第107話 泥遊び
「冒険者の攻撃……ってことは、あの壁の向こうに、別れた他の冒険者たちがいるってことか」
「可能性があるってだけだがな。たぶんあっちも俺たちと同じように壁に向かって攻撃しただけだろう」
おじさんが冷静な感じに推理をしていくが、それってつまりおじさんの攻撃が誰かに当たってる可能性があるってことでもあるんだよな。
「それなら!」と手を上げたのは犬人のお姉さん。
「アビリティ――
すると、地面が数か所盛り上がり、最終的には小さな泥人形のようなものが完成された。
これがゴーレムか。ゴーレムってごついイメージがあったけど、確かに泥とか土で人の形を成せばゴーレムと呼べるな。
「魔法で作ったゴーレムなら壁を通過できるかと」
そういってお姉さんがゴーレムに指示を出すと。何体かが壁へと歩いていく。
予想通り、ゴーレムが壁の中へと吸収されていった。
お姉さんが「こほん」と咳ばらいを一つすると、俺たちの方に残ったゴーレムに向かって話しかける。
「聞こえますかー? ギルマスさんー?」
すぐに、
「こちらギィグメシュ。よくやったモード」
ギルマスの声だ。あのゴーレムは通話機能まであるんかい。
スキルと違って、アビリティになると付与効果がいろいろあるな。アビリティ恐ろしい子。
それはともかくとして、やはり壁の向こうはギルマスたちがいるらしい。
「ヤコフ、状況を」
「こちらヤコフ。恐らくそちらと同じようにダンジョン内だ。
こちらは全員無事だ」
「了解。こちらも全員無事だ。
一人だけ、お前の矢が掠って髪の毛が数本塵になったがな」
「こっちも誰かさんの水魔法で、女の子の脚に大穴が開いたぞ。
まあ、ぼっちが回復薬をそのままかけたから元通りだがな」
ゴーレムから笑い声が聞こえてくる。あちらは問題なさそうだ。
てか俺の失態を晒さないでほしい。
「やはりそちらの壁も触れられないか?」
「ああ」
「キズナ召喚を使うのはどうだ?」
キズナ召喚。MPを全消費することでキズナリストの相手を召喚できるという、キズナリスト独自の魔法だが……。
「それはダメだ。こちとら、ぼっちとオウカちゃんがいるんだぜ?
唯一の魔法師のモードのMP全部使って合流なんてリスクが大きすぎる」
現状こちら側はキズナ召喚が使いづらい。
おじさんはMPのないタイプだし、オウカは奴隷。クラビーはオウカとしかキズナリストを結んでいないし、俺に関しては0である。
あちら側からお姉さんをキズナ召喚してもらったとして、後が続かない。
俺が実は魔法師だって教えたところで変わりもしない。
「そもそも、私はあちら側にキズナリストを結んでいる相手がいませんね」
お姉さんのキズナリストは10だ。レベルと合わせると少ないほうだから、たぶん友達としか結んでいないのだろう。
ゴーレムからギルマスの声が響く。
「では、状況的にダンジョンを攻略していくしかあるまい。
最奥部にはあの魔族が待っている可能性があるが」
「心得ている。弓聖をなめるなよ?」
「ふっ……ではギルマスより特務だ。
全員生き残ってダンジョンを踏破せよ」
冒険者正攻法、ダンジョン攻略の方向で話がまとまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます