第198話

60万文字オーバー!!

もう直ぐ200話。


◇~~~~~~◇


上杉謙信のお誘いを受けて春日山城にやって来た。


「それで何故に今まで事を構えなかった織田と戦うことにされたので?」

「1つは織田が加賀まで落としておったことですな」


酒宴しながら謙信公に事情を聞いて行く。

おっと!出された料理は塩辛いのでここでも美羽が火を噴いた!!


「謙信様・・・」

「何かな・・・美羽殿・・・」

「これらの料理の味付けですが、塩辛いようですね(ニコッ)」

「お、そ、そうか?」


おい、軍神!ビビり過ぎちゃうか?

美羽の一挙手一投足に注意を払う様に見えるぞ。


「そうです!このように塩辛い物を食べていると健康に良く御座いません!!」

「いや、しかしな、酒の肴とは」

「酒の肴?お酒はお控え頂くとのお約束ですね」

「そ、そうだな・・・」

「健康には塩の摂取を控えないと高血圧になり・・・ア~ダコーダ・・・」


うん、謙信公が説教されているよ。

家臣たちも最初は「うん、うん、最もだ!!」と頷いていたが、塩分摂取し過ぎのくだり辺りからそ知らぬ振りを決め込んだようだ。


「美羽~」

「長様、何でしょうか?」

「取り合えず、今は、そこまで!!」

「あ!失礼致しました」


取り合えず聞きたいこともあるしここらで止めておこうと助け舟を出した。

そして、美羽に料理をお願いする。

美羽や嫁さんたちは俺に影響されて中々のグルメで料理上手だ。

健康面に気を使うことなど色々と教えたので体に優しい料理を作る。

それに何より美味しい!!

さて、台所に案内された美羽は美味しい料理を作ってくれることであろう。


「それで、謙信公続きを」

「酒の肴だけではなく飯のおかずにも」

「謙信公・・・塩分のお話ではなく、織田と事を構えた件です」

「お、そっちか!」


美羽の攻めは謙信公にクリティカルヒットしたようだ。


「与六」

「お呼びで」

「我が書斎よりあの御内書ごないしょを持って参れ」

「承りました」


与六君が持って来たお手紙を見せて頂くと、将軍様(足利義昭)上洛の願いがつらつらと書かれていた。

そして、毛利輝元の添え状付・・・

あ~確か今は毛利家が将軍様を備後国はともで庇護しているんだったな~と思い出した。

信長に京から追い出された将軍様は毛利を頼って、今はそこで庇護されている。

せっせとお手紙を全国の有力者に送っていると言う。

その一枚が今手元の物のようだ。


「将軍様のご命令ですか・・・」

「左様」


謙信公曰く、このまま織田家が台頭するのを良しとしない者は多く、上杉家も織田家がこれ以上越後に近付く事を良しとしないと言う。

隠している様ではあるが、体調不良でもあるのかもしれないね。

このまま行けば謙信公が死んだ後に織田家が攻めてくる懸念があると見た。

しかし、攻めて来るにしてもかなり先の話だと思う。

それに、今後5~7年の間に本能寺が起これば状況が変わると思う。

現段階で織田家の台頭を止めるのは無理・・・それなら不可侵同盟でも今の内に結んでおいて他に備える方がましだと思う。


「謙信公」

「何ですかな?」

「織田殿はあなたを恐れていると思いますよ」

「ほ~それで?」

「織田殿は意外と律儀な方なので今の内に不可侵の同盟でも結んでおけば良いのでは?」

「ほう」


謙信公は先を話せと言わんばかりに前のめりで話を聞く体制に入る。


「織田殿の権勢も持って10年以内と見ます」

「10年・・・」

「今の内に代変わりでも確実に行い、次に備えられる方が宜しいかと思いますぞ」

「次にですか・・・」


謙信公は思案し始めた。

自分の頭の中の計算機でも弾いているのであろう。

他にも色々話し時が過ぎて行き、美羽の料理が運ばれて来た。

中々に早かったね。

まぁ時短料理とかも教えたからね~レンチンできないのが少し時間かかる程度。

うぉ~美羽の料理、美味し!!

上杉家の皆もその美味さに舌鼓を打った。


★~~~~~~★


酒宴は終わり丸目殿と別れてから側近を集め話し合う。


「して、丸目殿のご意見をどう思う?」


側近たちも意見は割れた。

賛否両論あり、意見が纏まらぬ。


「与六、お主はどう思う?」

「私はお館様に従うのみです。意見する立場に御座いませぬ」

「よい、お主の考えが聞きたい」


喜平治きへいじ(上杉景勝)の近習の与六は今回偶々連れて来たが、丸目殿をこの中では一番知っている者だ。


「蔵人様は天狗の弟子ですが、神仏と対話する方でもあります」


以前噂になっていたな。

「丸目四位蔵人は「天啓」を聞き、神罰を降す者成り」と言う噂が広まったのは何年ほど前の話だったか?

