第157話

「ほ~長の家は立派なものじゃな」

「ほんに、ほんに、京の山科卿の館もそうでおじゃったが、長が関わると立派になるでおじゃるの~」


公家の2人はうちの家に滞在とする事とした。

まぁ義理の親父と言うことで身内待遇だね。

2人とも京にいた際は里子の事を孫のように可愛がっていた。

山爺(山科様)とりゅう様(近衛殿下)とそれぞれを呼ぶ。

ほへ~と思って聞いていたら近衛殿下が「長も竜と呼んで良いでおじゃる」と言うけど、恐れ多いので今までの通りに殿と呼ぶこととした。


「お、お、おはちゅ・・・お初に、お目に、かかり、まする」


あ~親父が噛んだ・・・噛んだ後はゆっくりと慎重に言えたね~

まぁ普通はこんな偉い人来たらこんな感じになるよね~

しかし、里子のことで意気投合して直ぐに仲良くなった。

親父は2人から与三よざ殿と呼ばれ、親父は俺に倣ったのか近衛殿下・山科様と呼んでいる。

そして、俺は京の摩利支天様のお社の創建に行けなかったことを詫びた。

特に気にした様子も無く、「よいよい」と二人ともが言う。

それよりも創建時の話をしたいようで、話を聞けば、何と驚いたことに真里の遺髪を摩利支天様の像に入れた途端に摩利支天様の神像が一瞬輝いたという。

多くの者がそれを見たことで噂が噂を呼び、神の奇跡だと言い、お社は大盛況だという。

報告で聞いてはいたけど、経験者が語るとやはりなんか違うよね~皆も興味津々でその話を聞いている。


「織田殿の所の明智十兵衛なる者など涙を流してずっと拝んでおじゃった」

「左様、左様!他にも同じような者がいましたな~」


へ~明智十兵衛って光秀だよね?

前世で何かで読んだ評論の様なもので明智光秀って優秀な人物だったと書かれていたし、何か真面目なエリート官僚的なイメージを勝手に持っていたけど、それが涙を流して拝む?・・・なんかその光景見たかったかも。

他にも宗教関係者も呼ばれていて、因縁の本願寺からは下間しもつま頼廉らいれんと言う重鎮が来ていて、その光景を見て神像を一心に祈っていたそうだ。

うん、確か浄土真宗って「阿弥陀様以外信じない!」て宗教だよね?拝んじゃっていいのかな?他にも宗教関連者も含め、この時代の著名人が多くその場に居たそうで、献金が凄いらしいよ~最初のインパクト大事だよね!!

さて、こちらでも何が起こるか・・・


「そう言えば、山科様宅の庵が有名と聞きましたけど?」

「おお!真里支天庵じゃな!!」

「あ~それ」

「あの庵は清浄な空気が流れていて落ち着く上に、あそこで飲む茶は極上じゃ!!」

「ほ~極上ですか!!」

「そうじゃ、そうじゃ、織田殿も大層気に入った様での~こちらに行くのを何処から聞き付けたのか、不在の間はお貸し頂きたいと言われての~」

「は~織田殿に貸したんですか?」


俺がそう聞くと近衛殿下が面白可笑しく答えてくれた。


「ほほほほほ~あれは傑作じゃった!」

「傑作?」

「そうでおじゃる!儂と山科卿で茶を飲んでおじゃると使いの者が来ての~」


おっと、山科様が自分の言いたいことを取られると思ったのか引き継いで話す。


「「直ぐにお会いしたし」との事での~何事かと思うて会えば、留守中に我が館ごと貸して欲しいと言って来たわ」

「山科卿・・・麿が言いたかったでおじゃる・・・」

「ははははは~それは申し訳ない」


全然申し訳なさそうに笑いながらそう言う山科様。

近衛殿下も本当に怒っている訳ではなさそうなのでこの二人の掛け合いなのだろう。

信長に館ごと貸したというけど、信長が気に入ったのは特にあの庵だろうと言う。

へ~そんなに凄いのか?是非とも京に行ったらあそこで茶をご馳走になろうと心に決めた!!

