第199話

「長さん、俺はただ着いて来ただけだ」

「え~でも~誰か報告に行かないといけないけど、織田殿(信長)に会える者って限られるよね?特に状況把握している者で~」

「それなら長さんが・・・」


俺は謙信公から依頼されて剣術指導をすることとなった。

織田との同盟に関しての条件の一つだ。

要は口実だけどね~

元々慶さんは織田家所属だから都合が良いし、藤林の者を使いに出せば事済むが、出来れば仲良くなった慶さんに功績を積ませたい。

俺が信長にこれ以上気に入られてもね~厄介事の種にしかならんだろうしね~

さて、その状況でもごねる慶さん(前田慶次)。

同盟は俺と慶さんの共同作業と言うこととしたのが気に入らないようだ。

まぁ功績譲りと言うのがこの傾奇者前田慶次のスタンスに合わないと言う所だろう。


「俺は謙信公の依頼あるし、それに~慶さんも褒美は欲しいでしょ?」

「自分で勝ち得た物ならいざ知らず、人の功績を貰うなぞ・・・」

「え~でも、松風の代金どうするん?当てあるの?」

「そ、それは・・・」


痛い所を突かれたと言う様に渋顔になる慶さん。

一刻2時間程心の葛藤したようだけど、結局、慶さんは諦めて肩を落として旅立って行った。

「また必ず戻って来るからな!!」と何処かの負け確の悪役の様な捨て台詞を吐いてとぼとぼと織田軍へと戻って行った。

この提案を受けなければ本当に松風の代金には苦慮するだろうね~そう俺は思っていたので丁度良かった。

名馬ってただでさえ高いからね~

一説には山内一豊が妻の嫁入りの持参金で買った名馬は金10枚だったと言う。

大判か小判かにもよるが、小判として金1枚と言うのは前世の世なら15~20万円である。

つまり、金10枚=150~200万だが、普通の馬がこの金額位だ。

この話ではあまりにも高過ぎて誰も買わなかったと言う。

と言うことは少なくとも200万ではないはずだ。

そうすると、大判10枚と言うこととなる。

大判1枚=小判10枚となるので、1枚で150~200万となる。

大判金10枚は何と1,500万~2,000万となるのだ・・・高いな・・・

しかし、松風たちペルシュロンは輸入された舶来品の馬だ。

海外の高級車と思って貰えば解るだろう?

2,000万何て金額ではないはずだ。

先日、報告受けた話では1頭が1,500貫で売れたそうだ。

1貫=15万とすると、1,500貫=2億2,500万となる。

最早、前世のスーパーカーの金額だな。

慶さんにも持たせた書状には「褒美として松風の代金を出してあげてね」的な事を書いてあるので信長は喜んで出すだろうね~

信長は謙信公と武田信玄を恐れていたと言うし、争わないで良いと言われたら大盤振る舞い普通にするでしょ。


★~~~~~~★


「人の手柄を横取りなど・・・」


気に入らぬが、長さんの言う通りで松風を買う金をどう捻出するかは最大の懸案事項であった。

長さんの話では、先日、別の同種の馬が1,500貫という破格値で売れたそうだ。

「松風はその中でも一等の馬だしね~」とニヤニヤ笑いで俺に告げて来たな・・・

長さんの事だから払わなくても何も言わぬであろうが、俺が納得できぬ。

仕方なく、本当に仕方なく、織田軍の最前線の越前北ノ庄城に先ず向かう。

事情を説明すると、直ぐに総大将の柴田殿と会う事となる。


「それは誠か?」

「はっ!丸目四位殿と共に上杉勢を留め置き、会談の後、織田とは和睦し、同盟をとのことで、謙信公自ら饗応頂きました」

「そ、そうか・・・して、丸目四位殿は?」

「丸目四位殿は謙信公に乞われて剣術指導を行っておりまする」


報告の場は静寂に包まれるが、皆ホッとした顔をしておる。

そして、何故か書状を読んだ柴田殿の命にて上様(織田信長)に直接書状を持参するようにと下知された。


「ほぉ!謙信坊主めが和睦と同盟か!!」

「丸目四位殿が打診され、謙信公がそれをお受けされました」

「ふむ・・・その方はそれに付き添っただけだと?」

「はっ!特に何かしたかと言われれば・・・」

「この正直者めが!!丸目四位殿はその方があの場に居たことが大きいと認めておる」

「・・・」

「丸目四位殿に対しては恩賞など不要だが、その方を大いに労う様にとの事じゃぞ(ニヤリ)」

「さ、左様で・・・」

「丸目殿に感謝せよ!!」


確かに感謝せねばならぬ事であるのは重々解るのであるが、この心のモヤモヤは何であろうか?

