第348話 成敗
『主殿!』
空中を浮遊する俺とオウカをダアトが拾い上げてくれた。
「オウカ、ダアト、助かった」
「いえ、それよりも、今のでクラヴィアカツェンは完全に倒せたでしょうか」
「いや、まだだと思う」
いくら口が一にも千にもできるからと言って、あの状況で本当に一つにしてたとは思えない。
しかし、落ちた手首と倒れた腕が魔物と同じような感じで霧散する。
「……」
周辺を警戒する。
その時だった。
「ぬおおおぁああああ!?」
下の方から叫び声。
見下ろせば、クラビーの様子がおかしい。
「な、なにか、入って――――っしゃー!」
唐突に口角を釣り上げて拳を上げる。
「ツムギ様、あれってもしかして」
「乗っ取られたな」
以前もクラヴィアカツェンはクラビーの中に潜んでいた。そしてクラビーを心の奥底に閉じ込めて精神を乗っ取り、クラビーとして俺に近づいてきた。
「またもか」
ダアトが校庭に足をつけたところで背中から降りる。
「ツムギさーん♡ どうします? このクラビー共々、殺しますかあ?
でも前の魔法はダメですよお、もう目もないですからねえ!」
ケタケタと笑い声を上げるクラヴィアカツェンが挑発をかけてくるが、ここで乗ってたら意味が無い。
しかし奴の言う通り
と、思考を巡らせているときだった。
「さあさあさあぶごっ!?」
クラヴィアカツェンが呻き声をあげる。
殴られたのだ。
いや、殴ったと言うべきか。
彼女の顔に拳をぶつけたのは彼女自身のものだった。
「なにを―――――ってふざけんじゃないですよー!」
さらに一発拳が入る。
傍から見れば自分で自分を殴る異様な光景。
だが、それがクラビーの戦いであることを俺たちは理解している。
「またクラビーを乗っ取ろうなんて考えが甘いんですよおおお!」
しまいには地面に頭を叩きつけた。
「ぶぎゅ」
吐き出すように、口から黒い塊が現れる。
あれがクラヴィアカツェンの本体か。
『こんなやつに追い出されるなんて』
「成敗!」
何か言っている塊をクラビーが容赦なく踏み潰した。
今のは流石に逃げられまい。
「やりましたよツムギさん」
クラビーが俺に向かってサムズアップをした。
「って、ふざけている場合じゃありません。
早くその精霊というのを探しましょう」
「お、おお……」
しかしすぐにその表情は真面目なものになる。
そんな姿に気圧されつつも、目的を次へと切り替えていく。
と、
「すまない……間に合わなかったか」
崩壊しかけの校舎から、光本や他のクラスメイトたちが出てきた。
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