第17話 王の影刻

 道中出くわすスライムをオウカに倒させながら、さらに奥へと進む。

 時間としては午後11時あたりか。こちらの世界で表すなら、もうすぐ「王の影刻ようこく」である。


「だいぶ奥まで来ましたね」

「目的の場所までもうすぐだ。頑張れ」

「私は大丈夫ですけど、『奴隷の制約をある程度潰す』というのは、具体的に何をするんですか?」

「あー……まあそのうち見せないとだしなあ」


 自分のステータスを開く。


「オウカ、おいで」

「見てもいいんですか?」

「仲間に隠すもんでもないしな」

「ありがとうございます! このままお互いすべてを曝け出し仲を深めていきましょう!」

「やっぱいいや」

「あー! ご主人様! ご主人様ー!」


 腕を掴まれて泣きつかれたので渋々ステータスを見せる。


◆ツムギ ♂

 種族 :人間

 ジョブ:魔法師

 レベル:56

 HP :500/500

 MP :830/830

 攻撃力:560

 防御力:620

 敏捷性:550

 運命力:56


「な、なんですかこれ……」

「いやあ、そこそこ頑張ってると思うんだよ」

「そこそこ!?」


 オウカが驚いた様子で声を張り上げた。まさか……俺のレベル、低すぎ?


「こ、こ、こんなの、Eランクのレベルじゃないですよ! Aランクでもおかしくないですよ!?」

「うん知ってる」


 知ってました。

 以前ギルドでBランク冒険者を見かけたからステータスを覗いたが、レベルは30前後だった。


「どうしてご主人様はEランクなんかにいるんですか!」

「えーと」


 アイテムボックスから小ぶりのナイフを取り出して、自分の親指を軽く切る。


「オウカも手を出して」

「これって……キズナリストの契約ですか?」

「そうそう。契約の言葉は覚えてる?」

「はい」


 オウカと向き合い、左手を前に出す。


「「愛と友の神ミトラスに誓い、ここに新たなる絆を欲する」」


「……ご主人様の数字が増えましたね」

「奴隷はやっぱり変化はないんだな。で、これが俺がぼっちな理由だ」


 お互いの首元を確認してから、改めて自分のステータスを開いた。


◆ツムギ ♂

 種族 :人間

 ジョブ:魔法師

 レベル:56

 HP :460/460

 MP :590/590

 攻撃力:480

 防御力:580

 敏捷性:390

 運命力:48

 

 キズナリスト:オウカ(奴隷)


「落ちてる!?」

「俺のステータスは、キズナリストに登録した相手のステータス分だけ下がってしまう。だから俺は一人で冒険者をせざるを得ないんだ」

「そんなことって……」


 レベルを上げた分のステータスは嘘をつかない。

 しかし、それを覆してしまうのがキズナリストというものだ。

 だというのに、俺はキズナリストを使うとステータスが下がってしまう。


 俺のステータスが下がる理由。それはたぶんアビリティの「絆喰らい」のせいだろう。喰らうとかいってるくらいだし。

 絆喰らいはこの世界に転移させられるとき、神に与えられた固有アビリティだ。

 なのにも関わらず、現状わかっていることが、ステータスを削ることだけなのだからハズレにもほどがある。

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