第283話

♡16Kオーバーしました!!

応援頂きました皆様ありがとうございます。

もう直ぐ100万文字オーバーです。

数字が見えてきました!!


◇~~~~~~◇


片目(白熊の皮)の皮はあの商人の老人、「津田ツダ宗及ソウギュウ」に売られた。

売れた金額はとても信じられない程の高値で売れたという。

他にも「今井いまい宗久そうきゅう」という商人の老人にもあった。

此方方も春(春長)の父の友と言う。

宗久そうきゅう老人は飄々としていて先に会った「津田ツダ」とはまた違った意味で油断出来ない雰囲気がある。


「春坊、何時頃九州に行く予定ですか?」

「そうですね・・・何かありますか?」

「貴方の義理の叔父が京より追放されましたよ」


相変らず言葉が解らないので、猪鹿蝶の誰かか、もしくは春が通訳をしてくれる。

春の母(春麗)は公家と呼ばれる権力者の養子となったという。

その公家の義父の息子がこの国の王であるものの怒りを買い、都より追放されたという。

春は呆れた様な顔をして聞く。


「山科卿は一体何をしたのですか?」

「山科家領と禁裏領(天皇の私領)との間での年貢の徴収を巡って争いがあったらしいが・・・」

「へ~それって天子様の怒りを買いそうですね」

「ああ、怒りを買って」

「追放か・・・」


よく解らないが、処分を受け、都から追放されただけの様なので、住む場所が変わるだけだし、大したことはないのかもしれない。


「本願寺を頼ったようですが、あそこも京に移転したから」

「あ~うちを頼って来るかもと?」

「いや、本願寺と共に京に戻られた」

「良いのですか?」

「良くは無かろうが、勅勘ちょっかんは解かれておらぬ」


(出仕の差し止めなどの処分を勘事かんじと言います。また、勘当とも言う。天皇よりの勘事のことを勅勘ちょっかんと言います。)


