第196話

それからはちょくちょく慶さん(前田慶次)は剣術指導に来るようになり、それ以外でも俺の所に居つく様になった。

ただし、織田家の重鎮たちが居る時は雲隠れしているんだけどね。


「いや~長さんの奥方たちは実に美しいですな~」

「おい!慶さんや」

「ん?何ですかな長さん?」

「美しいのは否定しないが、人の奥さんを口説くの止めてよ~」

「わははははは~それはすまんすまん」


悪びれも無くそう言う。

多分、前世はイタリア人だろう!知らんけど。

里子にも「美しい」とか言って来たのでその時は最大の殺気を飛ばしてやったのでそれ以来里子に粉掛けるのだけは止めたようだ。

ロリコン前田慶次とか誰得よ?

まぁ里子は将来絶世の美女に成るのは間違いないけどな!!


「おう!慶次また来たのか?」

「お~千代~めんこいな~」


千代とも何気に仲良しだ。


「ぬ!前田殿・・・」

「おう!弥七~また千代の尻を追い掛けているのか?」

「尻じゃないわ!!」


弥七とも何気に打ち解けている。

誾千代とも「おす!」「やあ!」と挨拶する仲だし、うちの子供、奥さん、配下の皆に普通に受け入れられている。

獣の勘なのか又左さんが居る時だけは必ず姿を隠すけどね~


「長さん久しぶり~」

「お!天さん!!久しぶりです」


天さん(津田宗及そうぎゅう)が来訪して来た。


「博多の神屋さんからお届け物あったから物の序に持って来たわ~」

「へ~何を持って来たの?」

「馬」

「あ~手に入ったんだ~」


何か用事かな~とか思ったら、紹さんが隠居したのを機に貞清が神屋を取り仕切る様になったのだが、また何か面白そうな仕入れる物は無いか?と言って来たので、巨大馬仕入れてみたら?と言ってみた。

戦国時代の軍馬は言ってしまえば現代の高級車!!

武将に高値で売れちゃいます!!

しかし、この時代の日本に居る馬のサイズは小さいからね~海外にいい馬求めてみた。

遠い前世の記憶を頼りに「ペルシュロン」という品種を探して貰ったよ。

この馬は原産地はおフランスで、アラブ種やバブル種と言う大型品種を掛け合わせて出来た馬と言われている。

北海道のばんえい競馬でも使われ、鼠の国のパレードで使われた馬として有名なので覚えてた。

30頭の馬が輸入されたそうだ。

今回は一応俺の提案と言うことで、見本に一頭連れて来たと言う。


「おお!やはり大きいですね~」

「そやな~それにしても、長さんはよくお知りですな~」

「て、天狗様より・・・」

「は~天狗様は色々長さんに教えられたんやね~」


うん!困った時の天狗様!!

皆でその馬を眺めていると、慶さん(前田慶次)が声を掛けて来る。


「長さん!!」

「ん?如何した?」

「如何したもこうしたも・・・この勇ましい馬は?」

「あ~遠く西洋よりやって来た軍馬ですよ」

「西洋!!軍馬!!」


慶さん「一目惚れした!!」と言い譲って欲しいと言う。

特に馬を欲しいとも思わないのだけれど、どうしよう・・・

天さんに事情を聴くと、30頭輸入して12頭は切原野で繁殖するそうだ。

残り18頭の内3頭が九州で売れ。

15頭が堺に持ち込まれた。

例の如く、宗さん・天さんが取り合って1頭は信長に献上するが残りが販売されるらしい。

それで、ここに持ち込まれたこの1頭は気性が激しく乗りこなせる者が居ないと言うことで、俺の所に持ち込まれたと言う。


「天さん・・・乗り熟せる者が居ないからって俺の所へ持って来られても・・・」

「いや~長さんなら乗れるか、いい案頂けるかと・・・」


う~む・・・狐さんが同じ動物で話せないかな~と思って聞いてみた。


「兄上!我は獣じゃないのじゃ!!」

「おう、それはすまん・・・」

「まぁ話せるがな・・・」


千代は馬に近付いて「ブフフフフフ~」とか「ヒヒーン!!」とか馬の嘶きを聞いて何やら話し込んでいる。


「で?何だって?」

「乗り熟せたら主と認めてやるとか言いよるのじゃ」


ほほ~面白い!!

早速、俺が挑戦!!


「千代~何だって?」

「主として認めようと言っているのじゃ」


俺乗り熟せました。

それから、千代、嫁さんたち、里子と普通に乗り熟せたので主として皆認めると言う。

まぁ仙術で軽身功を使えれば振り落とされること先ずないと思うからね~余裕よ余裕!!


