ep-4 貴賓客室の、まったりした朝

「ん……」


 夢うつつで、吉野さんが寝返りを打った。


 貴賓客室。もう朝だな。大きな窓の豪華で分厚い緞帳どんちょうの隙間から、陽の光が部屋に漏れてるから。


「はあ……」


 俺は起き上がった。


 とっておきの貴賓客室だからか、どでかい寝台を備え付けた寝室がいくつもあるんだけど、結局俺達パーティーは異世界一泊出張のいつもどおり、おんなじベッドで寝たよ。とはいえ寝台が四畳半くらいでかいんで、くっつき寝じゃなくて各人ばらばらといった感じ。


 俺とレナが片隅で。吉野さんとタマは逆サイド。トリムは真ん中だったんだけど、今気づくと、俺にくっついてるな。レナの反対側に。


「起きてるの俺ひとりか……」


 さすがにみんな疲れてたみたいだ。起きてこないし。


「ご主人様、起きた?」

「ああ。レナもか」


 ぴょこんと起き直ると、レナが俺の胸に飛び込んできた。


「へへーっ。ご主人様のエッチ」

「しっ。もし聞かれたら誤解されるだろ。俺とお前はなんにもなかったんだからな」

「現実ではね」

「もう黙れ」


 予告通り、俺の夢に登場したレナが、いろいろ癒やしてくれたんだ。


 夢で散々あれこれしたんで、レナ、朝から嬉しそうだな。たっぷりレナに癒やしてもらったからか、俺はなんやら絶好調な感じだわ。


 不思議だよな。夜通し夢の世界でサキュバスに絞られても、疲れるどころかむしろ元気とパワーが補給されるってのは。


 レナの方もそうみたいだぞ。顔とか肌ツヤツヤになってるじゃんw さすが、エッチなことすればするほど経験値が溜まってレベルアップするとかいう、サキュバスだけのことはあるな。


「みんなまだ寝てる。俺達も、もうひと眠りしようぜ」

「ボクは眠くないけど」

「いいから横になれ。目をつぶってなんか考えるんだ」

「わかった。今夜、夢の中でご主人様とどんなプレイするか、計画を練る。……コスプレとかどう?」

「無駄口叩くな」


 横になり天井を見つめているうちに、俺はまた眠くなってきた。すぐ脇からトリムの規則正しい寝息が聞こえてきて、それも眠気を誘うし。


 そっと頭だけ上げて吉野さんを窺うと、規則正しく寝息を立てている。その向こう、ベッド脇の壁には、俺達の武器やら戦闘服やらが立て掛けてある。


 俺の初期装備たる通称「ひのきの棒」、跳ね鯉村で誂えてもらったロングスウォード、そして「バスカヴィル家の魔剣」。その隣には、例の「ミネルヴァの大太刀」も。


 あの大太刀、とにかく長くて大きいから、吉野さんが生かしたほうがいいだろうって判断で、ミフネやアーサーが相談の上、俺達にくれたんだ。


 ほらなんたってドラゴンライダーって、要するに騎馬兵みたいなもんじゃん。間合い命だからさ。古代魔法により、吉野さんの力でも軽々振り回せるし。修行さえすれば、離れたところからの魔法攻撃とか防御魔法もいずれ使えるようになるらしい。ヒーラー/メイジ要員である吉野さんにぴったりだしさ。いいもらいもんだよな。


 俺の横で、レナはなんかぶつぶつ呟いてる。プレイ内容を検討でもしてるんだろう。サキュバスって、始終そんなこと考えてるんだな。


 さて、もうひと眠りするか。


 目をつぶると俺は、羊の数を数え始めた。


 そして起きると、王女帰還を国民にどう開示するか、マハーラー王はもうすっかり決めていた。


 それは、意外な方法だった。

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