褒美は思いのままと言われたので松風を手に入れた経緯と代金が未納と言うことを上様に申し上げた。

上様は2,500貫の恩賞を下さり、「金子が足りなければ言って来い」と言われた。

そして、丁度、戦があると言うことで鬱憤晴らしに参加を希望するとお認めになられたので、参加したが、木下殿が獅子奮迅の活躍を見せ、又しても傍観するだけとなった。


★~~~~~~★


時は少し遡る。

木下藤吉郎が戦線離脱し、長浜に戻ると織田信長は早々に彼を呼び出した。

木下藤吉郎も叱責されることを覚悟で信長の面前に罷り越したが、今までに見たことない程の怒りが言葉を発される前から犇々と感じ沈黙する木下藤吉郎一行であった。


「この馬鹿垂れの禿鼠め!!」


上様のお怒りは一言目から儂の姿をなじるものであった。

叱責覚悟で戦線を離れたが、ここまでお怒りとは・・・こ、怖いがね・・・


「半兵衛!小六!!お主らはこの禿鼠の手綱を握る為に着けたにも拘らず、こ奴の我儘愚考を諫められずに何をしておった!!」

「「も、申し訳御座いませぬ!!」」

「まぁ、次からはその事を肝に銘じよ!!」

「「ははーっ!!」


上様(織田信長)の目線がこちらに向く。


「猿」

「はっ!」


オラを呼んだ上様はじっと睨み言葉を発せられない・・・怖いがね・・・

その威圧に耐え兼ねてオラの方から言葉を発した。


「某は柴田殿の意見には承服し兼ね、柴田殿を諫めたのですが、聞き入れられず、仕方なく離脱したのでございます」

「ほう・・・儂の選んだ軍団長に従えずとな・・・」

「いえ・・・そのような・・・」

「従えないから事に及んでおるでは無いか!!」

「も、も、も、申し訳な、な、なく・・・」


自分で自分の言い訳が苦しい事は百も承知じゃが、言わずには居れなんだ・・・

上様は手に持つ扇子をパシパシと扱き、じっとこちらを睨まれておる。

も、漏らしそうだなね。

尻に力を入れると前に・・・前に力を入れると、尻に・・・ここで粗相したら・・・間違いなくオラの人生は終わる!!


「次は無いぞ・・・」

「へっ?」

「それとは別にして、この失態を雪ぐ事は必要じゃな」

「はっ!機会をお与え頂けるとは法外の喜びにて、行動にて御見せ致します!!」


何とかその場をしのいだ・・・

上様の御前を後にした後は直ぐに厠へと飛び込んだが、間に合わず、少し粗相を・・・


〇~~~~~~〇


戦国時代でなくても現在でも名馬、高いです!!

スーパーカーの話しようと思いましたが、馬の話を!!

現代で名馬と言えば競走馬!!

戦国時代の戦馬に該当するでしょうか?

競走馬の平均購入価格は1,200万と言われています。

ディナシーと言う馬が現在の最高落札額を持っております。

日本の競走馬市場において最高額となる6億で、海外の繁殖牝馬セールにおいては、10億円を超えるような評価も与えられていたと言います。

本当に高い!!

しかし、馬の購入金額と戦績は必ずしも一致しませんが、高い馬ほど血統が良く、活躍する可能性は高いと言われます。

勿論、購入金額が低いから活躍しないと言う訳ではありません。

テイエムオペラオー、競馬好きの方などはお知りかと思いますが、2000年に天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念を含む年間8戦全勝、年間記録として史上最多のGI競走5勝という成績を挙げ、年度代表馬と最優秀5歳以上牡馬に満票で選出された名馬です。

この当時の最強馬で、「世紀末覇王」とまで呼ばれた名馬です。

この異名は北斗の拳のラオウが元ネタと言われています。

通算26戦14勝(G1・7勝)、総獲得賞金額18億3,518万9,000円は、2017年までは世界最高記録であったそうです。

この馬の購入金額は平均を下回る1,000万だったそうです。

演歌歌手の北島三郎さんが馬主として有名だったキタサンブラックも何と350万で購入し、史上2頭目の天皇賞3勝馬、2016年度と2017年度のJRA賞年度代表馬および最優秀4歳以上牡馬となる程の華々しい活躍をした名馬で、通算20戦12勝(G1・7勝)、総獲得賞金額18億7,684万3,000円で現時点で歴代4位の総獲得賞金額となりました。

現在、ウシュバテソーロと言う馬が通算34戦11勝(G1/Jpn1・4勝)、総獲得賞金額22億1,567万8,200円 で史上高額となっていますが、この馬は2,500万円(税別)で落札されたそうです。

そう考えると松風の購入金額が2,500貫だったとしても強ち高い訳ではないかも?

次は大台の200話です!!

主人公側でない話となります。

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