3-2 吉野課長、ボンデージで戦闘はヤバいっす

 異世界に着いた俺達は、いつもどおり、手早く使い魔を召喚した。


「ご主人様、今日も頑張ろうね」

「おう」

「よろしく頼む」

「タマ、今日も元気そうだな」

「まあな」


 クールな女、タマ(ダメだ名前で笑う)。


「それにしても吉野さん、エロいカッコだねー」

「えっそう?」


 エロには超絶敏感なサキュバス・レナに、さっそくいじられてんな。


「自分ではアウトドアなつもりなんだけど」

「わあ、野外プレイ――アオカンなんて、吉野さん、だいたーん」

「レナちゃん、アオカンってなに?」


 なんだ課長、青姦もわからないのか。


「早く始めよう。時間がもったいない」


 人の服など気にもしないタマにせかされた。


「そうだな」


 俺は周囲を見回した。いつもどおり、快晴で心地よい風の抜ける丘に、俺達は立っている。このへんも、随分見覚えのある光景ばかり。


 ここは、初日に俺が着地した地点から東に千歩ほど進んだ場所。その間はけっこう広い範囲、ローラー作戦で走破して地図を作ってきた。


「この丘陵地帯もだいぶ踏破したので、今日からは少し北に向かい、湖方面に進もうかと思っている」

「最初に私が転送された湖ね」

「そうです、課長」

「平くん。ここは異世界なんだから、もう課長呼びじゃなくていいわよ」

「そうでした。つい癖で。……吉野さん」

「はい、ボス」


 うれしそうだ。


「湖の周囲は弱モンスターばかりだった」


 タマが目を細めて行く先を見る。


「ただ途中。ほらちょっと窪地があるでしょ」


 レナが指差す。


「あのあたりは危険。これまでとはレベルの違うモンスターが出そう」

「たしかに、ちょっと黒ずんでて、なんかゆらゆら湯気みたいのが立ってるな」

「あれ瘴気。アンデッド系が出そう」


 窪地は東から西に一直線に走っていて、湖に向かうなら必ず横断しなくてはならない。。


「平くん。危険ならあっちはやめて、もう少し丘を探索したらどうかな」

「それも考えたんですが吉野さん。この丘はもう調べるところがほぼない。丘から北以外に進むと、一段どころか数段危険なモンスターが出るってのがレナの見立てだ。俺達がサボるためには、北の湖でちんたら仕事したフリするのが一番。水着回が作れるかもしれないし」

「水着回?」

「ああすみません吉野さん。ひとりごとです」


 しまった本音が漏れたw 課長が隠れ巨乳とわかったときから、密かに考えてきたことだ。


「いずれにしろ北に向かう。途中の危険箇所は最短距離で突っ切るしかない」

「わあ、さすがご主人様。サボることに関しては天才的だね」

「なら行くっきゃないか」


 サボる云々には特に反応せず、吉野さんは素直に頷いた。この調子なら、もう俺の野望(サボり放題)をあんまり隠さなくていいかも。


「それに俺達も経験を積んで戦闘が効率的になってきた。ここらで一度、強めのモンスターで腕試ししておきたい。いずれ、中ボスみたいなモンスターが出ると思うんだよな。その訓練にもなるしさ」

「それなら、北に向かう間、速度よりも薬草採取の寄り道を優先しよう。窪地でアンデッドと戦うなら、薬草を煮出したポーションは、いくらあってもいい」

「うん。タマの案、採用」

「にゃーん」


 うれしそうに喜んでるし。この娘、ときどきネコっぽくなるな。

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