三つ巴(焔の森)
第369話 焔の森
その後も色々検証しながらオウカと一緒に歩き回った。
最初は俺だけで検証しようとも思ったが、それでオウカとはぐれたら意味が無い。腹を空かせているオウカには申し訳ないと思いながらも歩き続けた。
「結果、何か分かりましたか?」
「何の成果も得られませんでした」
二人で大きくため息をつく。
森の中はすっかり日が暮れて道も見えない状態になってきた。
仕方なく今晩は教会の中で一夜を過ごすこととした。建物があったただけマシだろう。
「無意識に道を曲がっている様子もなかった。
だからどこかで境界線となる場所があるはずだがそれも見つからない」
「お手上げですね」
「こうなると、森が栄養を求めて人をさ迷わせている可能性もあるなあ」
ただ、建物がある以上、以前は人が出入りできたわけだ。
そんな話がある場所がどこかにあっただろうか。
俺は火球を宙に浮かせて建物内を明るくし、地面にナイフで地図を描きだした。
「これは?」
「ハーニガルバッドの領地がある大陸の大まかな地図だ」
大まかも大まか。各方角の象徴となるものを一つずつ描いていくだけの落書きレベルだ。
大きな丸をひとつ書いて、上側に城のマークを刻む。
「オウカ、今何時頃だと思う?」
「えーっと、たぶん塔の
「そのくらいだな。それがこの西側だ」
城のマークの斜め左下に塔のマークを刻む。
「あ」
オウカが気付いて声を漏らす。
「地図と時間が関係してるんですね!」
「そういうことだ」
「塔って以前お話いただいた竜が生まれたっていう……あ」
「他に何か気付いたか?」
「い、いえなんでもないです」
「ん? まあともかく、最初の塔は西にある。んで王都が北だ」
「だから塔の月刻の次は王の影刻なんですね」
「そうやって続くのが陽の起刻、旅の始刻だな」
「陽と旅は地図と関係……ないですよね?」
「そうだな」
右に木のマーク、下には街のマークを刻んだ。
「王都を北として配置した場合、こんな感じで時間の表現と一致する。旅についてはソリーが冒険者の街という部分から来ているんだろう」
「じゃあ、陽は……東は何があるんですか」
「ここにあるのは、かつて魔王が住んでいた城。
それを覆い隠すように存在するのが――
そう答えると同時に、なにかの風切り音が聞こえた。
地図の上に何かが刺さる。
――矢だ。
しかも魔力で形作られた青白い矢で、すぐに消失する。
「どうやら望んでいた方みたいだな!」
「続けて来ます!」
オウカが教会の入り口に目を光らせる。
一発目は運よく外れたのだろう。気配がなかったから全く気付かなかったが、こうなってしまえばさすがに察知できる。
「人数は――一人か!?」
「いえ、たぶん他にも!」
正面から矢が二本。
さらに、天井の穴の開いた部分から二本。
一人ではないらしい。俺の感知できる範囲では一人なのだが。
「遠距離からなのか!? オウカ!」
「はい!」
手を伸ばすと、オウカがすぐに握り返してくる。
俺は彼女を引っ張り胸に抱きかかえると、割れたステンドグラスの隙間から教会を抜けだした。
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