第197話
慶さん(前田慶次)が何とか松風を乗り熟した。
最近、あの馬「松風」って呼ばないと見向きもしなくなったのでなし崩し的にその名前に決まった。
こっそりと千代に聞いて貰ったら「松風って名が大層気に入ったそうなのじゃ」と馬が言うそうだ。
うん、気に入ったのなら仕方ないね。
しつこい位に譲って欲しと慶さんに言われたし、特に馬欲しい訳でもないので、慶さんに譲った。
又左さん(前田利家)も欲しがっていた馬なので悔しがっていたけど、宗さん・天さんが同じ品種の馬を売り出すと告げると、急ぎ書状を認めていたから買えると良いね~
さて、上杉謙信が加賀国に進出して来た。
これは多分歴史通りなのだろう。
そして、柴田さんとお猿さんが意見対立してお猿さんが予想通りに戦線離脱した。
半兵衛さんたちも一生懸命止めたようだけど、無理だった様でお引越しの挨拶に来たよ。
「長さん!帰るがね」
「え?なんで俺が帰るの?」
「え?・・・」
お猿さんは自分がここを去るのと一緒に俺も退去すると思ったらしい。
念の為に子供たちはお願いしたよ。
俺のお目付け役として美羽と藤林の者数名、そして、増援として果心さんに鳶加藤さんが来たよ。
取り合えずお猿さんの本拠地の長浜でお世話になる事となった。
「蔵人様、七尾城陥落いたしました」
「ご苦労さん」
藤林の者が知らせてくれた。
柴田さんの所に世話になっているので情報提供した。
「何と・・・誠ですか?」
「うちの者の情報は確実ですけど、信じる信じないはお任せします」
「いえ、疑っている訳ではなく、俄かには信じられず・・・」
柴田さんがそう言うけど、まぁ信じたくないんだろうね~
お猿さんと言い争いで混乱して手が回らなかったんだろうね。
藤林の者の報告から上杉謙信の越後勢は一向一揆との闘争が少なかった様で、織田と同じく無駄な消耗が少なく前世の歴史より万全な気がする。
こういう部分は俺の影響なんだろうね~
「如何されるので?」
「上様(織田信長)より上杉謙信とは事を構えるなと言われておりますので・・・」
「撤退ですね」
「左様・・・」
撤退が決定した。
各城を燃やして遅滞戦略を敢行したが、それが仇となり上杉勢に追いつかれた。
う~ん・・・ここで柴田さんたちが討ち取られたりしたら信長の恨みを買いそうで怖いわ。
お猿さんが撤退するであろうことは予想通りだけど、あれって、多分、俺が信長に進言したようなものだしね・・・
仕方ない、動くか。
「長さ~ん、何処に行かれるの~」
「おや、慶さん、撤退しないの?」
「いやいや、長さんたちこそ逃げないの?」
「俺達は織田軍じゃないからね~」
「それで?何しにお出かけ?」
見つかったので仕方ない。
これから上杉勢の足止めに向かうことを伝える。
仙術と幻術を駆使して足止め予定だ。
敵兵も一兵たりとも殺さぬように厳命している。
慶さんは着いて来ると言って聞かないので、諦めて一緒に行くこととした。
「うわ~~~~来るな!!」
「鎮まれーー!!あれは敵の幻術じゃ!!」
「お助け~~~!!」
「持ち場を離れるなーー!!」
うん、上杉勢は先行して行ってた果心さんに鳶加藤さんたちの幻術で大混乱である。
後ほど2人に何を幻術で見せたか聞くと、百鬼夜行の魑魅魍魎の類を見せたと言う。
織田信長がこの歴史線ではこれが原因で「第六天魔王」とか呼ばれないよね?とか思ったけど、終わったことを気にしても仕方ないよね。
さて、では行きますか~
★~~~~~~★
兵たちが騒ぎよる。
前方に現れたのはこの世の物とは思えない異形の化け物たちで、こちらを今にも襲い掛かろうと身構えている。
農兵たちは大混乱で逃げ出す者たちが現れた。
「あれは敵の幻術であろう」
「しかし・・・あれほどの幻術など」
「ほれ、何年前か取り立てた者の中に幻術を使う者が居ったであろう?」
「お館様(上杉謙信)が危険視されて殺めた者ですな」
「そうじゃ、幻術を使う忍びの者など味方に居ても危険じゃ!我には使いこなすなど出来ぬと判断して処断した」
織田の兵を追おうにも味方の混乱で進軍もままならぬわ。
仕方なく兵を纏めていると、気配・・・
「何奴!!」
「お久しぶりですな謙信公」
「お主は?・・・」
「おや、お忘れですかな?」
見覚えはあるが思い出せぬ・・・
目の前の者が溜息を吐き、「幻術を危険視されて貴方に殺されかけた者ですよ」と言う。
目の前の人物はあの時殺したと思った者のようだ。
「して?織田に仕えたか?」
「いえ、もっと尊き方にお仕えしております」
「左様か・・・して何用で参った?」
「我が主様が謙信公とお会いしたいと言われまして、取次に参りました」
「そうか・・・会おう!!」
「お館様!!」「危険です」「お待ちください!!」と家臣どもが騒ぐ。
