エキストラエピソード キラリンとデート3
「ここは……」
気がつくと、目の前に白衣姿のマリリン博士が立っていた。博士というよりは、例によって中学生っぽい見た目だが。レナはオウムのように博士の肩に腰掛けている。なんだよ仲いいじゃん。
博士は俺の顔を覗き込んでいる。様子を伺うように。例のテスラコイルの騒音が聞こえる。微妙に魚臭い。……てことは、夢から現実に帰還したってことだろう。
「目が覚めた?」
「はい……まあ」
「戻ってこないから、ちょっとだけ心配したよー。やっぱり夢の世界に閉じ込められたのかと思った」
不吉なことを口にする。
「やっぱりってなんすか」
「安心して。その場合、一生、あたしが飼ってあげるから」
「ふざけんな。寝かされたままいいようにいじくられまくるとか、地獄じゃん」
見回すと、横の椅子にキラリンはいない。博士の横に立っている。もうとうに起きていて、装置の拘束から解かれていたんだろう。
「楽しかったよね、デート」
キラリンはニコニコ顔だ。
「ああ。楽しかった。……死んでないし」
博士に皮肉を投げて立ち上がろうとして、まだ拘束されているのに気づいた。
「博士、これ……」
「今、解いてあげるわ」
立ち上がると、妙に体が凝っていた。体を伸ばして、首を鳴らした。
「俺、何時間寝てました」
「そうね、五時間ほど」
「お兄ちゃん。あたしは二時間で起きたんだよ」
「そうか……」
なんだ俺危なかったんかマジで。博士www
「にしても夢の中では十二時間以上、楽しく宴会しましたけど」
現実には二時間しか経ってなかったってわけだよな。夢に最後までキラリンがいたってことは。
「そりゃ主体時間だからね。楽しかったんならいいじゃないの」
「まあ、そうですね」
「いろいろいい夢見たでしょ。……もしかしたらエッチな奴とか」
「いえそっち方面は特に。ただ飲んでただけで……」
なにかが引っ掛かった。てか夢の内容は、とっくにキラリンに聞いていたはず。俺より三時間も早く目覚めたんだし。てことはまさか……。
「ちょっと待て」
後ろを向くと、手を突っ込んでみた。
「はあ」
貞操帯は装着したままだ。大丈夫だろう。
「あれ?」
貞操帯、ロックが外れてブラブラしてるじゃん。てことは……。
「……抜いたろ」
「なに言ってんの、平くん」
「博士、あんたまた抜いたろ。俺が寝てるのをいいことに」
「あんた眠ったんで、予定通り実験に取り掛かっただけだからさ」
あっさり認める。悪びれた様子もない。今年の麦の作柄を報告する役人といった雰囲気だ。
「にしても、下半身脱がしてびっくりしたわー。平くん、マゾっ気あるんだね。あれマゾの子が女王様に命じられて穿く奴でしょ。浮気しないように。ぐふっ」
悪そうな笑顔だ。
「平くんの女王様って誰。興味あるから今度連れてきてよ」
「お断りだわ。どうせまたぞろ変な実験するつもりだろ」
「大丈夫、命の危険がない範囲でやるから」
「……てか、どうやってロック外した」
「あんなチョロい鍵、このあたしが外せないとでも思った」
呆れたような顔をしている。
「しょせんプレイ用じゃないの。ガチで欧州中世の貞操帯でも締めてらっしゃい、今度は。あれはヤバいらしいから。鍵なくして外せなくなって、排泄に支障が出て死んだって記録があるからね」
「くそっ」
「にしてもあれねー。平くんなんか絶倫になってない? 今回、すごい大量に出たよ。勢いいいから、また顔にかかっちゃった。それに一度出してもまだ硬いままだったし。硬度計で測定したら、相変わらずゴルフボール並のゴム硬度だった。それに……」
斜め上を見て、なにか思い出すような顔をした。
「それに、おかげでサンプル大量に手に入ったわ。一回目と三回目でどう濃度が変化してるのか、調べるの楽しみ」
「三回も抜いたんか」
なんか体、特に下半身が凝ってると思ったら、これか。凝ってる割に妙にすっきりしてるし、俺。
「何回だっけ、レナちゃん」
首を捻って、肩のレナに聞いている。レナは指を折り始めた。
「んーと、五回かな。博士は」
「博士は?」
「うん。あとボクが大きくなって二回で、キラリンは一回」
頭が痛くなってきた。
「キラリンもしたんか」
「お兄ちゃんとほんとにデートするときの予習だよ。握ったらあんなに熱いんだとは思わなかった」
なんで嬉しそうな顔なんだよ。さすがマリリン博士の「娘」だな、お前。やっぱどっかおかしいわ。
「レナもだ。お前、わかってるよなって、事前に念押ししといたろ」
「だからご主人様に命の危険が及ぶような行為はしてないよ」
博士の肩の上で、なにを今さらといった顔をする。
「ただ前と後ろに刺激を与えただけだし」
「後ろだと……」
俺が酒池肉林の夢見てる間にこいつら、マジなにやってたんだよ。
「レナちゃん詳しいわね。さすがサキュバス。教えてもらって試したけど、あたしも驚いたよ。前立腺って、こうやって刺激すんのかって」
博士は感心したような口調だ。
「こう指入れてえ……」
人差し指の先を曲げてみせる。
「あたし処女なのに、ヘンなテク覚えちゃったわ」
手を腰に当てる。
「平くん、責任取ってくれる」
「嫌ならすんなよ」
「実際もう口腔性交も覚えたし。でもあれは駄目ね。サンプルにできないし。飲んじゃったから」
ケロッと告白する。
「それって……」
絶句した。これもうれっきとした人体実験じゃんよ。
「まあいいじゃない。減るもんじゃなし」
このセリフ、あっちこっちで聞いてる気がするわ。
「それにお礼はするわ。約束通り、船のトランスポーター作ったげるからね。来週取りにきな」
「……お願いします」
せめて元くらいは取らんとなー。心の中で涙目になりながら、俺は誓った。今度こそ、吉野さんを連れてこようと。最後のストッパーとして。
■第四部ご愛読感謝のおまけエピソード「キラリンとデート」編は、いかがだったでしょうか。マリリン博士まで絡んでのデートエピソードだけに、予定の3倍、3話に渡って大活躍してもらいました。もうこれ平諦めて、次回からは自分で最初に差し出したほうがいいんじゃないだろうか(作者感想w)
次話からは第五部「
失われたエルフ「アールヴ」の里で延寿の秘法を求める平と吉野さん。ふたりを待っていたのは、謎に満ちた三氏族・アールヴの真実だった。アールヴの秘法を求めるふたりに、ルシファー率いる魔族が立ち塞がる。パーティーの危機に平は、禁断の使い魔追加を決意する。それでも迎えた平の正念場に、意外すぎる人物が現れる。ついに明かされる祖父、
現在、第五部全体のプロットが完成したところです。執筆はこれからなので連載再開はもう少し時間掛かるかもですが、頑張って書きます。よろしければ気楽な感想や星評価など頂けると、励みになるので筆が進みます。
第五部は驚愕の展開(当社比)連続予定。乞うご期待!
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