異世界ぼっちにフレンド機能は必要ない

沙漠みらい

第一章 異世界ぼっちは奴隷を買う

異世界召喚(王城地下)

第1話 異世界召喚

 学校の教室が眩い光に包まれ、神と名乗る声が脳内に響き渡った後。

 閉じていた瞼を開くと、石の壁に覆われた空間が広がっていた。

 いくつかのかがり火によって薄暗く灯されたその場所には、白いローブに身を包んだ十数人の人間、その奥に白髪の老人と金髪の少女。

 あとは、状況を飲み込めていない俺を含んだクラスメイトたちだった。


「な、なんだ……?」


 誰かの一声が、クラスメイトを一斉に騒めかせた。


「なんかすごい光が見えて――」

「そうだ! 神様とかいう奴の声が聞こえたんだ!」

「なにを言ってたのかよくわかんなかった……」

「おいここどこだよ!」


 徐々に声が大きくなっていく。と、


「勇者の皆様、落ち着いてください」


 女の声が響いた。

 華やかな、それでいて力強い、透き通るような声だった。

 俺たちの前に出てきたのは、奥にいた金髪の少女だった。まだ十代くらいに見える、水色のドレスを纏った美少女だ。まるで物語の中から出てきたような美しい顔立ちをしている。

 少女は白いロンググローブをはめた両手をお腹に添えると、俺たちに向かって頭を下げてきた。


「突然の召喚をお許しください。そして、落ち着いて私の話を聞いてもらえないでしょうか」


 その光景に、クラスメイトの声は一瞬にして止んだ。


***


「私はハーニガルバット王国第三王女、エル・ハーニガルバットと申します」


 エルと名乗った少女が改めて頭を下げる。

 クラスメイトのほぼ全員が困惑する中、一人の男子生徒が前へと出た。


「初めまして。僕は光本光希こうもとこうきと言います」

「コウモト様……?」

「コウキと呼んでください」


 光本光希はクラスのリーダー的存在のいわゆるアレである。もう彼に任せましょう。


「コウキ様が皆様の代表ということでよろしいでしょうか?」

「担任……僕たちの指導教員もいませんので、ひとまずはそのお考えでお願いします。早速ですが、僕たちには何が起きたのでしょうか?」


 光本の質問に、王女様が説明を始めた。


「ご説明いたします。ここはハーニガルバット王城の地下室です。ここで行われたのは、王国に伝わる勇者召喚です」

「……つまり、僕たちは勇者として召喚された、という認識でよろしいでしょうか?」

「はい。その黒い髪に黒い瞳……一部違う方も巻き込まれてしまったようですが、その容姿は間違いなく、我々に語り継がれている勇者様です」


 そういいながら王女様は光本の髪を撫でる。

 一部違う方、というのは髪を染めたりカラコンをしている奴らだろう。


 要するに、異世界召喚ってやつか。

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