第139話

多分、オラは死ぬのだろう・・・

妹もさっきから殆ど動かない・・・

気が付くと知らない大人に囲まれていた。

どうやらオラと妹は何者かに拾われたのだろう。

村で聞いた噂では孤児を拾うのは人買いの者位だと言う。

この者たちは人買いなのだろう噂で聞く外つ国の者も連れている。

一番偉いのはあのお侍か・・・


「おう!坊主話せるか?」

「何でごじゃ・・・ございましょう」


噛んでしまった・・・慣れない言葉だから仕方ない。

一番偉いであろうお侍様がクックッと笑い、「普通に話せ」と言う。


「あんたは人買いか?」

「あ~う~ん・・・そうだよな~孤児を助けるなど人買い位なものだな、あははははは~」


オラの言葉がそんなにおかしいか?

ムッとした顔をすると、「すまんすまん」と言って頭を撫でられた。

そして、「先ずは飯食え」と言い、粥をくれた。

このお侍様が言うには、腹がすき過ぎた状態で食い物を食べると死ぬこともあるそうじゃ・・・本当か?・・・聞いたことも無い・・・

まぁ食べ物くれる人はいい人だと思っておこう。

見ると、妹も綺麗な衣を着た女子たちに粥をゆっくりと食べさせてもらっておる。

見ていると腹が「クー」と鳴いた。

お侍様は笑いながら、「ゆっくり食え」と言ってまた頭を撫でた。

このお侍様は「くらんど」か「ながししょう」と言うらしい。

皆がそう呼んでいる。

今は心の中でこの侍を「くらんど」と呼ぶこととした。

綺麗なキラキラと輝く白い髪の外つ国の女子は「りり」と言うらしい。

浅黒い肌の綺麗な女子は「みう」と言うらしい。

「りり」と言う女子と一緒によくいる綺麗な女子は「しゅんれい」と言うらしい。

何と「くらんど」というお侍様の嫁だと言う・・・何と言う助平じゃ!!

何人もの女子を連れ回す者を助平と聞いた、間違いないこのお侍様は助平に違いない!!

助平は男の憧れとととが生きて居た時に隣の五兵衛ごへえさんと話しておった。

俺はくらんど様を凄い人だという事を理解した。


「それで名は何と言う」

源太げんたと言うだ」

「源太は何歳じゃ?」

「何歳?」


生まれて1つ年を取るごとに数えるものらしい・・・

数なぞ数えたことなど無い・・・

くらんど様は「今後教えて行くから覚えろ」と言う。

生きる為に必要と思えなかったのでその事が顔に出ていたのであろう。


「数を知るは重要だぞ」

「なしてじゃ?」

「数を数えられないと騙される」

「騙される・・・」

「教えてやるから覚えろ。それから、行く所が無いなら着いて来い。一人で生きていける程度にはしてやるぞ」


本当にお人よしじゃ。

くらんど様の方が騙されるぞ。

そして、オラはこのお侍様の一団に着いて行くこととした。

後から知ることとなったが、このお侍様は有名な人だったという事、そして、ここで拾われたことが幸運なことであったことを知ることとなる。


★~~~~~~★


博多に向かう船でキャッキャと里子がはしゃぐ。

初めての船旅だが酔うんじゃないかと心配したが、そんなことは無い様でご機嫌で莉里と春麗が面倒を見ている。

源太はぐったりしているから、船に弱いのかもしれないな。

源太は俺の感覚では5~6歳位と思ったが、10歳前位のようだ。

この時代の人間は栄養状況が悪いから発育が悪いな・・・俺も弟たちも発育が良いからすっかり忘れていたよ。

源太の妹のおこうが5歳位らしい。

若しかして、0歳の赤ん坊と思っていた千代は2歳か3歳位かなと思って恐る恐る弓ちゃんに聞いたら、「蔵人様は面白い事を言いますね」と言って笑われた・・・どうやら0歳で間違いないようだ。

里子と同じ歳だが里子ももう直ぐ1歳ではあるが走り回っていて、3~4歳に見えるそうだ。

やはり発育が良い。

千代は、丁度、里子の1ヶ月目位の状態で1歳位だろうという事だが、やはり里子は天才だ!!

え?その件はもういいと?・・・仕方ない・・・

さて、里子によるとこの3人は他の子どもと違うらしい・・・何が違うかはまだよく言語化できていないので解らない。

うん!里子が言うのだから間違いない!!

親馬鹿?ははははは~何を言う!里子は正義だ!!

さて、源太は地頭は良さそうだ。

商人たちに教えた様に算数を教えたが覚えが良い。

お香はまだ小さいからか未知数だが、勉強は苦手そうだ。

里子も教えるのは3歳位からと思っていたが源太たちが学んでいるのを見て興味を持ったようで、一緒に勉強している。

まだ0歳児なのに算数をする里子、天才だ!!

あ~すまんな・・・親馬鹿で・・・

さて、源太には剣術なども教えている。

里子もそれを見てやりたがったが、3歳までは駄目と言っている。

里子が拗ねて一刻も俺と話してくれ無かった・・・泣きそうになったぞ。

しかし、心を鬼にして断固認めなかった。

源太は中々筋はいいのかもしれないが、まだまだ発育が悪くガリガリだ。

聞けばどっかの国人の倅の様である。

戦に負けて親父が死に、母も過労で・・・

戦国あるあるであるが、聞いてて気分のいいものではない。

さて、将来の家来として鍛えてやろう!!


〇~~~~~~〇


今回は拾った孤児、源太中心の話でした。

この戦国期は本当に孤児などゴロゴロいた時代であったようです。

寺が引き取ったりすることもあったようですが、多ければあぶれます。

あぶれた孤児も生きる為に盗みなどを働き生きて行き、最終就職先として野盗等になる者は多かったようです。

普通の孤児と言う訳ではありませんが、孤児から将軍になった人物もいます。

この作品で出て来た徳川家康は孤児から将軍となりました。

徳川家康は幼名を竹千代たけちよと言います。

3歳で母と離別します。

今風に言うと離婚して父方に引き取られた訳です。

そして、8歳で父を亡くし、晴れて孤児となった訳です。

その前もすったもんだあり、6歳から人質生活を開始して、織田から今川と渡り歩きます。

6歳から8歳の2年間は織田家で人質生活をしていたと言われ、織田信長、この時は幼名を吉法師きっぽうしと言い、その時に知り合ったと言われます。

何故に6歳で織田の人質になったかと言うと、6歳で今川氏への人質として駿府へ送られることとなったのですが、味方と思っていた者の裏切りで織田に連れて来られたと言われていましたが、岡崎城(松平家の居城)が織田氏によって攻略されたとする説があり、竹千代の父・松平広忠が織田氏への降伏の証として竹千代息子を人質に差し出した可能性あると歴史研究では言われていますが、今現在は前者の裏切り者説が通説となっています。

しかし、もしかすると研究が進むと通説が変わるかもしれません。

さて、次話はいよいよ丸目蔵人が九州に戻る予定です!!

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