第178話 倒してしまっても
「どうやらツムギ君は……いや、Gクラスは問題を起こすのが好みらしいね。
しかも、魔法師団団長様も混ざってとは恐れ入った」
レイミアは俺とライムサイザーを一瞥する。
傍からみればGクラスの二人、と王国魔法師が騒いでいる様子にしか見えないか。
自分が含まれたからか、カイロスが眉を顰めた。っていうか団長だったんかい。
「僕は彼の人探しに付き合っていただけだ。
騒いでいるのはそこの……魔族だ」
「ほう、魔族ですか」
全員の視線がライムサイザーに集まる。
「そんなに俺様を見つめちゃって!
もしかして、惚れた?」
一閃。気づけばレイミアが動いてライムサイザーを切り裂いていた。
しかし半液状化の奴には無意味だ。
分裂した身体がすぐに戻る。
「冗談が通用しないとは、これだから人類は。
それとも図星かなあ?」
「冗談にもならない戯言は他者を不快にさせるだけさ。
それも知らないとは、魔族は教養に乏しいらしい」
「あぁ!?」
鼻で笑うレイミアに対し、ライムサイザーが眉を上げた。
丁度いい。
「生徒会長。そいつのこと任せていいか?」
「人探しだったかな?
Cクラスの? それとも君の奴隷かい?」
「Cクラスの方だ。誘拐された」
「それは早急に見つけないといけないね。
いいだろう、そこの魔族は私がお相手しよう。
エル王女も魔族の撲滅を望んでいらっしゃる。それに、この状況だと彼も一枚噛んでいるのだろう」
俺たちの話を聞いていたかのように、状況を見事整理した。さすが生徒会長やっているだけのことはある。
「できれば捕獲して国に献上したい所だが、倒してしまっても?」
「構わないけど……」
それ死亡フラグじゃないですかね?
「ともかく、任せた!」
「頼むぞ」
俺とカイロスは正門に向かい走り出す。
「あぁ!? メインディッシュが逃げるとかふざけ――」
「ふざけているのは君だろう」
「あぁあ!?」
後ろで風を切る音。ライムサイザーの叫び声。
あらやだ、普通に大丈夫そう。
***
正門前までついて周囲を見回す。
が、建物が結構大きいのばかりで遠くまで見えない。
「おい団長さん、スラム街はどこだ?」
「あっちだが、結構距離がある。馬車を使った方が早い」
カイロスの指さす方を確認する。
「馬車でも遅い」
俺はしゃがみ込んで身体から空気を抜くように息を吐く。
そしてクラウチングスタートのポーズ。
全神経を脚に集中。
ある程度の位置を定め――跳んだ。
盛大にジャンプした。
「ぁ!?」
カイロスが驚嘆したのだろうが、その声が一瞬で遠くなった。
数々の屋根を越えて、その中に土煙が上がっている場所を発見した。
あそこだな。
真上に来たところで、身体に回転を掛けて勢いを消す。
そして真下に着地した。
想ったよりも勢いある落下と、床が土でできているせいか土埃が舞う。
しかし、一瞬視界に入った少女を見逃すことはなかった。
腕を伸ばし、彼女の手を握る。
「シオン、待たせたな」
シオンは驚いた様子から、その視線は俺へと定まり、
「ツムギぃ……ッ!」
ボロボロと涙を零すのだった。
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