第86話 目的

 地面、地面はどこだ? どこまで落ちる!?


「ツムギ様! 地面が見えました!」

「よし!」


 十数秒の浮遊感の中でもオウカが夜目をしっかりと使っていた。

 着地に備えて、オウカの手を引っ張り小さな身体を抱きしめる。

 風の舞い上がってくる方に背中を向けて――かったい感触が全身を襲った。


「大丈夫ですかツムギ様!」

「おー、大丈夫っぽいな」


 土煙の中でオウカの眼光だけがはっきりと見える。

 オウカを守るために背中から落ちたけど、思ったよりダメージを受けなかった。これもドラゴンのステータスが含まれているおかげだろうな。


「周囲は……」


 火魔法を発動して火球を散りばめる。

 モンスターがいる気配は特にない。


「ツムギ様」


 オウカの指差す方に道が続いている。


「クラビーもこっちか」

「たぶん、ですが」

「……行くしかねえか」


 身体を起こして、洞窟を進み始めた。


***


 しばらく歩いていくが、モンスターが出てくる気配もなければ、どこかにたどり着く様子もない。


「クラビーも同じ場所に落ちていたと思っていたんだがな」


 それなら、結構な高さから落ちたためにダメージも大きいだろう。

 そんな状況でモンスターに出くわしていたら不味い。


 オウカのステータスを確認してみる。一応、キズナリストにクラビーの名前があるから生きているはずだ。


「ツムギ様」


 俺が見つめていたことが気になったのか、オウカが口を開く。


「一つ気になっていたことがあるんですが」

「なんだ?」

「特務クエストの、精霊の祠って具体的にはどういったものなんでしょう?

 説明の時はみなさん知っている前提で進めていたので……聞くタイミングもなくて」

「ああ……どこから説明すればいいか」


 現在、特務クエストとして受けているのが精霊の祠の保護だ。

 これがそもそも何かわかっていなければ、どうすることもできない。

 情報共有というか、最低限の知識は必要だな。


 ポケットを弄り、ギルドカードを出す。

 オウカに見せたのは、カードの裏側だ。


「ギルドカードの裏に刻まれたこれと、あとは街を出入りする荷馬車の側面にも描かれていたな」

「これが精霊ですか……?」

「そうだ。森に囲まれた街にも関わらずモンスターが入ってこないのは、この精霊と守護契約を交わしているかららしい」

「すごいですね。街一つ守るくらいの力を持っているということですよね」

「そうだな。でだ、その精霊のお家となっている祠があったんだが、今回のダンジョンが祠のあった位置にできたというわけだ」

「地下型ダンジョンは見つかりにくいのに、こうしてすぐ発見されたのはそのためだったのですね」

「俺たちの目的は祠を見つけて保護し、ギルドに一度持ち帰るのが仕事だ」


 と、そこで道が終わり、広めの空間にたどり着いた。

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