第282話

ハルたちに連れられて海を渡り、春の母国へと船で渡る。

親兄弟に紹介したいと言われているので春の家族たちに会う事となるが、夏を待ち私は春たちと共に故郷を旅だった。

旅立つまでには少し間があったので、春の国の言葉を少しだけ覚えた。

挨拶などを特に覚えたが、他は中々に難しい言語のようだ。

謙譲語?丁寧語?尊敬語?よく解らんが、覚えることは多そうだ。

春たちを迎えに来たという船に乗り、春の母国である国に私も行く事となった。

不安・・・確かに不安はある、しかし、それ以上にもっと春の事を知りたいし、春の話す国を見てみたい。

先ずは春の住む国の中でも指折りの都市、「サカイ」という場所を目指すという。

数日の船旅の後、その都市へと辿り着いた。

驚いた!!

話には聞いていたが、大きく賑やかで人で溢れ返った大都市だった。

大きな船も行き交い、多くの品がこの都市に運ばれて来ているのが着いた港で見掛けられた。

賑やかで活気が凄いし、人々の顔を見れば生き生きとしており、いい街であるのは人々を見れば解る。

しかし、こんなに大勢の人々が何処に居たのかという程に人人人と、多くの人がいる。

キョロキョロと周りを見ながら春たちと共に歩いていると、目が回りそうになる。


「セドナ、大丈夫か?」

「大丈夫・・・」


多くの人を見ていると気分が悪くなって来た。

春に心配かけないようにと「大丈夫」と答えたが、大丈夫ではない様だ。

春が気遣ってくれるのが凄く嬉しい。

心配掛けたくない気持ちと、心配してくれることの嬉しさで、如何すべきか迷ったが、心配かけたくない気持ちが上回り、再度「大丈夫」と言ったが、心配されているいる様だ。

春たちも心配しつつ急いで落ち着いた場所に移動してくれるようだ。

我慢しながら春たちと一緒に向かった先は大きな店だった。

賑わいが凄い。

この店は街の中でも特に盛況で活気に満ちている。

店の者だと思われる男が春に声を掛けて来た。


「お!春坊久しぶり」

「お久しぶり、宗及そうぎゅうさん(通称:天さん)いますか?」

「旦那様は奥に居るから上がって上がって」


春とお店の人と仲良く話しているが、言葉をまだ覚えきれていないので、挨拶位しか理解できないが、その大きな店の奥に上がる事となった。

春は慣れた感じで移動する。

着いて来るようにと言われたので着いて行っているのであるが・・・

立派な部屋に一人の老人が居た。


「やあ、春坊久しぶりだね」

「はい、お久しぶりです宗及そうぎゅうさん」

「虎か白い熊は観れたかい?」

「はい、お陰様で見れ、戦えました」

「わははははは~流石は長さんの息子だね~何方と戦ったの?」

「熊の方と」

「ほう」


老人と仲良く話す春。

一緒について来たイノが教えてくれたのだが、この大きな店の主人で「津田ツダ宗及ソウギュウ」というらしい。

この国でも特に有名な商人で、春の父とは友と呼べる程の仲だという。

そして、春たちを私たちの大陸に送ってくれたのは彼らの所有する船で、迎えに来たのも彼らの所有の船らしい。

猪・鹿・蝶と話している内に話は進んでおり、片目(春長が倒した熊)の毛皮を見せている。


「ほう!中々の良質で良い皮だね。それに・・・大きいけど・・・春坊一人で倒したの?」

「勿論!!それが目的でしたから」

「は~流石、長さんの息子と言うべきか・・・」

「まぁ父上にはまだまだ届きそうにないと実感しましたよ」

「そうかい?この熊に傷らしい傷無いから、軽く倒したと思ったけど?」

「あ~撲殺しました・・・」

「え?刀で戦ったんじゃなく、金砕棒かなさいぼうでも使ったのかい?」

「特注の斬馬刀で・・・」

「斬馬刀なら斬れるよね?」

「はい・・・手強くて、撲殺しちゃいました・・・」

「わははははは~~撲殺、ぷわはははは~」


老人は凄く楽しそうに笑い、それに相対す春は苦笑いし、頭を掻いている。

笑い終わると此方を見て来た。


「それで?そちらの異国のお嬢さんは?」

「彼女は私の妻で、セドナと言います」


老人が此方をマジマジと見て来る。


「ハジメマシテ」

「はい、始めまして」


ニッコリと笑顔でも何か値踏みするような目が怖い。


★~~~~~~★


長さんの息子の一人、春坊が嫁を連れて来た。

長さんだけでなく長さんの所の嫁も息子・娘も中々に面白い。