どうやら、その義理の叔父のことを春に知らせる為にあえて話したようだ。


「時に、助五郎(津田宗及)に面白そうな物を売ったそうだね~」

「あ~俺が仕留めた熊の毛皮を売ったよ」

「ほう!白い熊と聞いたが?」

「一丈(約3m)以上の大物だった」

「一人で仕留めたと聞いたが?」

「そう、己の未熟さを知った」

「あははははは~一人で倒せたのにか?」

「父上なら・・・」

「まぁ長さんも規格外だしね~」


楽しそうに話す春たち。


★~~~~~~★


春たちが訪ねて来た。

噂の人物を連れて来たが、噂通り、美しい娘だ。

頭も良いようだ。

挨拶を交わした後は言葉が解らない様だが此方を探る雰囲気で、猪鹿蝶と異国の言葉で話しながら内容を聞いているようだ。


「まぁ長さんも規格外だしね~」


言葉に反応して興味を示した。

まだまだ青いな。


「春坊、長さんの事はセドナさんに話してないのですか?」

「いえ、ある程度は話しましたが、変な先入観を持たれるのもどうかと思って」

「あははははは~確かに、長さんを先入観を持って見ると痛い目見るでしょうからね~」

「まぁ父は優しいから、俺が嫁を得たことを驚き、喜んで祝福してくれますよ」

「違いない」


春たちは帰って行った。

今回は助五郎(津田宗及)の所に世話になっているという。

またその内訪ねて来て欲しい事を伝えると、快諾してくれた。

麗華ちゃんも先々月遊びに来たが、上泉殿の居所を確認してから旅立って行った。

上泉殿は故郷の武蔵に戻って居ると聞くし、春坊とは行き違いになりそうだ。

ああ、今、伝え忘れたことを思い出した。

まぁ堺を出る前にはまた会いに来るのかもしれないので、その時に伝えるとしよう。


★~~~~~~★


時は数か月前に遡る。

堺に一人の少女がやって来た。

父親は従二位の位にあり、剣豪として知られ、日本一の財を持つとも噂される人物である。


宗及そうぎゅう小父様、お久しぶりで御座います」

「ああ、麗華ちゃんいらっしゃい。待ってたよ」

「少しの間お世話になります」


少女は武芸者の様な身形であるが、身形は綺麗で人目を引く程の容姿を持つ。

綺麗な長い黒髪を後ろで一つに束ねて結び、赤い組紐で結んでいた。

腰には大小の刀を差し、隙無い足運びで、見る者が見ればこの少女がそれなりにやるという事解るだろう。

お供も4人引き連れて、九州より旅をして来たこの少女。

従者の一人が声を掛けて来た。


「お嬢、上泉様は武蔵にいらっしゃるそうですぜ」


声を掛けて来た従者の1人は元服したばかりの若侍で、名を加藤鳶蔵とびぞう長飛ながとび、通称、とび

鳶加藤と言われる忍者にして幻術士の息子で、幼き頃より御付きの従者をしていた。

親の鳶加藤が彼女の母と師弟関係にあり、赤子の頃から可愛がっているので、自然と御付きとなって行った。


「鳶、話し方が破落戸ごろつきみたいな話し方止めなさい。何時も言っているでしょ?」

「う、五月蠅い、せき


綺麗な黒髪を後で結び、妖麗な笑みで鳶を窘める彼女も従者の一人、音羽おとわせき

伊賀十二人衆の一家の音羽家の次男の息女で、藤林家を頼って親と共に切原野に移り住んで来た。

幼い頃に丸目家の託児所に預けられそこで麗華に懐かれ、御付きの者となった。

そんな二人の言い合いを止め、注意する者が一人。


「二人とも、旅の準備は済んだの?」

「徳姉こそ用意終わったのか?」

「勿論」


鳶の質問に自信満々にそう答える彼女は鳶加藤の一の娘、加藤徳子とくこ

そして、もう一人。


「麗華様、相模湾から向える様に手配して参りました」

「そう、果恵かえいありがとう」


彼は二十半ば位の僧侶で、果心かしん居士の弟子の僧である。

孤児として拾われ、そのまま弟子として果心かしん居士に弟子入りする。

麗華と共に果心かしん居士の弟子の一人となり、幻術も操る。

その5人は大商人の今井宗久の納屋で世話になりながら武蔵への旅準備をしていた。


〇~~~~~~〇


もう少し春長編続き、その後、麗華編予定なので導入です。

さて、麗華お付きのメンバーで音羽関ですが、伊賀十二人衆の音羽の者と紹介しましたが、忍者の音羽と聞けば、音羽半六はんろくですかね~

和田竜先生の歴史小説「忍びの国」に出て来る伊賀の十二家評定衆の一人です。

音羽氏は三重県伊賀市音羽にある、「音羽氏城跡」を居城にしていた一族とも言われます。

実は「音羽城跡」と言う城跡もあります。

滋賀県蒲生郡日野町にあった城で、現在は音羽山公園となっております。

この城は蒲生氏の本拠と云われています。

蒲生氏郷の家系となりますが、彼の父・賢秀の代には居城を日野城に移しています。

理由としては蒲生氏が近江守護六角定頼との間で行われた戦で敗れ、波状(破却)したと云われています。

さて、話は戻し、天正伊賀の乱について書かれた「伊乱記」と言う文献には地頭・音羽半兵衛と言う名が出て参ります。

しかし、音羽氏城の正確な城主は不明ですが、もしかすると、音羽半六はんろくかも?

さて、麗華の御付きの名前はお気づきかもしれませんが、三国志の劉備玄徳兄弟の名をもじってます。

果恵かえいは当初、恵果としようかなと思いましたが、何処かで聞いたような?・・・調べてみれば真言密教の祖、弘法大師、空海の師匠の名でした。

真言八祖の第七祖と呼ばれる人物の名なので、あえて避け、逆にしました。

名前から解ると思いますが主人公の名前と果心かしん居士の合わせた名です。

真言八祖と言うのは大日如来-金剛薩埵こんごうさった龍猛菩薩りゅうみょうぼさつ龍智菩薩りゅうちぼさつ金剛智三蔵こんごうちさんぞう不空三蔵ふくうさんぞう恵果阿闍梨けいかあじゃり-弘法大師(空海)となります。

密教、特に真言密教では大日如来を教主と呼びます。

真言宗の教えが伝わった系譜なので当たり前ですけどね。

次回は春長編の続きとなります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る