第295話 意外な返答
「今日は疲れたね〜」
ヒヨリがベッドの上に飛び込んで数回はねる。
二日かけてダンジョンを半分踏破したところで戻ってきた俺たちは、クラスメイトに報告を終えて部屋に戻ってきていた。
「って、なんでヒヨリがいるんだ?」
「え、いちゃいけないの?」
「俺が借りてる部屋なんだが……」
「やだな〜、相部屋だよ、ここ」
ちょっとまってなにそれ聞いてない。
「いくらお城って言ってもクラスメイト全員に個室貸せるほど部屋ないよ〜。
だから二人から三人の相部屋にしてあるの」
「理由はわかった。だがそれで俺とヒヨリペアになる理由がわからねぇ」
「わたしがツムギくんの近くにいたいからだよ?」
直球すぎる。少しクラっときた。
「それに、ツムギくん放置しておくと悪い虫が寄ってくるからね」
「悪い虫って……」
「ツムギくんが濃密な半年を過ごしてきたことは理解しているよ」
ベッドの上で座ったヒヨリは、少し真面目な表情になった。
なぜか既に衣服を脱いで裸なのは裸族だからか。裸族だから仕方がない……のか?
「どうしてツムギくんなんかに寄ってくるんだろうねえ」
「と言っても、妖狐族と元生徒会長だけだろ……人に記憶が無いとかいって」
「まあ……それは事実だけどね」
ヒヨリが何が小声で言ったが聞き取れなかった。
「他にも来るんじゃないの〜?」
「集団で詐欺するにしたってこれ以上はやりすぎだろ。俺そんなにお金ないし」
謎の金貨18枚小切手がアイテムボックスにあったが、それと関係あったりするのかね。
「とにかく、ツムギくんにはちゃんと魔族を倒して魔王復活を阻止してもらわないといけないんだから」
「やっぱり、ヒヨリも、元の世界に戻りたいのか?」
両木は元の世界のことを心配し、戻りたいと言っていた。
俺自身はともかく、そういう気持ちはわかっているつもりだ。
「え、わたし? 全然戻る気ないけど?」
「……ないの?」
意外な返答だった。
「ヒヨリも家族や友達が心配だとかないのか?」
「うーん、それはそうだけど。
でも、事故とかで死んだって思えば同じじゃない?」
全然違うと思うんですけど。
「わたしはね、わたしが元気でいればいいの。世界が私を中心に、静かに、平和に廻ってくれればそれでいいの」
「ヒヨリはもっと、他人のために頑張るタイプかと思っていたよ」
「幻滅した?」
「いいや。
ならなんで俺のことをこんな構ってくれるんだ?」
「簡単な話だよ。
ツムギくんがわたしの中心から外れていたから」
ヒヨリの中心……?
「覚えてないかな?
高校に入ったばかりの頃に、わたしと目が合ったの」
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