第141話

博多滞在中です!!

ここには一週間ほど滞在することとなっている。

俺は何時もの様に第二の我が家、神屋に滞在中だ。

莉里はここでも貞清とかと話し合い、色々と暗躍しているようである。

弓ちゃんは莉里に着いて行き情報販売組織の営業活動だ。

美羽・春麗は里子の面倒を見てくれているが、好きな様に過ごしている。

他の者もそれぞれ自由にしている。

長門守も自由にしていいと言ったのだが、俺の護衛として傍らに居ることが多い。

俺は俺でその日の気分で色々している。

そんなある日、茂さん(嶋井茂勝)も忙しいのに態々会いに来てくれた。

その際に、酒の見栄えのする酒器を作りたいと相談された。

何でも金箔を入れた酒は綺麗だと思うが、現在の酒器では今一のように感じるそうだ。

この時代のお偉いさんの使う酒器は赤い酒器がポピュラーなんだよ。

一般の場合は酒注げるなら何でもOK状態だからそれはそれだけどね。

しかし、人間って変に拘ると気になって拘りがさらに加速するよね~

そんな事を考えていると、茂さんだけではなく貞清も話に加わって来た。

貞清が俺に聞いて来る。


「長さん、新しい器の話ですか?」

「酒器だぞ?茶器じゃないぞ?」

「あ~勿論、それは解っていますが、茶器にも使えるんじゃないかと・・・」

「使えないことは無いけど・・・」


貞清は茶狂いを芽吹かせたようだ。

紹さんは嗜む程度だったが、貞清はまごう事無き茶狂いの素質があると俺は見ている。

京や堺で茶狂い連中と付き合った俺が言うのだから間違いない!!

茂さんもその気がある様であるが、今は酒器の方が重要なようで、茶器にも転用できるに少し反応した程度だ。


「そうだな~透き通った透明な器なら映えるな」

「透明・・・びーどろですか?」

「びーどろ?」


何でも南蛮人が透明のグラスゴブレットを持ち込んで来たそうだ。

うん!ビードロって吹きガラスだろうね!!

前世の世で博多土産の中にビードロの息を吹き込むと音が鳴る奴とかグラスとかあったの思い出したよ。

吹きガラスのグラスは透明だろうし梅酒と金箔が実に映えるだろうけど、舶来品で高いし、ガラス製造は金掛かるよね?

まぁ輸入して転売する神屋としてはそれはそれなんだろうけど、茂さんはそれに満足と言った顔ではない。

拘りたいのが顔見て分かるよ。

う~ん・・・他は・・・


「透き通った物が映えるなら白も映えますかね?」

「流石!!貞清!!」


茶狂い初心者の貞清はその資質から良い事を言った!!

白い器は琥珀色の物は映えると思う。

前世で昭和から令和を生きた俺が思うお皿とかは基本白だ!!

白は清潔に見え、どんな料理にも合う器なので多かったのだろう。

白、白、白・・・そう言えば、白い器とか俺はこの時代で見たことないな・・・

茂さんに問いかけた。


「白い器とかある?」

「あ~白ですか・・・中々無いですね」

「中々という事はあるんだな?」


茂さんは「あれが白かったよな?ほらあれだよ」と貞清と色々話している。

理解したのか一度話し合いの場から離れて行った貞清が輸入した西洋のティーセットを何処からか持ち出してきた。

それと一緒に大陸産と言う白地の花瓶・・・

中国産か?・・・あ~この時期だとみん

うん!聞き耳立てていたら二人が明国と言うから間違いないだろう・・・

あ~そう言えば、ボーンチャイナって白い陶器あったな~と言うのを思い出した。


「白い酒器作れば金箔も琥珀色の酒も綺麗に見えるな・・・」

「白は難しいですね~」


やはり白い陶器は作るのが難しいとのことだ。

茶ぐ・・・貞清が言うには白い粘土で作れば出来るが、白い粘土が入手が難しいとのことだ。

うん!やはりボーンチャイナありだな!!

確か、牛の骨を焼いて砕いて混ぜるだったと思う。

牛の骨でいいなら猪や鹿とかの何ならクジラの骨とかでも良い筈?である。

流石に人は・・・うん、考えるのはよそう、そんな物に俺は口を付けたくない!!

さて、俺は動物の骨を焼いて砕いてそれを材料に混ぜた陶器を提案。

勿論、牛の骨が良さそうだと少し知っていることを付け足す。

焼き物の知識など殆ど無いから後は専門家に丸投げじゃ!!

後は聞きかじりの二次焼成とか色々言ったよ・・・投げられた陶芸家さん、頑張れ!!

