8-7 嫁の誓い
「はあ……はあ……」
腕枕で俺に抱き着き、トリムは荒い息だ。裸の体から、汗が次々湧いてくる。
「痛かったか、トリム」
「平気……」
それだけやっと口にしたものの、心ここにあらずといった雰囲気。
「かわいかったぞ」
抱き寄せると、汗の玉が流れ落ちた。背中を撫でてやる。
「よく頑張ったな」
かなり痛かったようだ。なんせ俺でさえ相当な抵抗を感じたし。等身大のレナは中学生くらいの体格だが、トリムの中はレナよりずっと狭かった。なんというか、キツいだなんだという前に、物理的に細いというかな。
俺が動く度に喘ぎ……というより苦しそうな声を漏らしてたわ。かわいそうなくらい。それでも逃げることなく敷布団をぎゅっと握り締めたまま気丈に耐え、俺が自由に動くのを許してくれた。
「よしよし……」
撫でてやる。
「……んあっ!」
急に、トリムの体が震えた。
「どうした、トリム」
「あ、あたしヘン。か、体が……」
しがみついてきた。小刻みに震えている。
「なにこれ。怖いよ、平」
「大丈夫か? 誰か呼んでやる」
「このままっ!」
起きようとする俺を改めて抱いてきた。
「あっ……あっ、あっ!」
よがるような声を上げる。
「好き……好き、好きだよう……平ぁ」
「安心しろ。ここに居てやるからな」
「キスして。今すぐ」
「よし」
キスしてやると、待ちかねたように唇を開く。
「んっんんんっ!」
俺が舌を侵入させた瞬間に、喘ぎ声と共に、トリムの体が硬直した。そっと触れてやると、脚の付け根がびくびくと、痙攣するように動いている。
これは……。
この反応。間違いない。女の子が頂点を迎えたときと同じだ。吉野さんやタマ、レナやケルクスと変わりはない。
エルフの恋愛では、恋人の刻印を受けたエルフの女子は相手の体液で興奮し、感じるようになる。レナにそう聞いていたし、実際、初めてキスをしたときのトリムも、酔っ払ったように腰が砕けていた。
体液と言っても、唾液や汗、なんやかんやといろいろある。今さっき、トリムは俺の精を受けた。言ってみれば、頂点の刻印、最後の刻印を、俺によって打ち込まれたことになる。している最中は、初めての痛みが上回り感じる様子すらなかったが、こうして全て終わった今、体液による刻印効果が遅効的に現れたのかもしれない。
「好き……平、好きっ」
夢うつつだ。俺の腕の中で、なかば意識朦朧としている。また汗が噴き出てきた。次々と。
「俺も好きだぞ、トリム」
「抱っこ……して」
「よしよし」
優しく包むように抱いてやる。そのまま俺は、トリムの息遣いを聴いていた。荒い息が、次第に整ってくるまで。
ケルクスと初めてしたときは、こうした遅効はなかった。あいつも痛いようだったが特に苦痛に顔を歪めることはなく俺の上で体を上下に動かし、放出を受けるとうっとりと瞳を閉じて、俺と一緒に頂点を迎えた。
ダークエルフとハイエルフ、部族が違うと、同じエルフでも随分効果が違うもんだな。
「あたし……どうしたんだろ」
ようやく意識がはっきりしたのだろう。俺の肩に頭を乗せてきた。ちゅっと音を立てて、俺の体にキスしてくる。
「いつも平とキスするとぼんやりするけど、今のとは……全然違ってた」
「どう違ってた」
「体の内側からなんか、よくわからないのが急に上ってきて、気が遠くなって……」
ふうと息を吐いた。
「その瞬間、すごく幸せを感じた。平が愛おしくなって……、あたしの体と魂、全てが平に捧げられた感じ……。あたしは……平のもの。平だけのもの……」
顔を起こすと、俺をじっと見た。透き通った、ハイエルフの瞳で。
「あたしもう、平のためならなんでもできるよ。なんなら死んだっていい」
「ありがとうな。でも、俺のために死ぬなんて言うな。俺のためを思うならお前は、俺と自分のために生きるんだ」
「あたし自身より平のほうが、あたしにとっては大事なの」
手を伸ばし、俺の頬を撫でてくれる。
「さっき平のために戦って怪我したときにも、それ思ったんだよ。……そして今は、あのときの千倍も感じてる」
「それが愛だよ。俺だってトリムのためなら、なんだってできる」
「愛……」
トリムはくすくす笑った。
「さっきしてくれたこと、あれも愛の形でしょ」
「ああそうさ」
間違いはない。
「なら……平、また愛してくれる?」
「ああ。いつでもいいぞ」
なんなら今すぐでもな。サキュバスのレナと契約した結果、俺の肉体は魔改造されてしまった。無限とも思える精力を手に入れたからな。
