7-13 深夜3時
「もうなにも言うな、平ボス」
ベッドに腰掛け、しなだれかかってきたタマは、そのまま俺の唇を求めてきた。応えてやると、ちろちろと俺の舌を吸う。唇を離すと、深くて熱い吐息を漏らした。
「耳を。耳を触ってくれ、ボス」
頭を撫で、耳も撫でてやると、うっとりと瞳を閉じる。
「最初に耳触ったときとか、お前に噛み付かれたもんだけどな」
「ふふっ」
くすくす笑うと、俺を横抱きにしてきた。
「あのときは、お前のことはなんとも思っていなかったからな。これからは、いつ触ってもいいぞ。いや……触ってほしいんだ、平ボス。耳も、尻尾も。……尻尾の根元も。触るだけでなく舐めてくれたら、あたしはもっと幸せになる」
もう発情が始まっているのだろう。いつぞやレナが言ってたし。発情したケットシーは、互いに耳や尻尾を触り合って気持ちを高めるもんだと。
そのまま触り続けていると、タマが体をこすりつけてくる。風呂上がりのいい香りがする。俺も徐々に興奮してきた。
服の上から、そっと胸に手を置いてみる。タマはなにも言わず、ただじっとしている。手が動き始めると、次第に息が荒くなってきた。普段のタマからは想像もできない、鼻にかかったかわいらしい声が漏れる。
発情したからだろうか。吉野さんやレナより、はるかに反応がいい。撫でるだけで喘いでるし、セーター越しに感じる胸の先を軽くつまむだけで、びくびくと体を震わせたりする。
「タマ……」
「平……ボス。……好きだ」
潤んだ瞳で見上げてきた。俺は自分のシャツをかなぐり捨てた。汗でべたつく俺の胸に、タマはすぐ顔を寄せてきた。胸と言わず脇と言わず、熱い息で、ていねいに舌を這わせてくる。さっきまで嫌な汗を掻いていた俺の体を。嫌がりもせず。
ざらざらの猫舌がくすぐったい。
密着して動くタマの頭や体からは、俺を興奮させる香りが立っている。風呂上がりの香りではなく、なにかもっと男を誘う奴が。
欲望がはち切れそうになるのを感じた。止めようもない黒い塊が胸の奥から上がってきて、俺の頭と心を支配する。
もうダメだ。
「タマ」
襲いかかるように一気に服を剥ぎ取ると、裸のタマをベッドに押し倒した。
●
夜中に目が醒めた。タマは俺の腕枕。狭いシングルベッドだ。ぴったり密着したまま寝息を立てている。かわいらしい胸を感じる。
活動性の高い獣人であるせいか、体温は高い。真冬に、気持ちのいい布団に包まれているかのようだ。なんか知らんが、とてつもない満足感が俺を包んでいる。奇妙な感覚だ。
今日はともかく疲れた。仕事面で激動の一日で、極端に疲弊していた。それなのに今はもう、生きる力が全身に満ちてるんだからな。タマの力だ。
家族を持つって、こういう感覚なのかもしれない。仕事でどんなに疲れて深夜に帰っても、子供の寝姿を見ると癒やされるとか言うしな。
家族ってのは俺にとっては多分、吉野さんやレナ、タマやトリム、それにキラリンという、仲間との暮らしを意味しているんだろう。普通の人の生活とは随分違っちゃったけど、それは仕方ない。きっとこれが俺の運命って奴なんだ。
首だけ回してテーブルの時計を見ると、三時過ぎ。暗い部屋に、無機質な反転液晶の表示が、青く輝いている。
タマとは、夢のように濃厚なひと時を持った。やはり初めてだけに痛いようだったが、前衛での戦いに長けた獣人らしく、痛がる様子はあまり感じさせなかった。下から俺の頭を優しく抱いたまま。俺が好きなように動くままにさせてくれた。
タマ、舐めるのも舐められるのも大好きなんだな。文字通り体中舐めてくれたわ。前から後ろから。舌が入ってきたときは、ちょっとびっくりしたけどさ。タマがそうしたいんなら、俺は別にいいや。意外に気持ち良かったし。
それに俺にも甘えて、舐めて……というか体中にキスしてもらいたがった。俺が甘噛みしてやると体を震わせて喘いで。愛らしかった。
これで俺、経験三人になったわけだ。といっても全員種族が違うせいか、みんな感触が違うのな。人間でも違うのは当たり前なのかもしれんが、正直、よくわからん。俺、吉野さん以外の人間としたことないし。
とにかく、吉野さんは俺をやさしく包んでくれる。腰を引くときに名残惜しそうについてくる感じ。レナはともかく狭い。タマは括約筋が発達していて俺が動くのも厳しいくらいだから、快感が凄い。三者三様というか、全然異なる。
もしトリムとしたら、どんな感じなんだろうな。やはり全く違うんだろうか。レナが言うには、エルフとのアレは、格別気持ちいいらしいし……。とはいえあいつは、こっち方面には
それにしても、タマの舌は凄かった。レナも体にキスしてくれるが、タマほど刺激的じゃない。吉野さんはウブだから、俺の体を舐めてくれたりはしない。まだいろいろ恥ずかしそうにしてるし。
タマは違う。俺の体に唇を這わせるだけで、自分も感じるみたいだ。キスしながら熱い息で思わず喘いでいたからな。俺の匂いが好きだって言ってたし、それで興奮するのかもしれない。獣人ケットシーだし。……しばらく妄想のネタが尽きないな、これは。
「……平ボス」
「起きたのか」
「ああ」
暗闇。時計LEDのわずかな光に、タマの瞳が輝いている。
「だってボスが、こんなだし」
太腿を、俺の下半身に乗せた。
「すごく熱いぞ。硬いし。……なに考えてた」
「……タマ、かわいいなってさ」
「それで興奮してるのか」
くすくすと、忍び笑いしている。
「まあな」
「またしたいんだろ。……そんな匂いがする」
タマには隠し事できんな。
「あたしはもう一生、お前だけの女だ。いつでも、好きなようにしてくれ」
「いいのか」
「遠慮するな。一度してもらったから、今回の発情の熱は引いた。それでもあたしも、ボスをまた感じたいから……」
起き上がると俺の上にまたがり、四つん這いになって裸の胸を顔に押し付けてきた。
「ほら。雄として、自由にあたしを組み敷くんだ、平ボス。朝まで、まだ何時間もあるぞ」
「タマ……」
唇に押し当てられていた胸を、俺は口に含んだ。
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