茂さんはティーカップに金粉入りの梅酒を注ぎ、それを覗き込んで「白だと確かに映えますね!!」と言いながら梅酒を飲みながら、「長さん、他に飲み方とかあります?」とか聞いて来る。

梅酒のソーダ割りを提案してみたら数年後に博多を訪ねた際に炭酸水と氷を用意した茂さんがニンマリしながら作るのを強要して来たので、懐かしい梅酒のソーダ割り飲んだよ。

女性陣にも大好評であったことは言うまでもない。

数年後、試行錯誤の結果、ナンチャッテボーンチャイナが完成した!!

平成の世で見た白程白ではないが、十分に白い酒器が完成した。

俺の提案で「ぐい吞み」風の酒器と、ゴブレットの形の酒器が完成した。

ゴブレットは外国に飛ぶように売れたし、ぐい吞みも国内で人気を博した。

ちゃっかりと貞清が白地の茶器を作成し、自慢げに俺に見せて来た時には笑ってしまった。

白い器はワインにも映えるしね~将来何と呼ばれるかは知らんが、海外ではクラドワイトと呼ばれて取引されていると言う・・・

なんか嫌な感じがするな・・・どうしてクラド?・・・ワイトは白で解るが・・・

買い付け・売込みの担当を任されたと言う金蔵に「何て言って売った?」と聞けば、「四位蔵人様考案の器です」と言ったという・・・誰がそんなネーミングしたのか知らんけど、金蔵が次の次位の取引の際に「あのクラドワイトのゴブレットが欲しいと言われて・・・」とか何とか・・・

博多で旧交を温めたので、明日には故郷に旅立つ予定だ。

旅の恥はかき捨てと言うし俺は何も知らない!!いや、この時点では将来のことなど知る由もない。

数年後、知らない内に俺の余剰金が益々増えているが、なぜ増えたかは俺の知る所ではない。

多分、今回の件とは別、気のせいだろう・・・


〇~~~~~~〇


次回いよいよ故郷に錦を飾る?

ボーンチャイナと言う物があります。

ボーン=骨、チャイナ=中国だから中国発祥と思うかもしれませんが、18世紀ごろにロンドンで発明された白地の磁器です。

ボーンチャイナ発明以前は中国産の白地の磁器がヨーロッパでは人気でした。

理由はやはり紅茶が映えるからです。

本文中で語った様に中国磁器で多用された白色粘土が入手困難だった為、紅茶の国、英国でも色々試行錯誤されていたようです。

ボーンチャイナは牛骨を焼き骨灰を陶土に混ぜて製作したのでボーン、チャイナは当時の白い磁器=中国産的に思われていた為のネーミングのようです。

やはり試行錯誤の際に色々な動物の骨が使われたようですが、白さを決める成分であるリン酸カルシウムを多く含み、入手し易い牛の骨灰に落ち着いていたようですが、近年では骨灰を使わずに直接骨リンを用いる方法もあるようです。

白さを決める成分をリン酸カルシウムと先に述べましたが、正確にはリン酸三カルシウムで、簡単に言うとリン酸と石灰から出来たカルシウム塩です。

これリン灰石として天然で出土する鉱物で、土壌中に広く分布し植物の生長に必須の成分の一つです。

難しく言いましたが、普通に一般的に手に入る物で、人工関節・骨、インプラントの歯で利用されてます。

また、添加物としてプロセスチーズに、パンに使うイースト菌の養分などでも使われます。

更に歯磨き粉に研磨剤として入っていたり、肥料にも使われます。

更に面白いのが、砂糖の脱色にも使うようです。

ボーンチャイナについての話に戻ますが、焼結前は灰色なのですが、焼結すると乳白色へと変化するそうです。

一度焼結したものでも粉砕することが可能で、何度も作成し直す事が出来るそうでエコな素材です。

普通の磁器は失敗して粉砕し再利用しても色味などが変わったりして再利用が難しいと言うことを考えるとこれ凄い事です!!

また、焼結後に出来た不要な出っ張りなどバリはカットして、削って再形成した後に再度焼結し直すことにより形も綺麗で表面が滑らかになることも特徴の一つと言われています。

一般磁器に比べてですが、素地を薄く出来るそうす。

何故出来るのかと言うと、強度があるとされているので薄く出来るようです。

薄くすると良い点として見た目もそうですが、薄っすらと光を通すそうです。

その事からランプカバーをボーンチャイナで作ったりもするそうです。

また、二次焼成を低温で行うそうで、高温だと褪色する顔料を使用することが可能で、当時主流であった白磁器よりもより多くの色彩を使うことが可能だった様で、多色の美しい絵や微細な模様が刷り込まれていることが多いのも特徴と言われています。

興味を持ち以前に購入しようかと思いましたが・・・私にとっては中々にお高い製品となっております。

値段に見合う技術の粋の製品だと思いますが、私は普通にお安いマグカップを購入させて頂きました・・・

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