先日は利坊(利長)が莉里殿の代行として会合に参加しに来たし、関白様(羽柴秀吉)の娘様・恵姫に会う序にと言って羽坊(羽長)が遊びに来た。

そう言えば、麗華ちゃんも先々月に彦八郎(今井宗及)の所に遊びに来てたし・・・

まさに玉手箱の様な一族じゃ。

次ぎから次に何が起こるか解らぬし実に次が楽しみである。

今回は春坊が面白き出会いをしたようで、異国の地より嫁取りして来たというではないか。


「それで春坊、この後は一度九州に戻るのかい?」

「その予定」

「そう言えば、前田様が何時此方に戻るか聞いて来ておったぞ」

「え?又左殿が?」

「わははははは~前田様が春坊に殿呼びされたと聞いたら悲しまれるぞ」


春坊は何故か前田様に気に入られた。

他の御子達にも、勿論、前田様は優しく接しておるが、特に春坊を気に入っており、娘を嫁にしたいと言っておられたが、はてさて。

「セドナ」という娘を見れば民族衣装を着ており、異国の者であるのは解るが、面差しはこの国の者に似ておるが、いやそれにしても、美しき娘だ。

前田様が知れば、残念がるか悔しがるか・・・


「あ~そうだな~・・・又左叔父ちゃんも元気なの?」

「わはははは~前田様は相変らずですよ」

「あ~相変らず先頭切って戦えないこと嘆いているのかな?」

「まぁ前田様も流石に大大名となられましたからな」


前田様も焦って春坊に嫁を押し付けるかもしれぬな。

さて、面白くなりそうじゃし、前田様に恩を売るのも面白かろう。


「春坊、前田様に嫁を取ったことは儂がお会いした折に話しておこう」

「そう?助かるけど・・・また何か面白そうとか思ってるでしょ」

「わははははは~面白いからね~」

「まぁ事実だし、いいよ。又左叔父ちゃんに会った時にでも伝えといて」

「承ったよ」


さてさて楽しみじゃ。

まつ様も春坊を気に入られておるのでもしかすると残念がられるかもしれぬが、如何なる事やら。


「本当に、糞爺め!!」

「わははははは~残り少なき人生楽しまねばな」


〇~~~~~~〇


もう少し春長編続きます。

さて、前田利家は多くの子供がいたそうで、15人以上の子を儲けたそうです。

正妻はまつ(芳春院)ですが、側室が寿福院、隆興院、金晴院、明運院、逞正院の5人居たそうです。

ロリコン大名として知られる前田利家ですが、奥さんが多かったようで、云われる程ロリコンでもないようです。

さて、何故ロリコンと思われる原因になったのは、正妻のまつ(芳春院)とのエピソードにあります。

何とまつ(芳春院)は8人の子供を産みました。

驚くことに初産は満11歳11か月で出産したそうです。

現代なら間違い無く犯罪です。

若い頃の利家は、傾奇者として知られ、短気で喧嘩早く、派手な格好を好む乱暴者として知られました。

武術の腕前が若い頃より優れていた様で、戦働きで功を上げて行きます。

「槍の又左」等と言われる程には名を馳せます。

織田信長が自分の親衛隊的な立場として新設した赤と黒の母衣衆の赤母衣衆の筆頭に抜擢されたそうですが、その同年にまつ(芳春院)と婚姻します。

そして、直ぐに第一子が生れます。

長女・幸がこの時生まれました。

前田利家は、当時、織田信長の寵愛を受けた同朋衆の拾阿弥と諍いを起こし、拾阿弥を斬殺したまま出奔したそうです。

この事件は「こうがい斬り」と呼ばれました。

この事件は織田信長が大激怒し、切腹の危機となったとか・・・

柴田勝家や森可成らの取り成しにより、出仕停止処分に減罰されたそうです。

要は浪人となったと言う事です。

まさに転落人生!!

新婚なのに浪人と言う中々の波乱万丈人生ですね。

信長に無断で桶狭間の戦いに参加し、3つの首を挙げて帰参が・・・許されませんでした。

その後も無断で戦に参戦し首を挙げ、やっと許され帰参します。

さてさて、賤ヶ岳の戦いでは羽柴秀吉に味方し、後に北陸道の惣職などと呼ばれ、五大老の一人となったのですが、丁度物語の頃は、筑前守・左近衛権少将に任官され、秀吉から豊臣姓を賜る程のとなり、大大名の一人と認識されていたようです。

春長と前田利家の関りを感じさせる話は、勿論、伏線です!!

主人公以外の話でも歴史的偉人と絡んで行く予定です。

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