「流石は長さん!!」


天さんはそう言って巨大馬を置いて行きました。

譲って欲しいと言った慶さんが挑戦したけど、見事に振り落とされました。

北陸方面軍に所属する皆さんは次々と挑戦する。

残念ながら成功者は現れることはなかった。


★~~~~~~★


長さんの懇意にしている商人、あれは茶匠の津田か・・・

本当に人脈の広い御仁じゃ。

しかし、持ち込まれた物に驚いた。

なんと勇ましい馬だろうか。

見惚れていると


「おお!やはり大きいですね~」

「そやな~それにしても、長さんはよくお知りですな~」

「て、天狗様より・・・」

「は~天狗様は色々長さんに教えられたんやね~」


長さんと津田がそんなことを話しておる。

「天狗様」とは噂に聞いたがどうやら長さんはその天狗様の英知でこの馬の存在を知っていたようじゃ。

居てもたってもおられず、話途中に割り込んで長さんに聞く。


「長さん!!」

「ん?如何した?」

「如何したもこうしたも・・・この勇ましい馬は?」

「あ~遠く西洋よりやって来た軍馬ですよ」

「西洋!!軍馬!!」


これは海の向こうからやって来た「戦馬」と言うことだ。


「一目惚れした!!是非とも俺に譲って欲しい」


深々と頭を下げるが、長さんも何故か持って来た津田も困惑顔。

事情を聞けば気性が激しく誰も乗り熟さなかったとのことだ。

困った商人どもは長さんに相談がてら連れて来たと言う。


「天さん・・・乗り熟せる者が居ないから俺の所持って来れれても・・・」

「いや~長さんなら乗れるか、いい案頂けるかと・・・」


俺が見惚れている間に千代が馬に近付きまるで会話するように接している。

女童をあんな巨馬に近付けるのは危ないと思ったが、誰も止めるそぶりを見せない。

聞けば、「乗り熟せれば主人と認める」と馬が言うとまるで馬の気持ちが判る様に語る千代。

驚いている内に長さんが乗り熟す。

次々に試す者が乗り熟す。

千代や里子が乗り熟したことには驚愕した。


「俺にも試乗させてけれ!!」


長さんたちはどうぞどうぞと言う感じで勧められたが、見事に振り落とされた。

しかし、この北陸方面軍の諸将が試したが皆振り落とされたことでホッとしてしまった。

俺はその日から試乗を繰り返す。


「松風!!今日も挑戦しに来たぞ!!」

「慶さん・・・勝手に名前を付けないように・・・」

「気に入ったと言っているのじゃ」


千代曰、俺の名付けが気に入ったようだ。

うん!実に松風とは馬が合う様じゃ。

それからも数えるのが嫌になる程振り落とされた。

ある晴れの日、俺は松風に乗り熟せ、主人として認められた!!

長さんは「お~乗り熟せたんだ~」と言い、「出世払いですよ~」と言って俺に松風を譲ってくれた。

松風に乗り戦場を駆ける日が楽しみじゃ。


〇~~~~~~〇


前田慶次と言えば松風!!

ペルシュロンと言うのはフランスのノルマンディー地方原産の馬で、重種、冷血種の馬です。

8世紀頃にアラブ馬(アラブ種)やベルベル馬(バブル種)等の馬を掛け合わせて産まれた軍馬と言われています。

体高が160~170程ある大型種で、中には2mを超えるものも居るそうです。

体重は1tにもなり、サラブレッドの倍位の重さとなります。

体型はサラブレッドに比べ足が短く、胴が太い馬で、体力もあり、性格は穏やかで鈍重だが、非常に力が強い為、現代では馬車馬、挽馬、ホースショーなどに使われることが多い品種となります。

ノースアメリカン・メイド(別名ムース)と名付けられた巨大馬が居るのですが、この馬は何度もアメリカやカナダでチャンピオン馬になっております。

世界一のペルシェロンだと言われております。

さて、松風と言う馬は元は前田利家が太閤秀吉より拝領した馬であるが、前田慶次が利家を水風呂に入れられて騒いでいる間に松風を強奪し、そのまま前田家を退転したと言われる説から産れた名馬です。

ですから、この時期に松風が居た事実はありません。

さて、これも漫画の影響でしょう。

黒い巨馬と言えばラオウの黒王(北斗の拳)か呂布の赤兎馬(横山光輝の三国志)か、前田慶次の松風(花の慶次)を連想します。

呂布の赤兎馬は実際は赤毛です。

汗血馬といわれている品種の馬で、「赤い毛色を持ち、兎のように素早い馬」の意で赤兎馬と言います。

まぁ漫画は白黒なので赤く書こうとすると黒く塗る形になるのでコミックの表紙の赤兎馬はしっかり赤いんですけどね~

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