第186話 まとめ
「さて、これでゆっくり話ができるね」
生徒会長はメイドが出した紅茶を口にする。その凛々しさは、数分前まで未知の敵である魔族から脅迫を受けていたとは思えない。
ライムサイザーは生徒会長の回答に満足したのか、開いた窓から半液状となって飛び出していったので既にいない。
「では、改めて昨日の出来事を整理しよう」
「待ってくれ」
そう言って手を挙げたのはカイロスである。
「なぜ魔族の話を受け入れた。
この場には弓聖様だっていたんだ。戦うという選択も取れたはずだ」
「あの魔族が言った通り、私たちには倒す手段がないと思いますが?」
生徒会長が俺たちを見るので、無言で頷く。
スライムは下級モンスターだ。
形をなしている薄い膜を切裂くか、魔石を壊してしまえば倒せてしまう。
しかしライムサイザーには膜なんてないし、魔石もない。モンスターとは異なる存在だ。奴を倒すには基本の手段では不可能である。
「それに、魔族の能力は未知数。竜もいるという。
いまは時間が必要だ。1か月で対策を練らないといけない」
それを聞いたカイロスは納得いかないと言った様子で、しかしながら黙った。
その後、全員で昨日の出来事を整理する。
学生寮にいるはずのGクラス三名が行方不明。一名は小川で裸の状態で発見、もう一名はスラム街で頭部のない状態で発見され、どちらも死亡が確認されている。
もう一名は行方不明のままだが、俺やシオンの証言で竜の心臓の媒体になったと推測した。
「再度確認となるが、諸君で妖狐族を知っている者はいないんだね?」
生徒会長の問いかけに、全員が黙り込む。
下手にオウカが妖狐だと教えれば、どのような扱いを受けるかわからない。特に、学院に危険が及ぶとなれば、生徒会長はオウカを差し出す可能性が高い。
守ってほしいと頼んで、あちらにメリットがない。
「では、一か月後まで妖狐族の奴隷を調査するとして、
最悪、戦うしかないね」
「……策はあるのか?」
「君なら知ってるだろ? 一か月後は昇格試験だ。それまで各クラス内でランキングをつけ、上位者が昇格試験のトーナメントに参加する。
つまり、有力な生徒だけが集まる」
初耳だが、なるほど。それなら何かしら強力な魔法を抱えた生徒がいるかもしれない。
「生徒を利用することになるが、学院の為だ。多少は目を瞑ろう」
まとめに入り、俺とおじさんは妖狐族の調査。カイロスはスライム対策の研究。生徒会長はその他下準備という形でまとまった。
一か月後には昇格試験。
そして、ライムサイザー、ベリルとの決着をつける。
「ツムギくんは、残ってくれないか」
全員が退室するところを、生徒会長に止められる。
シオンとオウカを先に行かせ。俺は扉を閉めた。
「さて、君には聞いておかないといけない。
――何を隠しているんだい?」
「……それは、生徒会長もじゃないですか?」
問い返すと、生徒会長の目尻が微かに動いた。
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