第195話

今回も安土同様に好きな時間帯に来て稽古を付けたりと指導をすることとなった。


「一手ご指南頂きたし」


早速とばかりに高台で見ていた傾奇者の武士がやって来た。


「いいですよ」


そう言った瞬間に飛び込んで来た。

俺は相手の斬り付けの木刀の先に己の切先を当てて斬撃を逸らしつつ、更に踏み込み間合いを埋める。


「うぬ!」


お相手は焦った様に唸るが、もう遅いよ。

流石に躱せないだろうと切先を首に添えようとした瞬間、お相手さんは跳び退いて間合いを取った。


「いや~危ない危ない」


軽口を叩くが、危なげない様に感じるよ。

でも、「けものか!!」と言いたくなる程のしなやかにして素早い躱しだった。

間合いを詰められた瞬間に危機感知でも働いた様な動き出しだったぞ。


「お名前を聞いておりませんでしたな」

「おお!失礼仕った、某、前田慶次郎利益と申す」

「某は」

「いえ、知って御座います」

「左様ですか・・・」


あ~これが前田慶次か!!

猫科の動物の様なそんな感じ独特のしなりのある動きに、獰猛な猛獣の様な威圧感。

あ~イメージ的に虎かな?

平均より少し大きい体躯ではあるが、俺よりも小さい。

あ~俺が大きいだけ?あはははは~天の声さんも言うね~俺は180㎝を超えない位なのでこの時代ではそれなりに大きい方である。

やはり幼少よりしっかり栄養を気にした食生活を続ければそれなりに日本人も大きく育つね~

さて、前田慶次は175㎝には届かない程度、多分171~174㎝位?なのでこの時代では大きい方だが、俺より小柄だし、更に大きい人物が居る。

背丈で言うと又左さん(前田利家)の方が大柄だ。

又左さんは180㎝を超えている。

膂力りょりょくに優れるのはやはり体格の大きさに比例するが、仙術を学ぶとそれだけでは無い事が如実に解る。


「攻めて来られないので?」

「あははははは~丸目殿に隙が見つからぬで困っており申す」


そう言いつつも虎視眈々とこちらを見据えチャンスを待つ前田慶次。

剣術として見るとまだまだ粗削りではあるが、剣速は間違いなく俺が観た中でも最速かもしれない。

剣速が早いと言うことはそれだけ一撃が重い。

逸らしてもその重さが伝わって来る。


「いや~参った!」

「それは良かった、こっちもお相手するのが大変でした」

「あははははは~しっかりと応対しておいてそう言われますか」


いや、大変だったよ。

一撃一撃が重いからしっかり受けると拙いと思い、全て剣先を逸らして躱したよ。

勿論、仙術を使えば状況は変わると思うけど、現段階で仙術を抜きにすると中々どうして恐ろしい相手だ。


「慶次!!何じゃあの不意打ちは!!」

「あ!叔父貴か・・・五月蠅いの~」

「五月蠅いだと・・・何じゃその言い草は!!」


立合いが終わった段階で又左さんが前田慶次を怒鳴り散らす。

前田慶次は耳を抑えて「叔父貴本当に五月蠅い」と言っている。

言い合いになる前に前田慶次は戦略的撤退を選んだ様で、「丸目殿~また来ます!!」と言って颯爽と去って行った。


★~~~~~~★


「一手ご指南頂きたし」

「いいですよ」


丸目四位蔵人殿の剣術指導が始まって早速とばかりに挑むこととした。

叔父貴(前田利家)ほどではないが、中々に大柄な方だ。

声を掛けた後に即座に横薙ぎすると、剣先にて上方に斬撃を逸らされ、一気に間合いを埋められた。

そのまま丸目殿の剣先が我がくびを狙い迫って来る。

足の力のみで跳び退き何とか躱すことが出来たが・・・

躱すのに必死で「ぬう!」とか変な声が漏れた。


「いや~危ない危ない」


本当に危なかった。

追撃を喰らえばどうなっていたか解らぬが、追撃はして来られなかった。

隙を狙うが隙は無い。

じっと構えていると丸目殿が声を掛けて来られた。


「お名前を聞いておりませんでしたな」

「おお!失礼仕った、某、前田慶次郎利益と申す」

「某は」

「いえ、知って御座います」

「左様ですか・・・」


我が名乗りに合わせて名乗ろうとされたが、丸目四位蔵人程の有名人を知らぬ者など殆ど居ないであろう。

俺ですら知っている人物なのだ、名乗るまでも無いのに名乗ろうとされたが、やはり全く隙は無い。

丸目殿は上段斜めに構えるのが得意と聞いておったが、今は正眼に構えておられる。

しかし、隙は全く見当たらぬ。


「攻めて来られないので?」

「あははははは~丸目殿に隙が見つからぬで困っており申す」


本当に困っている。

