第197話 レベル:3000

◆ベリル・ビクスバイト・ドラゴン

 種族 :ドラゴン

 レベル:3000

 HP :16800/120000

 MP :47000/120000

 攻撃力:240000

 防御力:195000

 敏捷性:36000


 アビリティ:竜刻世界・輝煌色彩・赫焉翼・深潭

 スキル:擬人化・火炎弾・竜威・竜息吹・幻視・逆鱗撃


「それじゃあ兄貴、やっちまいましょうか?」


 ライムサイザーが青筋を立てたまま、手に持っていた青いパーカをベリルに渡す。


「ん、まあ、何これ」

「いや、裸のままじゃ見た目悪いかなと思いまして」


 瞬間、制服が燃える。


「ん、まあ、くだらない」

「ですよねー。わかってたけど」


 はぁ、とライムサイザーは大きくため息を吐き、


「それじゃあ一方的にお前らを殺す余興を――」

「ああ、まだ話の途中だったかい?」


 その身体は十六に分割されていた。

 生徒会長が剣を振るっていたのだ。

 早い。意識してなければ目で追えないスピードだった。


「空気読めよ!」


 しかし、ライムサイザーの身体はすぐさま元に戻る。

 やはり死なない。クイーンスライムのように再生能力がある相手は面倒だ。おまけに魔物と違って魔石もない。


「ぼっち、戦えないなら下がっていろ!」


 おじさんとカイロスもベリルへと攻撃を放つ。


「全力で行かせてもらう!

 空間魔法――1719-1438ミッドガルドパルサー!」

「乗せてもらうぜ!

 聖なる力を纏いて全てを貫け

 アビリティ発動――弓聖-レレ-」


 カイロスから放たれた炎が蛇のようにうねる。

 さらに、おじさんが放った矢と炎が重なりスピードを増してベリルを――


「ん、まあ、遅い」


 素手で矢を掴まれた。炎の蛇は霧散し、光の矢は粒子となって消える。


「天級魔法を簡単に……!」

「バケモンめ」


 しかし、二人から闘志は消えていない。

 俺もステータスは下がったが、このまま突っ立っているわけにもいくまい。


「オウカは生徒会長の援護だ。

 ドラゴンは俺が行く」

「は、はい!」


 オウカの背中を思い切り叩いて、生徒会長のいる方へと走らせる。

 今は絶望している暇はない。


 俺もステータスが落ちたにしろ、まだ戦える手段は残っている。


「魂と誇りの蹂躙を、彷徨う亡霊に心蝕を。

 精霊魔法アビリティ――黒夢騎士ナイトメア!」


 俺の前に黒い靄が生まれ、騎士の形を成していく。


「おいおいぼっち、お前最弱とか嘘だろ」


 横目でこちらを見たおじさんが口角を吊り上げる。


「所詮借り物の力だ。

 だが、いまはそれでも!」


 倒す手段は問わない。

 命のやり取りにそんな綺麗事は存在しない。


 黒夢騎士は記憶から戦闘能力を引き出す。

 ベリルの記憶に干渉して、ベリルの動きをトレースする。


「黒騎士、その赤髪を屠れ」


 黒騎士が瞳を青く光らせる。

 手先がベリルのような爪に変わり、そのまま飛びかかっていく。


「ん、まあ」


 対抗してベリルが腕を振るうが、爪と爪がぶつかり合い耳を劈くような音が響いた。


「ん? まあ、まともか?」


 ベリルがもう片手を伸ばして火炎弾を放つ。

 しかし黒騎士も同じような動作で火炎弾を放った。

 二人の目の前でぶつかり合った弾が爆発し、その爆風に乗るように、互いが後ろへ下がる。


「ん、まあ、なるほど」


 何か納得したような呟きをしたベリルが、突然深呼吸をし始めた。

 なんだ、何か来るのか。

 そう思ったが、しかしベリルはただ呼吸をするだけ――


 違う!? ドラゴンは時と共に強くなるって魔族が言ってたじゃねえか!

 この短期間で3000レベまで上がった理由がそれだ。

 時間の経過、生き物にとってそれは呼吸も同じ。


「ん、まあ、これでいいか」


 そう聞こえた時、ベリルは既に黒騎士の隣にいて、ヘルムを手に掴んでいた。

 キリキリと圧迫感のある音が聞こえ、目の前の黒騎士の頭が握りつぶされる。

 握力、だけで……!?


「ん、まあ、で?」


 ベリルがつまらなそうな視線を俺に向けていた。

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