第226話 上か下か
姫を誘拐してダンジョンに籠るぼっちと、それを救いに来る豚。
想像したら絵面がひどい。
ひどいが、ダンジョンに逃げるというのは実に合理的ともいえる。
ハーニガルバットにそびえ立つダンジョンは空高くまで伸びており、傍から見れば層楼型の登るダンジョンだ。しかし中に入ればすぐに分かるのが、地下も存在するということ。
上か下かの一般的なダンジョンよりも珍しい層楼型兼地楼型なのである。
しかも、冒険者や騎士団が実力を上げるためによく入っているので、上下とも序盤はモンスターが少ない。
というわけで、マティヴァさんを連れてダンジョンへと来た。
以前オウカに使わせていた身軽な防具と、認識阻害のマントを着けてもらう。
俺は仕方ないので制服のままだ。
「本当に行くのお?」
「数日は籠る可能性がありますね」
ダンジョンを進みながら、不安げにキョロキョロするマティヴァさんをなだめる。
ここは如何にもゲームのダンジョンと言った感じで、迷路的な通路が続いている。道角で魔物と遭遇すればお互いに驚くことになろう。
俺のレベルは60でキズナリストは0。ベリルを倒したおかげかふたつ上がってついに60台である。3000倒してふたつしか上がらないってどういうこっちゃ。
それは置いといて、個人差はあるものの、レベルの10倍が人間の基本ステータスだ。
キズナリストのない俺は各ステータスが600前後。加えて魔法師のジョブによってMPが少し高いくらいか。
マティヴァさんのレベルは23でキズナリストは5だ。前見たときから一つ減っている気がするのはギルマスの分か。ステータスも平均的で、特別なアビリティはない。おっとりお姉さんの風格は天然ものである。
マティヴァさんはシーファさんとキズナリストを結んできたので、交信を使うことが出来る。これで互いの状況が把握できるわけだ。
細かい説明はしなかったが、俺はステータスが下がるのでキズナリストは断った。
薄暗いダンジョン内を、光明石の入ったカンテラで照らす。
やはり一階にはモンスターはいない。
「最悪、あの貴族が装備を整えてダンジョンに入ってくるかもな」
「そ、そうなのお?」
「これだけ安全なダンジョンだ。入るのを躊躇うことはないでしょう」
だからこそ、ある程度進んだ場所に逃げ込まなければならない。
問題は――
「どちらに進むべきか」
一階の最終地点に到達する。
モンスターどころか冒険者もいなかった。まあ、道が入り組んでいるから出会う方が珍しいか。
目の前には、上に進める土の階段と、下に落ちるための穴。
そういえば、どちらかにクラスメイトがいるんだな。
攻略というくらいだから、どちらにも進んでいるのだろうか。あるいは片方……いやキズナリストで全員のステータスが上がっているなら二手に分かれている可能性が高いか。
「マティヴァさん、どっちがいいですか?」
俺が考えても決まらなそうなので、マティヴァさんに委ねる。
マティヴァさんは「うーん」とうねりながら二つを見て、
「じゃあねえ、下のほう」
「一応、理由を聞いても?」
「降りるほうが楽そうだから」
さいですか。
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