第164話 繋がりを力に変える手段

 はるか昔、まだ神と人類が共に生活していた頃。

 神は人類を愛し、人類もまた神を愛していた。


 しかしある時、魔族という存在が生まれ、世界を征服しようと攻撃をしかけてきた。

 人類は戦う決意をした。しかし、魔族は圧倒的な力を持っており、人類では到底敵う相手ではなかった。

 そこで神は、人々の繋がりを力に変える手段を与えた。

 こうして力を得た人類は魔族を打ち滅ぼし、世界にまた平和が訪れたのである。


「神の与えた力。それがキズナリストと言われている。

 大昔には魔族がいたのかもしれない。その子孫が魔物とも言われている。

 こうした昔話や神話がいくつか存在していて、それらすべてがキズナリストに関わるものなんだ」


 黒板に刻みながら、教員は神話とキズナリストの関係を話す。

 今日は窓から差し込む日差しが心地よく。小鳥の囀りがよき子守唄として教室に響いていた。

 既に生徒の半分以上が脱落し夢の大冒険へと旅立っている。

 教員はそれを注意することもなく講義を進める。


「それだけ昔からあるキズナリストだけど、実はあまり研究が進められていない。

 信仰的な問題もあるが、その特性がシンプルなせいもある」


 教員は黒板にさらに文字を加えていく。


「基本としてあるのはステータス上昇だ。

 契約をした相手のステータスが一部加算される。これはみんな当たり前のように経験してるからわかるよね」


 俺には分からない内容である。眠さが増していく。


「ステータスの加算は相手の元のステータスのみだ。どんなにキズナを結んでステータスが高い人でも、元々のレベルが低ければ、その人から加算されるのはほんの僅かになる」


 特に冒険者はそこらへんにシビアで、一定のレベルを超えていないと結ばないと言い切る輩も多かった。

 そういう人を救済するために誰とでも結ぶ高レベル冒険者もいたにはいたのだが、


「キズナリストはレベルによって上限がある。キズナリストを結ぶときは慎重に。安易に結んで切るを繰り返して殺された人もいるからね」


 キズナリストは破棄が容易なために、その性能の価値が正しく認識されていないこともある。


「だからと言って、誰とも結ばないのも問題だ。

 人類は弱い。森の魔物にだって簡単に殺されてしまう。

 己の身を守るため、また、人との繋がりを重んじるという意味でも、結べるときはちゃんと結ぶべきだ」


 ちらりと俺の方を見ながら言わないでほしい。


「ほら、ツムギ言われてるわよ」


 わかってるから肘でわき腹を突かないでほしい。


 教員は続ける。


「それじゃあ次は、キズナリストで行える魔法についてだ」

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