第306話 最悪の事態
「全員……か」
「そうだな。そして警戒しろ」
カイロスに言われて、状況の深刻さを悟る。
ここは一部のものしか正しく利用出来ないと言っていた。
にも関わらず、あるのは無惨にも切り裂かれた死体。
「ここで、やられたのか」
「道はまだ続いている。
この奥には王族が何日も過ごせるような部屋がある……たぶんそこにいるだろう」
それはエル王女を指したのか、敵のことを指したのか。
どちらにせよ、俺たちはそこに向かわなければならない。
「これ以上、相手の好きにはさせられないな」
もしここまでの出来事が魔族だったとして、エル王女をどうにかすることと魔王復活が繋がるのかはわからない。
それでも、止められるものは止めなければ、相手の好き勝手にさせたままではいずれ手に負えないほどの状況に追い込まれるだろう。
カイロスは死体一人一人の顔を確認して、その名前を呟きながら、開いていた目を閉じる。
「……いくぞ」
再び進む。
「騎士団長のがなかったな」
「まずエル王女がここで殺されていないということは、誘拐目的が大きいだろう。そうであれば、何日か後に手紙でも届くはずだ」
「なら騎士団長もエル王女を盾にされているとか……?
なら、キズナリストを外して素のステータスを強要される可能性が高い」
「騎士団長の名は海の向こうまで通っているらしいからな。その強さを相手が警戒したということは十分ありえるだろう。
……いや、それはもう願望だな」
カイロスが自嘲気味に鼻で笑った。
「私たちは最悪の事態を想定しなければいけないし、そしてもう確信に近い」
「どういうことだ?」
「死体の……従者たちの切傷。
私には見覚えのあるものだった」
「……そういうことか」
俺にも最悪の事態が見えてきた。
それを確信させる言葉を以前聞いている。
『紡車は私たちの味方? 敵?』
少なくとも両木には見えていたはずだ。
敵となり得る存在のステータスが。
だからこそ、彼女は俺のことも疑ったのだ。
その時に気付いていれば、この事態を避けられたのかもしれない。
しかしそんな後悔はもう遅い。過ちは現実の負として上乗せされる。
道が終わり、大きな空間に辿り着いた。
そこは部屋と言うよりは宮殿と言った方が正しいくらい広々としており、
その奥に、一人の男が立っていた。
輝かしき剣を床につき、白の降るプレートアーマーで身を纏い、顎の傷を覗かせながらこちら見て笑みを浮かべてくる。
「想像以上に早く来られたな。
待っていたぞ――カイロス・ネメア!」
「信じたくはなかったよ――バルバット・レートロード!」
◆バルバット
種族 :魔族
レベル:596
HP :5960/5960
MP :5960/5960
攻撃力:5960
防御力:5960
敏捷性:5960
アビリティ:壱
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