虎視眈々と隙を狙うが、全くの隙が見当たらず膠着したかと思っていたが、「来られないなら行きますね」と言われたかと思えば一瞬にして間合いが埋まる。

不味いと思いこちらから先に攻めるが、全ての攻撃を剣先で捌かれてしまう。


「いや~参った!」

「それは良かった、こっちもお相手するのが大変でした」

「あははははは~しっかりと応対しておいてそう言われますか」


「大変でした?」・・・涼しい顔で捌いておいて言いよるわ。

しかし、悪い気はしない。

お互いに微笑み合って話し込んでいると、その良い雰囲気を打ち破る者が居た。


「慶次!!何じゃあの不意打ちは!!」

「あ!叔父貴か・・・五月蠅いの~」

「五月蠅いだと・・・何じゃその言い草は!!」


叔父貴が最初の一撃について物申して来た。

丸目殿程の者があれくらい躱すか逸らすか受けるだろうと思っておったし、あんなものはご挨拶じゃ。

それを言い咎めて来る叔父貴は本当に・・・

そして、声も大きく本当に五月蠅い。


「叔父貴本当に五月蠅い」

「まだ言うか!!慶次!!そこに直れ!!」


叔父貴は顔を真っ赤にして俺を怒鳴り付ける。

馬が合うと言うが、叔父貴と俺は馬が合わない。

しかし、一応は叔父貴の家臣としてここに来ておるので早々に逃げることとした。


「丸目殿~また来ます!!」


去り際に丸目殿に声を掛けると、「お待ちしておりますよ」と言われた。

ふむ・・・退屈な日々と思うておったが、本当にこれからが楽しみじゃ。


〇~~~~~~〇


前田慶次と主人公の剣術ファーストコンタクト!!

さて、戦国時代は栄養状態も悪く、現代の様な食事による肉体構築の考えがありませんでしたし、幼少時のタンパク質の不足で平均身長が低かったようです。

平均身長は成人男性で155㎝だったと言われます。

大体現代の中学生位でしょうか?

秀吉は140~150㎝位と言われますので少し小柄位です。

家康は155~158㎝位と言われます。

信長は幼少時から野山を駆け回り肉類を摂取していたのでしょうか?大体170㎝位だったそうです。

この時代で言えば大柄な方です。

さて、作中に出て来ました前田利家は現存する鎧兜から182㎝位だったと言われます。

戦国時代では規格外に大柄です。

さて、前田慶次はどうだったかと言うと前回のうんちくで語りましたが現存する鎧兜から平均よりちょっとだけ大きい位と言われています。

え?なんかイメージと違うと思うかもしれませんが、本当に漫画の影響は大きいですね~

戦国時代の日本最強の武将と言えば本多忠勝でしょうか?

彼の身長は約160㎝と言われています。

武田最強の武将と言われる山形昌景は約140㎝と言われます。

豊臣秀頼は190㎝以上と言われます。

これについてはまたその内取り上げると思います。

さて、では高身長武将はどの位の武将が居たのか?

2m越えの武将が残る資料で解る範囲では3人居ます。

三浦義意(227㎝)、真柄直隆(220㎝)、風魔小太郎(216㎝)の3人です。

一位の三浦みうら義意よしおきについて語りたいと思います。

通称は荒次郎と言います。

相模三浦の最後の当主で、後北条に滅ぼされました。

「八十五人力の勇士」の異名を持ち、最期の合戦で身に着けた甲冑は鉄の厚さが2分(6.06㎜)、白樫の丸太を1丈2寸(約364㎝)に筒切りにしたものを八角に削り、それに節金を通した棒(武器名としては「金砕棒」と言われます)を持って戦い、逃げる者を追い詰めて兜の頭上を打つと打たれた者は砕けてめり込み圧し潰されて棒が胴まで達し、横に薙ぎ払うと一振りで5人~10人が吹き飛ばされ、棒に当たって死んだ者たちは500余名に達し、それを恐れて敵が居なくなると、自分の首を掻き切って自死したと記されているそうです。

本当かどうかは別にして、リアル戦国無双した人物として語り継がれています。

この三浦みうら義意よしおきの身長ですが、日本のプロレス界の史上最大の長身と巨体と言われる故ジャイアント馬場さんが209㎝と言われるのでそれより高い227㎝・・・戦国時代じゃなくてもそれが如何に高身長かが解ります。

そして、甲冑の鉄の厚さが2分(6.06㎜)だったと言うのはこれも規格外!!

日本の甲冑ではなく、同じ厚みの物を挙げるとプレートアーマーの厚みです。

鉄砲登場で甲冑内の鉄板の厚さが4㎜以上となった言われますが6㎜以上は本当に可成り重いですから早々ないです。

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