5-3 サキュバスがレベルアップすると……
「ご主人様、今日はカッコよかったねー」
夢の中。真っ白ふわふわの例の謎ベッドで、レナは俺の隣に座っている。いつものミニレナじゃなく、夢の中限定の等身大になって。
「あの川岸? あいつにお酒、ばんばんぶっかけて」
「まあなー」
左遷社員にコケにされて唖然とするエリート社員様の面を、俺は思い返した。
「いや俺はなに言われてもいいんだけどさ、吉野さんのこと馬鹿にされたんで、どうにも我慢できなくてな」
「でもいいのかな。情報を探るために誘いを受けたんだよね」
「まあ、あいつのケツ持ちが誰だか、もうわかったしな」
「だからご主人様のリミッターが外れたんだね。楽しかったー」
くすくす笑いながら、レナは脚をぶらぶらした。
「やっぱりあの石元って人だよね」
「十中八九な」
「じゃあ、あいつがご主人様にちょっかい出してきたら、あいつの上司にチクる手があるよね」
「金属資源事業部の事業部長か」
「そうそう。だって事業部長からしたら、川岸は部内の裏切り者でしょ。社長レースでライバルの駒になってるんだから」
「それは俺も考えてた。ただ下手に動くと俺まで潰されるからな。実際にそうなったときに検討しようぜ」
「うん。さすがはご主人様。ボクなんかより頭いいねー」
レナは、俺の腕を抱えてきた。胸を押し付けるように。柔らかくて温かいし、レナの体のいい匂いがする。
「ご主人様、素敵……」
「どうしたレナ、いつもと違うじゃないか」
「どう違うの?」
甘えるような、かすれ声だ。なんかエロい。いつもだと、他愛ない話して、それから耳かきプレイとかなんだが。
「それはその……」
「ふふっ」
俺に体を預けてきた。
「もしかしてお前……」
「そう。レベルアップしたんだよ」
「そうか。あの谷で大量に植物モンスターを退治したからか」
俺は歩くことと使い魔追加などのイベント制覇でしか経験値らしきものが溜まらないが、使い魔は別。戦闘も経験値として蓄積される。
「だから、もうこんなことだって……」
ゆっくり顔を近づけてきた。
「できるんだよ」
瞳を閉じると、キスしてきた。
「レナ……」
「黙って、ほら」
レナは、唇をそっと開いた。俺の舌を誘うように。
一瞬悩んだが、結局、誘いに乗った。俺の手をそっと掴むと、レナは自分の胸に押し当てる。手のひらで包むようにさせて。
「服の上からだけだよ、ご主人様」
直接触れるほどはレベルが上ってないんだな、サキュバスとしての。
誘われるまま優しい舌を感じて胸をゆっくり揉んでいると、レナの呼吸が次第に荒くなってきた。時折、こらえきれないように声が漏れている。ご主人様大好きと、熱い息で囁いて。
そのまま長い時間が経った。いや経ったような気がする。とにかく、なにか大きな力に突き動かされているうちに、気がつけば俺は、夢の中で意識を失っていた。心地よく。
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