第63話 笑顔
眩い光が部屋を覆いつくし、やがて視界が元に戻る。
俺の目の前に残ったのは、アンセロの下半分だった。
微動だにしない残りを異界の眼で確かめる。
◆アンセロ
種族 :-
レベル:-
HP :-
MP :-
攻撃力:-
防御力:-
敏捷性:-
完全に死んだか。
「終わった……んですか?」
後ろを向くと、オウカがその場で動かずこちらを見ていた。
「ああ、魔族は倒した」
「その、ツムギ様……その影は」
俺の後ろには青い目と白い牙を光らせた影が蠢いている。
「……俺のアビリティ、だと思う」
「お、思う!?」
「正直、よくわからない」
半分くらい勢いで戦ってたから、なんであんなことができたのか自分自身もよくわかっていないのだ。
ただ、二か月半前に地下に閉じ込められたとき、この力に助けられたことを思い出した。意識を失っていたと思っていたが、どうやらこのアビリティによって闘い続けていたらしい。
6日間の戦闘。俺のレベルが異常に高いのもそのせいか。
頭の中でいろいろと納得した
「す、すごいです! すごいですよツムギ様!」
オウカは歓喜の声でぴょんぴょんと跳ねながら駆け寄ってきた。
「魔族を倒してしまいました! 冒険者が一人で倒すなんて聞いたこともないです!
偉業ですよ、偉業!
それに、未知のアビリティを、こんなすごい力をお持ちだったなんて!
きっとツムギ様は神に選ばれた存在なんですね!
他の人だってこんなすごいの、絶対持ってないですよ!」
オウカからは高評価を頂いた。
「これが怖くはないのか?」
「ツムギ様のアビリティが怖いなんてことありません! 瞳が青色なのが邪視を思わせて些か不安ですが、でもアビリティですし関係ないですものね!
モンスターの召喚や使役に近い能力だと思います。滅多にないんですよそういうの!」
オウカからは絆喰らいがモンスター系にみえているらしい。
召喚や使役が滅多にないというが、今しがたどちらも使っていた魔族がいたような気がしますよ?
「まあ、このアビリティについては帰ってから考えよう」
そう決めたところで、影が徐々に小さくなっていき、俺の形に戻っていった。
「それに、俺は一人で魔族を倒していない」
「え?」
「オウカ、お前がいてくれたから倒せたんだ」
「私は、なにもしていません。むしろツムギ様にご迷惑を」
「いいや、お前が隣にいて、守りたいものがあると思わせてくれたから、俺は理由をもって戦えた。それってすごい力になるんだよ」
オウカの頭の上に手を置いてわさわさと撫でる。
「ありがとう」
「私こそ……ありがとうございますツムギ様」
俺とオウカの間に笑顔が生まれる。
――が、互いの表情はすぐに消えた。
「!?」
微かに感じた違和感。
アンセロの肉体が蠢き始めていた。
「ツムギ様」
「まだなんかあるのか」
オウカが俺にしがみつく。
警戒心を最大限引き上げて、蠢くアンセロの肉体を注視する。
やがて肉体は動きを止め。
『初めまして、人類』
低く野太い声が発せられた。
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