摩利支天様の末裔を害した者を処断したと言う。

与六に続きを話すように促す。


「剣の腕は日ノ本一と言っても過言ではないかと存じます」


日ノ本一か・・・師の上泉伊勢守殿が天下一と名高いが、確かに噂では甲乙着け難しと聞く。


「そして、仙術を操られて、天を駆けまする」


「何を馬鹿な!」「与六も童よの~」等の揶揄る者が嘲笑する。

しかし、与六は「しかと見た」と言う。


「それに、天下の財と情報を握るは丸目様にて」

「与六よ」

「はい」

「丸目四位殿と事を構えるは得策ではなく、従うが吉と?」

「私はそのように思います」

「ふむ・・・」


丸目殿は「織田殿の権勢も後10年程」と言われた・・・

そして、「今の内に代変わりでも確実に行い、次に備えられる方が宜しい」と言う助言を頂いた。

確かに、最近、体調の不安がある事であるし、あと何年の内にお迎えが来るか・・・


その後直ぐに上杉謙信は隠居し、家督含め全権を上杉景勝に譲る。

52歳で没す。

隠居後は上杉景勝の相談役として活躍したと言う。

上杉家の家督相続は特に大きな混乱も無く引き継がれ、また、丸目蔵人の進言で佐渡の開発が行われる。

その開発の過程で金山が見つかり、上杉家は好景気に沸くが、これは又別の話。


〇~~~~~~〇


上杉家の運命が大分変りました!!

御館の乱が無くなり、佐渡島の開発が前倒しで始まります。

謙信も・・・

さて、久しぶりに名前の登場した足利義昭ですが、この時期はせっせとお手紙をばら撒いていたようです。

織田と上杉の争いも少し状況が変わってます。

実際は、上杉軍が関東での北条氏政の進軍もあり、春日山城に一時撤退をした際に、前年に奪った能登の諸城が次々に落とされた事により、救援要請を受けていた謙信のもとに、能登国での戦況悪化の知らせと共に、足利義昭・毛利輝元から早期の上洛を促す書状が届いたそうです。

これにより謙信は再び能登に侵攻して諸城を攻め落とし、七尾城包囲しました。

七尾城ではこの時疫病がはやり国主の畠山春王丸が病没、守将の長続連は織田信長に援軍要請します。

降伏する気配の無い七尾城に上杉謙信は調略を行いました。

遊佐続光らが謙信と通じて反乱を起こし、七尾城は陥落します。

長続連の援軍要請を受け織田信長は、七尾城を救援派遣を決定、上杉謙信との戦いに踏み切ります。

総大将をこの時北陸方面軍の司令官だった柴田勝家として、木下藤吉郎(羽柴秀吉)、滝川一益、丹羽長秀、前田利家、佐々成政ら3万余の大軍を派遣しましたが、途中で木下藤吉郎が、総大将の柴田勝家と意見対立し自軍を引き上げてしまい、大混乱します。

この時の事が原因で織田軍は手取川を渡河、水島に陣を張ったそうですが、既に七尾城が陥落していることすら把握していなかったようで、上杉軍が加賀を制圧し一歩手前の城まで進軍してきたことと、七尾城が既に陥落していたことを知って形勢不利を悟った柴田勝家は撤退を開始。

上杉軍は手取川の渡河に手間取る織田軍を追撃して撃破したと言われます。

勿論、織田信長が大激怒して木下藤吉郎を叱責したようですが・・・

上杉謙信は一度春日山城に帰還し、次なる遠征に向けての大動員令を発したそうですが、遠征の準備中に春日山城内の厠で倒れ、昏睡状態に陥り、その後意識が回復しないまま死去したそうです。

享年49歳でした。

度々紹介している辞世の句ですが、「極楽も 地獄も先は 有明の 月の心に かかる雲なし」と上杉謙信は詠んでおります。

また、「四十九年 一睡夢 一期栄華 一盃酒」と言う句も残っています。

一節には何と上杉謙信の辞世の句は4つもあるそうです。

「四十九年 一睡夢 一期栄華 一盃酒」と言う句は凄く良い句だと思いますが、酒好きだった上杉謙信が最後に「四十九年の生涯は、一睡の夢のように儚く、一時の栄華も一杯の酒と同じようにすぐに終わってしまったよ」と自分の人生を酒に例えたのが実に酒好きらしいと思いました。

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