2-4 エルフふたりと飲んだらこうなった

「さすがは婿殿。平はいい男だ」


 俺の腕を、ケルクスは胸に抱いた。浅黒い肌に、白いビキニが超絶似合っている。タマに似た芯を感じる筋肉質の胸には、汗が浮いている。陽射しが強いからな。


 この汗、舐めたらやっぱり甘くて催淫効果があるのだろうか。……それとも性的に興奮したときの汗じゃないと、あの効果はないのかな。


 せっかくの機会だし、試してみるか……。


「ケルクス、こっち寄れ」


 腕に力を入れ、思いっきり抱き寄せる。


「あっ……む、婿殿」


 ケルクスがわなないた。


「ちょっといいか」

「んっ」


 ケルクスの胸を揉んで、指を舐めてみた。それから自分の胸を拭った指を、ケルクスの口に当てる。抵抗せず黙って唇を開くと、ケルクスは俺の指を吸ってくれた。


「……ん……んっ」


 瞳が次第にとろんとなり、息が荒くなってきた。ケルクスの汗を味わった俺も、体の内部でなにかが立ち上がるのを感じる。とにかくケルクスを押し倒したくなってきた。十日間くらい禁欲した後くらいの感じさ。


 ……てことはやっぱり、体液ならいつでも効果があるんだな。「聖なる刻印」ってすげえ。そら「エルフとのアレは格別気持ちいい」って、レナが言う訳だよなあ……。


「ちょっと、なにしてるのさ」


 腕を腰に当てたトリムが、俺の前に仁王立ちになっていた。


 ケルクスに対抗して過激なビキニを選んでいるから、肌面積が凄いわ。トリムは人間で言えば女子高生くらいのかわいい見た目だから、「アイドルが初めて挑んだ話題のグラビア」みたいな感じだ。


「指なんか吸っちゃって」


 ほら詰めてと言いながら、俺の横に座った。ひとつのデッキチェアに三人だから、もう全員、ぴったりくっついてるも同然だ。


「これは実験だよ、トリム」

「なんの実験」

「それは……」


 聖なる刻印の実験とは言いづらい。俺とケルクスがキスしたのは目の前で見たが、その後関係を持ったのは知らないはずだし。


「なに黙ってんの。もういい。あたしも吸う」


 俺の手を奪い、人差し指を口に入れた。


「んっ……んんっ」


 いやムキになってそんなにチューチュー吸われても、あんまり意味ないぞ。特に汗拭ってないし。


 レナは今や俺の頭の上に移り、面白そうにトリムやケルクスを眺めやっている。


「ま、まあ三人で飲もうぜ。ほらトリム」


 新しいグラスに酒を注いでやる。


「ケルクスもグラスを持て。乾杯だ」

「婿殿」


 荒い息のまま、ケルクスがグラスを持った。


「婿」という単語に、トリムがぴくりと眉を上げた。


「ならボクも飲むねー」


 俺の腰の上に、レナが舞い降りてきた。腰に提げた自分用の小さなプラカップを掲げる。


「ほらよ、レナ」


 注いでやる。


「ありがと。はいみんなカンパーイ」


 レナの合図で、全員黙って酒を飲む。レナの奴、揉めそうと判断して介入したんだな。マジ助かるわ。さすが俺の第一の使い魔だけある。


 腰に下りたのも、もしかしたら刻印効果で俺の下半身に変化が起きても隠してくれるつもりなのかもしれんし。


「ふーっ」


 トリムがほっと息を吐く。


「うまいだろ、トリム」


 腰に手を当て、抱き寄せてやった。トリムを大事にしてやらないとな。


「……うん」


 体をもたせかかってきた。かわいい胸が、俺の胸に当たる。


「お酒、おいしい……」


 唇を俺の肩あたりに着けたまま囁く。


「それに……甘い」


 はあ肩のあたりでもぞもぞしてると思ったが、汗舐めたか。まあいいけど。


 俺は空を見上げた。


「そろそろ二時ってところか。……ちょっと早いけど、おやつにしよう。……今日はトリムの好きなドーナツとエクレア、両方持ち込んであるからな。特別に、トリムだけは食べ放題だ」

「嬉しいけど、ドナツーとエレクアだよ」

「どっちでもさ。ほら立て」

「うん……」


 言ったものの、くたくたっと座り込んだ。


「あれ……変だな。体……熱い。飲みすぎてもないのに……」

「ご主人様。刻印効果だよ」


 俺の耳で、レナが囁く。


「見てほら、ケルクスも」

「平……」


 たしかに、ケルクスもそんな感じだ。腰が抜けたというか、なんというか。


「すごいね、効果」


 レナは感心しきった声だ。


「きっとふたりとも、今だったら凄いよ、反応。……ふたり連れて船室に下りる? ……ご休憩」

「馬鹿言うな。まだ真っ昼間だ」


 昼間っからエルフ3Pとかやるかっての。そもそもトリムとは、まだ一度もそういう関係になってないし。


「ぷぷっ。こないだ吉野さんの手を引っ張ってこそこそ船室に消えたの、ボク、見てたけど」

「お前、寝たフリしてたんか」

「ご主人様、めちゃくちゃキョロキョロしてた。王家の聖地に墓荒らしに入ったシーフみたいだったよ」


 俺の姿を思い出したのか、噴き出してやがる。なんだよ。みんな昼寝してたはずなのに、あれ見られてたのか。レナの奴、知らん顔しやがって……。


「嫌な奴だな、レナお前」

「えへへーっ」


 楽しそうに笑っている。


「とにかくおやつだ。ほら、頑張れ」


 トリムとケルクスの腕を取って、立たせてやった。


「吉野さんのとこ行くぞ」

「う、うん」

「平……婿殿」

「ならボク、タマ起こして下からおやつとかいろいろ持ってくるねー」


 俺の肩から、レナが飛び立った。



●次話より、いよいよ邪の火山に……

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