近衛殿下・山科様はこの新屋敷を気に入ったようだ。

この屋敷は温泉を引いて来ているので何時でも温泉に浸かれるという贅沢仕様。

そして、酒も博多から各種取り寄せているよ!!

最近はウイスキー擬きの様なお酒を完成させたと言い送って来た。

確かに飲んでみるとそれっぽい。

前世で完成形を知っているからかまだまだ感は否めないが、十分に商品としては成り立つだろう。

これ、冷えたソーダで割って飲めばうまいね!!

しかし、俺の好みとしては梅酒の方かな~

それにやっぱり梅酒のソーダ割りって美味しいよね~阿蘇山近くにソーダ水出るところあったよね~とか思って少し話したら藤林の諜報網で探し出し、紹さんが色々手配して入手して来たよ。

温いのは嫌だったから硝石使った水冷やす方法を披露しちゃったら「そんな使い方が!!」とか言って驚愕されたよ。

前世の中学時代の科学部の実験でアイス作ったのが懐かしいね。

雪に硝石混ぜて、マジでキンキンに冷えてアイス出来た時は感動したよ。

何が使えるかなんて分からないけど、何でも経験はするものだね~

それにしても、この時代の硝石って高級品だったよね?・・・紹さんに手配頼んだら何に使うか興味津々だったよ。

西洋の商人から買うから高いだけで、実際にはそうでもないし(一般庶民にはそこそこ高いです)、紹さんレベルの商人なら余裕で手に入れたけど、流通では更に日本の商人がこちらでも金額上乗せで売るから更に高いんだ~・・・お!何か飯の種になりそうな予感・・・おぼろげながら何か思いついたので時間ある時に考えよう。

何と言っても無職だしね・・・起業するにしても計画的に行かないとね!!

え?投資家ちゃうのかって?・・・そうね~投資家かもしれないけど、それだけじゃあね~出来そうなこと色々考えないとね!!


〇~~~~~~〇


信長に山科邸を貸したようです。

何だか一波乱ありそうな・・・

さて、硝石で水を冷やす方法と言うのはこれも最近のWeb小説の定番かな?

戦国時代は硝石と言えば火薬の材料として軍事物資の1つとして取り扱われます。

持っていれば持っているだけ高値で売れることから西洋人が多くを持ち込んだようです。

しかし、実は西洋方面では特に火薬としての使用より先にワインを冷却する為の冷却剤として使われました。

水に入れると吸熱反応を起こすという性質を利用する方が火薬よりも先に見つかったのでと言うのもありますが、暑い時期に冷たい飲み物と言うのは一種の贅沢品で王侯貴族や大商人などの富裕層が利用していたようです。

しかし、この利用されていた当時は硝石は希少な鉱物であった様で、重要な食事の際にのみ硝石が用いられたそうです。

しかし、実はローマ帝国の崩壊と共に、硝石を冷却剤として用いる文化は一度失われました。

何故廃れたか?

実はキリスト教が関わっています。

この当時のキリストリ教社会では「冷」は死を連想させるものであり、食品を冷やすことは神や自然の法則に反するものと考えられていたようで、一度廃れたそうですが、16世紀に再度、イタリアの大学で再発見されて注目となります。

この当時も医師の多くが「飲み物を氷や雪で冷やす行為」によりマヒや失明、突然死などが引き起こされると思っていた様で、硝石を用いた冷却法についても否定的な意見が多く寄せられたそうです。

硝石を用いて冷却法に関する文献を残した科学者の中で最も著名な人物は、あのガリレオ・ガリレイの友人であったジャンバッティスタ・デッラ・ポルタと言う人物でした。

この人物の残した著書の中には硝石と雪を組み合わせた冷却剤に関する記述があり、雪の2倍冷たい状態を作り出したそうです。

ジャンバッティスタさんがその冷却剤使ってアイス作ったと思うよ~アイス美味しいですからね~・・・知らんけど。(作ってません)

硝石を使った温度低下のある実験では24度の井戸水が15分後には7度にまで冷却されたそうですから知っていれば中々有用な情報ですね~

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