第七部 「三木本商事、社長解任大乱」編
1 胎動
1-1 二チーム合同踏破
「それにしても……」
異世界。朝。合流した俺のチームを見て、山本は目を見開いた。
「平さんのチーム、また増えたんだな」
「俺がシニアフェロー成りしたとはいえ、俺達は同期だ。呼び捨てでいい。前も言ったろ、山本」
山本は、あの嫌な野郎、つまり川岸の腰巾着だった。俺や吉野さんをいいように使おうとするカスに従った、馬鹿な奴だ。結局、川岸がアフリカに更迭されてから、同期栗原の下に成り下がったってわけ。こうしてヒラのまま異世界でこき使われてな。まあ自業自得だな。
「そうだけど……さ、平さ……平」
ひいふうと、指を折って数えている。
「平を入れて十一人パーティーか」
「まあな。といっても使い魔だけじゃなく、客人もかなり多いが」
俺と吉野さん。それにふたりの使い魔として、レナ、タマ、トリム、キラリン、エンリル、サタン。食客として、バンシーのエリーナに天使の子キングー、ダークエルフのケルクス。エリーナとキングー、キラリンとサタン以外は、すでに全員俺の嫁だ。嫁にしている件はもちろん、こいつらにも会社にも内緒にしている。
「こっちは相も変わらずふたりと使い魔三体だけだ」
栗原も苦笑いだ。
「どうにも平、お前は男としてのポテンシャルが俺や山本とは桁違いだな」
栗原も同期だ。三木本Iリサーチ社チームは、リーダー栗原とヒラの山本。栗原の使い魔がネメシスのレオン。山本の使い魔はシーフ二体だ。
レオンは栗原の足元に行儀よく座り、タマを見つめている。ネメシスは猫系猛獣モンスターだ。だからあいつ、タマのこと大好きだからな。シーフ二体はいつもどおり、山本の陰からこそこそこっちを見ている。卑怯な野郎共だわ。
「またどえらい美人が増えたな」
婚姻形態のエンリルを見て、栗原はよだれを流さんばかりだ。薄衣姿のエンリルはたしかに、エキゾチックな美少女だからな。スタイルだって抜群だし。男なら誰だって、この反応になるだろ。
「ふむ。余は平の嫁。余がきれいな婚姻形態になれたのは、平のおかげであろう」
「嫁っ!?」
ふたりの口が、あんぐりと開いた。
「おうよ。余の腹には、平の子だって宿っておる」
お腹を優しく撫でている。
「こ……こど……も」
「冗談だよ」
俺は横目でエンリルを睨んだ。
「こいつ、いっつも冗談ばっか言うんだわ」
「冗談であったかのう……」
エンリルは素知らぬ顔だ。
「冗談か。……まあそりゃそうだよな。上司として、吉野さんが監視してるんだもんな」
「ええそうよ、栗原くん」
涼しい顔で、吉野さんは頷いてみせた。
「私がそんな不行跡、させないわ」
いやさせないもなにも、昨日の晩、当のエンリルやケルクスと一緒に、俺の体の下で喘いでたけどな、吉野さん。かわいい声で。
「ですよねー、吉野さん」
俺の同意に、エンリルはにやにやしている。
「きれいな女子ばかりじゃなくて、ちっこいのもいるじゃないか」
山本は呆れた様子。
「妖精が小さいのはともかく、このふたり、中坊だろ」
キラリンとサタンのことだな。
「お嬢ちゃん、いくつ」
サタンの頭を撫でている。
「飴、あげようか」
「貴様、大魔王サタン様に無礼であろう」
「ぷっ」
栗原が噴き出した。
「そうかあ、サタンかあ……。はいはい」なでなで
山本は撫で続ける。
「ムキーッ! 無礼者ぉーっ」
俺の同僚相手だからさすがに、ぶっ殺しはしないな、サタンの奴。頭を撫でられながら、地団駄踏んで悔しがってやがる。オモロw
「あ、あたしだって、もうすぐ平の嫁になるわい。吉野やタマと同格に」
「お嫁さん、憧れるよねー、子供は」なでなで
「ムキーッ!」
面白いなあ……。
この謎コントをずっと見ていたかったが、そうも行かない。一応これ、異世界出張業務だからな。
「それより栗原、せっかくこうして合流したんだ。今日は距離を稼ごうぜ。十六人も居るんだ。雑魚なんて瞬殺だろ」
てか本気になればボス級でも一瞬だけどな、俺のチーム。
「そうだな」
手を差し出してきた。
「よろしく頼むよ、平」
「任せておけ」
握り返すと、俺達は進軍フォーメーションの詳細を詰めた。
●業務連絡
新作投稿開始しました!
コンテスト参加中につき、とりあえず1話だけでもいいので目を通していただき、フォロー&★みっつ評価よろしくお願いしますー ><
新作では割と難易度高い設定に挑んでるので、途中で心折れないよう、応援よろしくです……。といっても難しい内容ではなく、いつもどおりのお気楽異世界物なのでご安心を。
「二周目の悪役貴族俺、金の力で悪役ムーブかまし秒で無敵にw 一周目の即死モブ俺を陰から助けながら、自分の死亡フラグも折って回る。……ってなんでだよ、悪役の俺に、全ヒロインとのフラグが立ちまくってるんだが」
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