモンスターが入ってこなかったのは精霊の加護だってのは知ってるよな?」
「ああ、この街に住んでる奴なら、ガキの頃から聞かされるものだ。
そうか、突然現れたあのお嬢ちゃんは精霊だったか」
「祠のことは知っていましたが、本当に精霊が祀られていたなんて思いもしませんでした」
納得してもらったところで、オウカの頭巾の中からリーにも出てきて貰った。
「それじゃあ、ここからが本題だ。
現在この街は精霊の加護がない。
さらに、ギルマスが亡くなってギルドをまとめる人もいない。
これらを早急に解決しないといけないな」
まだ問題は山積みである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます