奴隷購入(南の街 ソリー)

第6話 オークション

 ハーニガルバット王国の王都を南下し、巨大な森を抜けると、南の冒険者が集まる小さな街『ソリー』がある。

 冒険者とは、いわゆる万屋に近い存在である。しかし、魔物モンスターが急増している今は需要が高く、時には一攫千金も狙える職業だ。

 夢がある、と耳障りのいい言葉だけを聞いて集まるものが増加。現在ではギルドも設立されて一つの組織的存在に成り上がっている。……という説明を王都直属の傭兵に聞かされた。 


 王城の地下で召喚されてから、二か月半ほどが経った。


 今頃クラスメイトは、王城で訓練を受けつつ、ダンジョンを行き来しているのだろう。



 対して俺は、ぼっちで冒険者をしている。



 賑わう商店街を流れるように抜け、裏道へと入り込む。身にまとった黒いマントは視認率を下げる効果が付与されており、知り合いに見られるなんてこともないだろう。それ以前に知り合いと呼べる人がほとんどいない件。


 細道の途中にある地下への階段を下り、小さなドアを開く。奥へと進んで大きな扉を開くと、大広間が現れた。そこには、いくつかの椅子が並べられており、人がまばらに座っていた。

 全身甲冑で纏った者もいれば、散歩ついでに来ましたと言いたげなシャツと短パンの者もいる。

 俺は入口のすぐ近くにあった椅子に座る。ギギギと椅子の軋む音が響いたが、誰一人としてこちらを気にすることはない。

 彼ら……俺自身も含めてこの集会所に集まっている人間が気にしていることは一つだけだ。

 前方にある別のドアから商人が入ってきて客の前に立つ。


「お待たせいたしました。それでは、奴隷オークションを開催いたします」


 俺たちが気にしていることは一つだけ。

 どんな奴隷を購入するかだ。


***


「今回持ち込まれた奴隷は5体です。最初は西で営む商会から」


 商人が司会となり奴隷オークションが始まった。

 連れてこられたのは、体格がしっかりとした男。布に穴を開けただけのような服を着せられ、首元を覆い隠すほど大きな首輪が取り付けられていた。

 参加者の前に立たされた男は、最初は虚ろな目で何も動作をしなかったが、隣の司会者に耳打ちされるとぺこりと頭を下げた。


「こちらの奴隷は元冒険者です。3名の殺人による奴隷落ちでございます」


 元冒険者、殺人という言葉が続いたことで、参加者が椅子を軋ませながら姿勢を正した。俺もその一人である。

 百聞は一見に如かず。アビリティの「異界の眼」でステータスを覗かせていただこう。

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