一喝して黙らせて目の前の忍びの者に先を話すように促せば、もうそこまで来ていると言う。
現れたのは三名。
巨馬に跨り派手な出で立ちの傾奇者・・・
異国の恐ろしいまでに美しい
眼光は鋭いが、三人の中では一番地味な男・・・
「おい」
「何ですか?」
「誰がお主の主じゃ?」
「あ~一番見た目地味な方です・・・」
「さ、左様か・・・」
どうやらあの傾奇者の家来などではなかったようだ。
家来と思うて相手すれば・・・変に背中に冷たい汗が流れる。
「丸目四位蔵人様・・・」
「与六、あの御仁を知っておるのか?」
「はい・・・丸目四位蔵人様・・・です・・・」
「ほう、あの方が・・・」
そう言えば、与六とその親父を九州に派遣したことを思い出す。
ゆっくりと歩いて現われた丸目四位蔵人様は「お初にお目にかかる」と挨拶をされた。
「お初にお目にかかる拙者、上杉謙信入道と申す」
「某は丸目蔵人と申す。今日はお時間頂き有り難し」
「何の何の、一度お会いしたいと思うており申した」
その後は同行の者も紹介された。
美しき
もう一人の傾奇者は前田慶次と名乗った。
「様」付け不要とのことで「丸目四位殿」と呼ばせて頂くこととした。
「故あって織田家の柴田殿の世話になっておりまして、今回は調停にお伺いした次第にて」
「ほ~丸目四位殿は織田に仕官でもお考えか?」
「いえ、その件は織田殿に直接お断りいたしました」
既に織田殿が取り立ての打診をしたようじゃ。
さもありなん、我も出来うることなれば配下に加えたいと思う程じゃ。
と言うことは、織田の配下ではないと言うことか・・・
「お~そう言えば昼時でしたな」
何を行き成りと思ったら忍びの者に指示を出し昼餉の用意が急ぎなされた。
何と人を食ったような人物かとも思うが実に興味深き事じゃ。
話して居て愉快な人物である。
「毒など盛りませんから一緒に食べませんか?」
「で、では馳走頂こう・・・」
実に面白し!!
家臣が騒ぐが、与六は「丸目様の所のお食事は美味です!!」と言う。
それは是非とも馳走頂かねばならぬな。
その後はその場で丸目四位殿たちと昼餉を取り、そのまま酒盛りとなった。
「謙信殿」
「何でしょう?」
「飲み過ぎですよ!!」
女性、いや、美羽殿に怒られた。
実に美しく聡明な方だ。
丸目四位殿の奥で無ければ・・・いや、仏門に入った我には関係無き事か・・・
その後は酒の飲み過ぎは身を亡ぼすことを懇々と説教された。
家臣たちもウンウンと頷くが実に身の置き場に困る様な仕儀となった。
「謙信殿!聞いておられますか!!」
「う、うむ・・・」
「ではお約束ですよ!!」
「相分かった・・・」
美羽殿から禁酒を言い渡された・・・
家臣たちにも
食い下がり、十日に一度だけ少量の酒を飲むことが許されたが・・・
この事により史実よりも3年程上杉謙信の寿命を延ばす結果となった。
妻の無礼のお詫びにと言い丸目四位殿より毎月贈られてくる酒を後生大事に飲んでいたと言う。
〇~~~~~~〇
上杉謙信登場!!
次回は上杉家に行きます!!
さて、上杉謙信のうんちくは次回として、今回は戦国時代の名馬について語りたいと思います。
上杉謙信の愛馬も名馬として知られます。
月毛と言うのは馬の毛並みの色でクリーム色の事です。
ライバル武田信玄の愛馬は
織田信長の最も愛した愛馬は
さて、他にも面白い名馬としては
山内一豊の愛馬で、織田信長の馬揃えの際に一豊の妻である千代が貯えていた嫁入りの持参金を夫に渡し、購入させたと言われます。
この馬揃えの前に商人が東国一の馬と触れ込みの馬を売ろうと連れて来たそうですが、あまりの高さに買う者が無く、仕方無く帰ろうとした所を山内一豊が買ったそうです。
それを聞いた織田信長が「高い馬だから、信長の家の者でなければ買えないだろうと持って来た馬を、浪人の身でありながらよく買ってくれた。信長の家も恥をかかなくて済んだ」と喜んだと言うエピソードのある馬ですが、事実は不明です。
戦国時代の名馬で最も面白いと思うのが徳川家康の愛馬「
黒毛なのに「白石」と名付けられた馬です。
家康さんのネーミングセンス・・・
家康は他にも「黒ぶち」と言う愛馬もいますが・・・やはり名前が・・・
家康さん唯一ネーミングセンスいいと思うのは「三日月」!!
そこに行くと中二病の患者、織田信長の名付けは中々です!!
「鬼葦毛」「小鹿毛」「大葦毛」「遠江鹿毛」「小雲雀」「河原毛」「大黒」「白石鹿毛」「がんぜき黒」「ぶち」「ものかは」「やばかげ」「愛想ぶち」「星河原毛」と多くの馬に名付けしました。
中には微妙なものもありますが、「
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