第165話 キズナリストで行える魔法

 キズナリストで行える魔法……というのは、俺はまったく知らない。


「さっきも言ったけど、キズナリストは特殊すぎるためにあまり研究が進んでいない。

 だから知られている魔法というのも少ないんだ」


 黒板に書き連ねられる効果を眺める。

 知っているものと……知らないのもある。


「みんなが一番使っているのが交信だろう。

 キズナリストの相手を連絡を取れる便利な手段だ」


 この世界、電話もない割には手紙も全く見かけないなと思ったら、そんな機能が存在していたのか。

 いわゆるゲームのチャット機能とか通話機能だよな。

 ちらりとシオンを窺う。俺の視線に気付いた彼女は、首元の02と刻まれた数字をトントンと突きながら「何かしたらパパに言いつけるから」と口角を吊り上げる。何もしないから脅さないでほしい。


 というか、以前の戦いでゴーレムを経由して通話してたのは……ってあそこはキズナリストを交換していなかったのか。

 もしクエストをパーティーで行う場合は、キズナリストを結ぶのが必至になるかもしれない。俺は結ばないが。


「次は冒険者に人気の魔法だね。キズナ召喚!

 自身の魔力をすべて消費することで、キズナリストの相手を呼び出すことができる」


 ギルドで昇格試験を受けた時に、センとナナが使っていたものだな。


「これによって戦略の幅が大きく広がったと言われているよ。

 ただし、魔力消費量の問題もあるし、何より召喚時に相手が了承しないと不発になる。事前に伝えておくことが必要だ」


 一方的に呼び出せるわけじゃないらしい。まあいきなり呼ばれるものだったら迷惑極まりないか。


「他には特殊なものとして、キズナアビリティと祝福ギフトがある」


 知っているのと、知らないの。


「キズナアビリティは俗称で、正式な名前はない。

 アビリティを持つ人たちの中には、相手と似たような名前のものがある。それはキズナリストを結んだうえで一緒に使うととんでもない力を発揮するらしい」


 見る機会が少ないために知る人も少ないと思っていたが、授業で教えるくらいには知れ渡っていたのか。俺も風のうわさで聞いた程度だったけど。


「君たちがアビリティを手に入れて、名前の似たアビリティを持つ人をみかけたら積極的にキズナリストを結んでいくことをすすめるよ」


 教員が俺にウィンクしてきた。ほっとけ。


「最後に祝福だね。人生に一度あるかないかのアビリティだ」


 聞いたこともないし、レア度が人生レベルかよ。


「研究者によれば、アビリティ欄にいつの間にか現れているらしい。

 使用すると、何かしらステータスに素敵な影響を及ぼすとか。

 確認された事例が少数の為にパターンは分からないみたいだね。

 ただ、研究者曰く「神から与えられるご褒美」だそうだ」


 そんなに希少なものを何度か確認できてるのがすごいわ。

 この世界の人口で考えたら結構出やすいみたいなことないのだろうか。


 ……まあ、出てこない以上、関係のないおまけである。

 いや、よく考えたら、召喚されたときに貰ったアビリティがそれか。めっちゃ身近にあったわ。


 大きな鐘の音が教室に響く。


「よし、今日はここまで。みんなもどんどんキズナリストを結んでいこう」


 教員が教室を出ていく。

 キズナリストは、フレンド機能としていくつか特典と呼べそうな魔法があるが、ともかく他者と関わるものばかり。

 やはり現状ではぼっちに必要ないものだ。

 キズナリストを研究してる人にもっと予算をあげてください。

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