第185話 話合い
「ライムサイザー!?」
「役者は揃ったようだねえ」
どうして奴がここにいる……。と、思わずレイミアを見る。
「……丁度、諸君が入ってくる数十秒前に現れたんだ」
「一応、この学園には魔物が近づかないように、僕たち魔法師団がいろいろとやっているんだが……」
「おい白ローブ。俺様を魔物と同類扱いするなと言ってるだろ」
ライムサイザーの腕が半液状化して、カイロスへと伸びる。
「火魔法!」
カイロスが杖を振ると、その先から炎が鞭のように伸びてスライムと衝突する。
伸びた先から白い煙が出たライムサイザーは、小さく舌打ちすると、腕を元に戻した。
「これでも俺様はお話しに来ただけなんだがなあ」
「話……か。なるほど、いいだろう」
答えて動いたのは生徒会長だ。
彼女は剣を腰に付けた鞘へとしまうと、中央に置かれた会議用らしきテーブルの席についた。
「君が知能ある生物だというなら、なるほど、話し合いも可能だろう」
「人類ってのはいちいち皮肉を言わないと死ぬ生き物なの?」
ライムサイザーは青筋を浮かべながらも、窓枠から降りて生徒会長の向かい側に座った。
「おい、ぼっち……あれが魔族か? どういう状況だ」
「確かにあいつがそうなんだが、俺にもわからん」
何故が室内は話合いという平和な流れになっている。
「何しているんだい? 君たちも座りたまえ」
生徒会長に言われて、警戒をしつつ全員が会長側の席に座る。
一対六。
にも関わらず、ライムサイザーは余裕のある表情だ。
生徒会長が口火を切った。
「さて、話というのはなんだい?」
「話、というより交渉だな」
「ほう……聞こうじゃないか」
「――妖狐族」
俺だけ緊張が走る。が、表情は崩さない。
「俺様が探してるのはそいつだけだ。
そいつさえ見つかれば、お前たちを殺さない」
「それは交渉というより……脅迫かい?」
「命令でもいいぜ」
生徒会長とライムサイザーの視線が交わる。
魔族相手によく怖気つかないものだ。一度戦ってるのもあるのだろうか。
「お前はよくわかっているだろ?
俺の身体はスライムとほぼ同じだ。
しかし、あんな下等生物と違って、斬っても破裂しないし、魔石があるわけでもない。
要は不死身なんだよ」
もちろん、と続ける。
「お前たちを殺すのは簡単だ。
俺様の力を使えば一瞬でこの世のものじゃなくなるぜ」
「……君が、我が学院の生徒を川に捨てたんだね?」
静かに、しかし確かに怒りの籠った声が生徒会長から洩れた。
ライムサイザーが口角を吊り上げる。
「まて、生徒会長。何の話だ」
「そうだね、ツムギ君たちにはまだ知らせていなかった。
昨日、学生寮に帰ってきていない者が、君たちを除いて三人いた」
三人ということは、シオンを攫った男たちか。
そのうちの一人は目の前の魔族のはず。
「そして昨晩、街の小川で生徒の死体が発見された」
「……つまり、成りすまし?」
「そう、全員Gクラスの生徒。一人を殺して服をはぎ取り、生徒に成りすまして他の二人に近づいた。
魔族よ……残り二人はどうした?」
「あの二人は勝手に死んだよ~?
そこのお嬢さんが知ってるよね?」
ライムサイザーの視線がシオンに向けられる。
彼女の肩が震え、俺は咄嗟に手を握ってやった。
シオンがゆっくりと口を開く。
「一人は、
もう一人は、そいつに……殺、されて」
「竜の心臓か……魔法師団で聞いたことがあるな。
死んだ竜の心臓は魔力を溜めこんでいたが、触れた者が身体を奪われ竜になってしまったとか」
カイロスが顎を手にかけて思い出すように語る。
生徒会長が「ふっ」と鼻で笑った。
「つまり、君は魔族で、竜も抱えている。
人類に対抗する手段はない。
生きたければ、大人しく妖狐族を差し出せと」
「猶予は一か月。俺様の探している妖狐は奴隷になっているはずだ。
長身の男が売っているはず。ソリーに行ったという噂も聞いたが、そちらから来た三人は知っているのか知らないのか煮え切らない態度を取るんだもんなあ」
ライムサイザーが舌をちろちろと出しながら、こちらを嘗め回す様に見つめてくる。
やはり、狙いはオウカらしい。
「いいだろう。では一か月後にまた来るといい」
生徒会長は悩む様子もなく頷いた。
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