第238話 高祖父
「どうして魔族が、お前がここにいる!」
「魔族? 創始者を魔族呼ばわりだなんて酷いお方ね。
ああ、そうやって実績をでっちあげてきたんですの」
俺が叫ぶと、妹メイドが蔑んだ視線で嘲笑を浮かべる。
魔族じゃない? 創始者?
ふざけるな。ステータスが魔族だと、化け物だど語っている。
「高祖父が、どうして。
いや、あの方は亡くなっている。敬愛すべき高祖父を騙る貴様は何者だ!」
レイミアが動揺を見せるが、すぐに冷静さを取り戻す。
同時に、その発言は相手を敵と判断したことになり、ラセンさんが距離を詰めていた。
一閃。刃のぶつかり合う音が響く。
「創始者様に襲いかかるなんて、失礼ですわよ?」
「フェリシア……」
ラセンさんのダガーを、妹――フェリシアが鞭の柄で受け止める。
よく見れば、柄の部分が仕込み刀になっており、気づいた時にはフェリシアがそれを抜いて振るっていた。
ラセンさんがそれを避けてレイミアの横に戻る。
一瞬の沈黙。
すぐに笑い声を漏らしたのはアンセロだった。
「驚くのも無理はないでしょう。
年齢で言えば200は越える。
生きているはずのない者が立っていれば、誰であれ驚くものです」
「本当に、高祖父だというの、ですか」
「でなければ、この魔法を誰が作れようか」
レイミアの疑問に、アンセロは床の魔法陣で答える。
青い光が強まり、マティヴァさんの表情が苦痛に歪んだ。
「私は精神干渉するアビリティを持っていた。それを解析し、世界に介入して、人の罪を目に見えるようにしたのが今の奴隷魔法です!
しかし、奴隷魔法は人の対等さを壊す。故にミトラスは奴隷魔法下にある人類をキズナリストから外しました。
が! いまの私であればキズナリストの影響なく精神干渉を行える!」
「そうじゃねえだろ!」
アンセロの言葉を遮って叫んだ。
目の前の男が高祖父だろうが、創始者だろうが、そんなのは関係ない。
「お前は、俺が殺したはずだ!」
「んんん? 存じませんがぁ?」
馬鹿にしたように嘲笑われる。
「ツムギくん、どういうことだ」
「あいつは魔族だ。アビリティですぐにわかる」
「それは理解している。
戦ったことがあるのかい?」
「あいつはソリーで奴隷商人としてオウカを売ったんだ。
その後、森で待ち構えて俺たちを殺そうとした」
自分でいいながら、あることに気づく。
アンセロがオウカを売った時も、オウカは記憶を失っていた。
もしかして――彼女は奴隷になるときも邪視の力を使ったのではないか?
そうであれば、オウカの力に、邪視へと近づけるのでは――。
しかし、僅かに見えた光すら、奴は黒い笑いに染める。
「ああなるほど。
あなたは以前の私を知っているのですね?」
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