2-6 水着着せ替えファッションショーとか
「さて、これでいいわね」
部屋で全員水着に着替えさせ終わると、吉野さんが微笑んだ。どの水着も、俺と吉野さんであれこれ検討しながら買ってきた品だ。
「みんな、かわいい。お人形さんかモデルさんみたい」
「そうですね、吉野さん」
「あたしはこれでいいのか」
「かわいいわよ。タマちゃん」
「そうか。……なんだか落ち着かないな。泳ぐだけの水着なら慣れてはいるが。これおしゃれの水着だろうし」
「いいじゃないかタマ。素敵だぞ」
「尻尾が垂れてないと調子が狂う。耳も隠れてるから、戦闘のとき空間把握がしにくい」
「いやここで戦われても困るし」
いろいろ文句を付けてはいるが、自分がどれほどきれいなのかタマ、自覚してないんだろうな。
タマは白のワンピース水着にサクソンブルーの鮮やかなショートパレオを巻いて、これも白の大きな帽子を被らせてある。褐色の肌だから、白の水着が驚くほど映えている。
ネコミミまで入れた身長で、俺と同じくらい。ネコミミの分だけ頭の位置が俺より少し低い。それでも頭が小さく等身が高いので、どこかエキゾチックな国とのハーフモデルといった印象だ。
なんたって首から尻尾にかけて背骨の周りに和毛が生えてるからな。だから背中が開いてないワンピースの水着で隠す。髪を下ろせば首の後れ毛はバレないし。
尻尾は水着の中に押し込み、腰の上で体に巻いてもらってるんだが、どうしても出っ張って不自然だからパレオで覆ってある。大きな帽子はもちろん、ネコミミ隠蔽用だ。
あーもちろん、こないだデートしたとき同様、猫目は拡げてもらっているので、じっくり見られても美少女にしか見えない。まあこれだけかわいいと恥ずかしくて、じっと見る奴もいないだろうけどさ。
「タマちゃんはスタイルいいから、なに着せても似合うんで楽しいわ。なんか私の妹みたいだから、これからも普段着、いろいろ揃えてあげるね」
「あたしは服なんかどうでもいいが、ふみえボスが望むなら」
いやタマのこと褒めてるけど、吉野さんもたいがいきれいだぞ。
なんたって、黒の大人っぽいビキニだ。黒髪で、真っ白すべすべの肌だから、黒が似合うんだな。
あんまり他人に体を見られたくないという恥ずかしがり屋さんなんで、ブラウンと黒のエスニック柄という渋いロングパレオを巻いて、下半身を隠している。近眼だから、度の入った薄い色のサングラスを掛けてるな。
「あたしはどう。平」
普段は着ないような服を着せてもらったせいか、トリムはうれしそうだ。
「かわいいよ、トリム」
「えへーっ。良かった」
体を伸ばしてみたり捻ってみたり、楽しげにファッションショーしてるわ。
喜んでもらえてなにより。まあ俺も、見ているだけで幸せになるくらいだからな。
実際、トリムが着ているのは、華やかな花柄のトライアングルビキニ。以前湖でタマに着用させたような、三角の布を紐で結んだタイプの、露出の比較的高いビキニさ。
またこれがハイエルフの(人間で言えば)ミドルティーン体型や吉野さん以上に真っ白な肌と相まって、近寄りがたい美しさがある。人間離れしてるというか。
まあ実際人間じゃないわけだが。映画のCG世界から飛び出てきたような、まさに「完璧なキャラ」といったところ。
トリムの場合、見た目的にもちょっと人間としては均整が取れすぎて美しすぎるんだが、それはなんとかごまかせる。問題はエルフ耳だ。
タマ同様、これまた帽子でカバーしようと思ってた。でもトリムが言うには特別な魔法の軟膏があるそうで、それを塗らせた。したら人間の耳になったよ。そこそこの時間、効果があるんだと。
なんでも、隠密として都市に潜入したりするとき、これでヒューマンに偽装するんだってさ。エルフと違って人間は異世界では戦闘力が弱いから、誰もが安心していろんな情報を漏らしてくれるらしい。
「ねえご主人様。ボクはボクは?」
「レナはいつもどおりかわいいよ」
「そう。お人形さんみたいよ」
「へへっ。吉野さんに褒められちゃった」
レナにはいつもどおりドールショップの水着を着せているんだが、さすがに細かな部分のサイズがジャストフィットとはいかない。なので今回、吉野さんがあれこれ修正してくれた。
オレンジ色のかわいいトライアングルビキニなんだが、三角布は一度外して、ストレッチ素材の薄い生地で作り直してたりとか。ほつれないように端をマニュキア液で強化してあって、そこには金ラメを散らしている。
レナの場合、動き回るともろ異質でバレちゃうんだが、吉野さんが言うにはビーチのスペースを予約して確保してあるから、ちょっと動くくらいなら大丈夫だろうってさ。なんでもカバナとかいう、
天蓋付き椅子とかどうにも想像つかないが、まあ行けばわかるだろ。
「じゃあ行くか。ビーチでビール&つまみだ」
「うわーいっ」
浮かび上がったレナが、俺の胸に飛び着いてきた。
「こらこら。今日はダメだ。バレたら困る。海に出るまで人形のふりして、吉野さんのバスケットに入ってろ」
「えへっ。ついつい癖で」
小物をあれこれ収めた吉野さんのバスケットに、レナは飛び込んだ。
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