2-5 俺は「威厳のある美形」ってことにしといたw
くすぐったい。
なんかさわさわされる感触で意識が戻ると、朝のベッドで、吉野さんが俺の胸を指でいじっているところだった。
「あら、起こしちゃった? 平くん」
「……おはようございます」
「おはよう」
ふたりとも裸。シーツすらはねのけて体にはなにもかかっていないが、静かな空調が、裸でもちょうどいい室温に調整してくれている。封印してたからかレナも夢に出てこなかったし、俺にしては静かな朝と言える。
「男の子って、なんで乳首付いてるのかしら。使わないのに」
俺の乳首をころころいじくり回す。
「わあ硬くなってきた。おもしろーい」
「やめてくださいよ」
「ふふっ、いいじゃない。ねえ」
ころころ。
ころころ。
ころころ。
「じゃあお返しだ」
「きゃっ!」
覆いかぶさると両腕をバンザイさせて、手で押さえ込む。そのまま吉野さんの胸を口に含んで責めてやった。
「……」
「……」
「……んっ」
舌に感じたんで、頭を起こして確認する。
「ほら、自分だって硬くなってるし。みんなそうなんですよ」
「た、平くんがいじめるからでしょ、それは……。ねえ手を放して。明るいから胸丸見えで、なんだか恥ずかしい」
「恥ずかしいもんですか。かわいいですよ」
「恥ずかしいよ、もちろん。だって男の子に裸を見られてるんだから」
「かわいい」
「恥ずかしい。硬くなってるの見られるの。……平くん、部下だし」
「かわいい」
「……」
黙っちゃったな。くたっと体から力が抜けたし。
「まだ結構痛かった。昨日の夜」
横を向くと、ぽつりと口にする。
「そりゃ、人生でまだ二回目でしょ。当然ですよ」
「そんなものなのかな、みんな」
「そのうち気にならなくなりますよ」
「痛いのは嫌だし……じゃあ、早く私を慣らして。ねっ」
キスをおねだりされたので、応えてあげた。
「三回目、今からしましょうか」
「さっきカーテン開けちゃったから、体丸見えで恥ずかしいもん」
俺の目をじっと見つめている。
「……でもいいか。平くんになら私の体、隅から隅まで見られても。恥ずかしくても我慢する」
俺の頭を優しく引くと、自分の胸へと導いた。
●
それやこれやで、朝、随分寝坊(と言っていいのかわからんが)した。もう身も心もすっきり幸せな状態で、ロビーフロアのカフェで朝食。ゆっくりコーヒーを楽しんでから部屋に戻った。
「さて、じゃあみんなを呼ぶ?」
「ええ」
レナにタマ、トリムと、使い魔を次々召喚した。あーさすがにドラゴンロードはなしな。仮契約だから来てくれやしないだろうし、あんなの呼んだら世界的な大騒ぎになるに決まってる。いくら広いスイートだったって、そもそも部屋に入らないしな。
「やっと呼んでくれた」
トリムに睨まれた。
「リゾートで遊ぶっていうから、楽しみにしてたのに」
腕を組んでふてくされてるわ。
「昨日はなんだかんだ忙しくてな。悪い悪い」
「そ、そうそう。……その分、今日はみんなでいっぱい遊びましょ、ねっ」
「吉野さんがそう言うなら……まあ」
なんだよ。召喚主の俺にはぶーたれて、吉野さんがなだめると納得とか。俺の権威、どうなってるんだwww
「へへっ、ご主人様」
さっそくいろんな部屋を見て回ってたレナが、テーブルに戻ってきた。
「なんだよレナ」
「ここ、なんとなく淫靡」
「インビってどういう意味、レナ」
トリムはきょとんとしてる。
「いんびとはなあトリム、威厳のある美形の略だ。――つまり俺のことだな」
「威厳のある美形」
ゲラゲラ笑い出した。
「平が、い、威厳のある……美形」
ひくひく痙攣しそうなくらい笑ってるじゃん。高貴なハイエルフがそんな大口開けて笑うなっての。はしたない。
「淫靡だよご主人様。だってほら、空気がなんか夜中の気配で淀んでるし。ベッドなんか、くしゃくしゃのシーツが床に落ちてるし。ぷぷっ」
レナも噴き出した。
「ベッドでどんな運動してたの、ご主人様。なんかすごく激しかったみたいだけど」
「朝のラジオ体操だ。冒険者なら体のコンディション整えておくの、基本中の基本だろ」
「……」
黙ったまま、タマは天井を見上げて瞳を閉じている。それから目を開けて、俺を見つめてきた。まっすぐに。
「まあ、ふみえボスも平ボスのボスも、幸せそうでなによりだ」
うーむ……w
予想通り、トリム以外にはあっさり全部バレてるな。タマの奴、ケットシーならではの嗅覚で、俺が吉野さんとしたのはわかっただろうし。あの口調だともしかしたら、回数すら見破られてるかも。
「本日の予定。ビーチで遊んでビールとランチ。晩飯はこの部屋でルームサービス。みんなでジャグジー。飲み直し。就寝。以上だ」
「わあ。真っ昼間から高貴な飲み物、なんちゃってビールだね」
トリム、喜んでるな。
「悪いなトリム。このホテルには、多分それないわ」
「えーっ」
むくれてるな。
「でも生ビールもいいもんだぞ」
「あれもおいしいけど、なんちゃってのほうは段違いだから」
なぜかトリム、本物ビールよりあっちのが好きなんだよな。それに我を失うほど酔っ払うのは、なんちゃってビールのときだけだ。エルフの体の神秘だな。王立図書館のヴェーダ館長に教えてやったら、研究材料として喜ばれるかも。
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