4-7 早朝七時四十五分、副社長室

「ふわーあっ」


 大あくびが出た。朝七時四十五分。副社長室脇の役員応接室で、説教の時間待ちだわアホらしい。副社長秘書が出してくれたコーヒーをとりあえず飲んだ。うまいわこれ。俺、コーヒーは酸味抑えめ苦味強めが好きなんだが、まさにドンピシャ。淹れ方上手だな。


 昨日、誕生日パーティーでみんなが作ってくれたケーキを楽しんだ後は、予告どおりタマと等身大レナを連れた吉野さんが小部屋寝室に来てくれた。


 三人相手は初めてだったんでさすがに最初は恥ずかしかったが、吉野さんと長いキスを交わしてからはもうどうでもよくなった。夜明けまで四人で延々交わって最高に気持ち良かった。吉野さんも灯り消さないことを了承してくれたし、タマのやり方見て、つたないながらも真似してくれたし。


 それだけに俺は興奮しちゃって、もう一晩で一か月分くらいの体力を使い果たした感じよ。へとへとだ。


 とはいえ朝うとうとしたときに、レナが夢に出てきてくれた。いや夢でもエッチなことしようって話じゃない。夢の中で体力を回復する、サキュバスならではの魔法のようなものがあるらしく、それを施してくれたってわけよ。だから三十分くらいしか寝てないにも関わらず、俺は割と元気だ。さすがにちょい眠気が残ってるが、たいしたことはない。



「まだかなー」


 副社長の奴、朝一というか朝残業で俺のこと呼び出しといて、準備がまだとかいう話じゃないだろうな。


 俺が朝まで攻め立てたんで、吉野さんは昨日の半ドンに続き、今日も有給休暇を取っている。今頃大きな方の寝室で、倒れるように寝ているはず。スーツに着替えた俺が出るとき見たら、タマと抱き合う形で、ふたり仲良くすうすう寝息立ててたわ。


 ちょうどいいんで、レナとキラリンは新富町のマリリン博士の研究所に貸し出した。レナの奴、博士の助手やりたがってたし。それにキラリンもたまには里帰りさせてやらんとな。エッチなことをするとき以外は、レナはちっこいまんま。なんで、キラリンのバッグに入ってもらったわ。


 そんなわけで、家はトリムとキングーが仕切ってるはず。見様見真似でトリムもだいぶ家事覚えたし、まあ問題はないだろう。昨日のパーティーの後片付けとかいろいろあるしな。


「吉野さん、大丈夫かな」


 昨日、欲望に任せて全員と何度もしたからなー。あれだよな。サキュバスと契約したせいで絶倫になりつつある俺がひとりだけ全力で朝まで攻め立てたら、繊細な吉野さんは途中で音を上げちゃうだろう。頑丈なタマやエロなら任せろのレナならともかく。その意味で、吉野さんプラス誰かってのが、今の俺には向いてるのかも。


 今度タイミングを見てさりげなく、吉野さんに打診してみるかなー。もう複数でするの、慣れてきたみたいだし。タマやレナは元から、他に誰かがいるのは気にもしない。吉野さんさえOKなら、障害はない。




――ピロリンッ――




 会社から貸与されてる社畜スマホが通知メッセージを出した。異世界用の謎スマホじゃなく、内線電話兼用の普通のスマホな。見ると、マリリン博士からのメッセージが入っていた。




――平くん、レナちゃんとキラリンが来たよ。ありがとね。あんたもたまには顔出しなよ。ちゃんとすべすべオイル買っておいたから❤――




 頭痛くなってきた。ポチポチ。




――誰が行くかっ💢――




 いやマジ、誰が行くもんかよ。絶対抜かれるのミエミエの、あんな魔窟。娘(キラリン)共々、機種依存文字なんか使いやがって。




――いいじゃん。減るもんじゃなし。この間のあんたの精子分析したらね、面白いことがわかったんだ。もう一回出してくれたら、いろいろ教えたげるからさ――




 この野郎、反省ゼロじゃん。


 怒りに任せて罵倒のメッセージを打ちまくっているとき、扉が開いた。


「お待たせしました。どうぞこちらに」


 副社長秘書だ。社長秘書より美人なんだよなー、この娘。俺にも秘書つけてくんないかな。まあ俺の場合分刻みの固定スケジュールとか特にないんで、秘書もやることなくて困惑するだろうが。


「はい」


 もうひとくちコーヒーを流し込むと、俺は立ち上がった。


 それにしても秘書も大変だな。役員の都合で朝早くから夜遅くまで引っ張り回されて。


         ●


「おう、来たか」


 人当たりのいい笑顔を浮かべて、副社長は俺を迎え入れた。


「説教から逃げなかったことだけは、評価してやろう」


 やかましわハゲ。はよ説教しろ。殊勝な顔で聞いてるフリだけしてとっとと退席し、あのボロ雑居ビルの一室で茶を飲みながら、昨日のエロ行為の思い出に浸りたいんだからよ。あー早く妄想したい。


「ところで……」


 ミーティングテーブルで向き合い、秘書が部屋を退出したのを確認すると、副社長はいきなり斬り込んできた。


「我が社に存在する陰謀について、君はどう判断している」


 驚きを顔に出さないように、テーブルの下で、俺は必死で自分の腿をつねった。役員連中のようにうまくは、俺は狸面がまだできないからな。


 でもマジかよ。説教ってのは口実で、この件を相談したかったってのか、副社長は。

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