幕間 とある村の二人

 森に囲われた冒険者の街ソリー。

 王都の次に大きな冒険者ギルドができたおかげで人口が増加し、今では都移りの候補としても挙げられるほどだ。

 そんなこともあり、周辺の村の子供にとっては憧れの街になりつつもある。


「僕は必ずAランクの冒険者になる!」


 ソリーから東の方にある小さな村。

 畑の上で、土塗れになった少年が声高らかに宣言する。


「そうだね。だからちゃんと耕してね、セン」


 隣で土を耕す少女は、またかと軽くため息をこぼす。


「ナナも一緒に行こうよ!」

「うーん、でもなあ」


 少年の誘いに、少女は少しだけ困ったような表情を浮かべた。


「私たちでしかキズナリストを結んでないのに、冒険者なんてやっていけるかな」


 二人の首元にはそれぞれ『01』と刻まれている。

 村の風習により、子供は親とキズナリストを結ばない。だから子供同士で結ぶしかないのだが、二人は他の子供と仲良くしていなかった。

 感覚的に、仲良くなれないと感じていたのかもしれない。

 しかし互いには気が合うと、二人だけでキズナリストを結んでいるのだ。


「大丈夫! 僕たちにしかない力があるじゃないか!」


 少年がステータスを開く。

 そこには「アビリティ:七閃-電-」と書かれている。

 それを見るたび、少年は嬉しそうな表情を浮かべた。

 「アビリティ:七閃-雷-」を持つ少女もまた、そんな彼を見ているのが好きだった。


「これは誰も持ってない、僕たちだけの力だ。これがあればどんな奴だって倒せる!」


 実際、近くに現れたゴブリンに対して使ったことがあった。

 いままで苦労して倒していたゴブリンが一撃で倒せたのだ。

 そのあと動けなくなるというデメリットも発見したが、それ以上にアビリティの強さにセンは目を輝かしていた。

 

「村は子供が減ってきて生活も苦しくなってきている。俺たちが冒険者になって稼いでこないと潰れちゃう。ナナだって、病気のお父さんをなんとかしたいだろ?」

「……そうだね」


 二人が耕している畑はナナの父親のものだ。

 ナナは早くに母を亡くし父に育てられてきた。しかしその父も病気によって床に臥せている。

 隣に住んでいるセンたちの支えがあったおかげでここまで生きてこれたのだと、ナナも自覚していた。

 だから、村というよりは父とセンの家族の為にもっと稼ぎたいと考えてはいる。


「大丈夫だよ。ナナには僕がついているから」


 何かを悟ったのか、少年は少女に笑いかける。


 ――ああ、彼とずっと一緒にいたいな。


 少女の心にはそんな想いが募っていた。


 きっと、彼に押し切られて冒険者になってしまう。

 その後どうなるかわからないけど、彼と二人きりのチームで、少しずつランクもあげて。

 村を援助しながらも余裕が持てるようになったら、きっと――。


「センにも、私がついてるよ」


 そう言って少女は、少年に微笑み返したのだった。


 それから一年後、二人は村をでて冒険者になった。

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