「これでもう、あたし平の嫁だよね」
「ああそうさ。どこに出しても恥ずかしくない、俺の自慢の嫁だ」
「……お嫁さんがこんなことするなんて、知らなかった」
「かわいかったぞ、トリム」
「イヤだ……。なんだか恥ずかしい」
俺の脇に顔を埋めた。顎に触れて、顔を起こさせる。
「トリム……」
キスを与えた。
「平ぁ……」
甘え声を出す。おずおずと俺の舌を吸っているうちに、トリムの瞳はまたとろんとしてきた。体液効果で。
「吉野さんやレナも、平の嫁でしょ」
「そうだよ」
「こんなこと、してるの?」
「ああ」
レナは夢の中がほとんどで、あんまり現実ではしないけどな。
「タマとも」
「そうだ」
「ケルクスとは? ねえケルクスとは」
「……まあ」
次々訊かれると、なんだか恥ずかしいわ。
「何回?」
トリムは体を起こした。
「何回したの、ケルクスと」
「そりゃ……」
露骨な質問だ。それでもちょっと考えてみた……。
ケルクスとは基本、新月の晩だけ。その日ふたりでダークエルフの集落に飛んで、ケルクスの家でひと晩過ごす。つまり月一度だ。
「さ……三回くらいかな」
「さ、三回……」
トリムは絶句した。
これは正しいが、嘘っちゃ嘘だ。月イチ逢瀬とはいえ、その晩は明け方まで寝かせないからな。だから正しくは「三回」じゃなくて「三晩」だ。正確な回数なんか、覚えてやしない。五十回以上なのは確かだろう。そもそも口に放出して飲ませたのを回数に入れるのかって問題もあるし。
ダークエルフの特徴なのか、なんというかケルクスは頑丈だ。欲望のままに俺がいくら乱暴に扱っても、全てを受け入れ、愛してくれる。だから俺も変に気を遣うことなく、ケルクス相手のときは荒々しく、好きなように振る舞える。
恥ずかしがりの吉野さん相手ではできないような荒っぽいプレイも、ケルクスは嫌がらない。それどころか、すごく感じてくれるし。
その意味で、サキュバスのレナに近いところがある。レナは中学生くらいの幼い外見だから倒錯的な感じで、プレイにときどき罪悪感がある。ケルクス相手だと、そういうこともないしな。大人の愛というかさ。
「こんなに痛いことを、三度も……」
トリムは絶句している。
「大丈夫。特に最初が痛いんだ。トリムもそのうち痛まなくなるよ」
「本当?」
「ああ、本当さ」
「ならあたし、五回する」
「は?」
「五回だよ、平。ダークエルフなんかに負けないもん」
また俺の胸に、キスしてきた。
「ねえ平、今から四回、してよう……。まだ夜中にもなってないし。……さっき、いつでもまたしてやるって言ってたよ、平は」
言質取られてた。まあ実際言ったしなあ……。
「いいけど……」
精力なら問題ない。ただ……。
「でも今日だと多分、ずっと痛いだけだぞ、お前」
「いいよ。平なら我慢する。……大好きだから」
まあ、先程のように遅行絶頂はあるとは思う。それに体内への体液刻印の影響で、もしかしたら痛みが消えているかもしれないし……。そのへんは、実際にエルフ相手に経験を積まないと、俺にもわからない。エルフ大好き図書館長ヴェーダ老に聞けば、嬉しそうな顔で、次々エルフ関連エロ知識を披露してくれるかもしれんが。
「じゃあ試してみるか」
「わーい」
喜んで、俺を抱いたまま柔術のように体をくねらせ、俺を上にしてきた。
「はい、どうぞ」
下から見上げてくる。……やっぱ、なんか違うわ。
「我慢するんだぞ」
両腕を上げさせ、脇を露出させた。
「うん。恥ずかしいけど……我慢する」
「トリム……」
「やっ!」
脇の下に唇を着けると、トリムが跳び上がった。
「電気みたいにしびれた」
「感じてるんだよ」
「これが……感じるってこと?」
「ああ。キスしたときとか、さっきと同じだろ」
「キスとは違うけど、さっきの凄いのとは、たしかに……」
「続けるぞ。いいな」
「うん……。やっ!」
また跳び上がった。トリム、脇にポイントがあるな。これはかわいがりがいがあるわ。
バンザイさせて腕を固定し、両脇が唾液まみれになるまで刺激してやった。ときどき強く吸って、キスマークを着けながら。体をくねらせイヤイヤしながらも、トリムは耐えていた。すでにトリムが俺を待ちかねているのはわかっていた。なにせ俺の下半身まで、すっかり濡れてきたからな。
「かわいいぞトリム」
「平……好き」
胸の先を口に含んでやると、トリムは俺に身を任せ、うっとりと瞳を閉じた。
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