第45話

師匠の知名度はやはりと言うか何というかやっぱり凄い!!

連日のように誰かが訪ねて来るが、今日も今日とてお呼ばれして武田家のお偉いさんの所へと訪問している。

先日の奥平さん改め定国さだくにさんの件でお留守番は宗治むねはるさんを残すこととなった。

信用無いな~今回はぶんがお供で師匠はお出かけ中だ。


「そうですか・・・」

「はい、信綱様は現在外出しておりまして・・・」

「ではもう一人会いたい人物がおりまして、お取次ぎを!」

「はい、誰でしょうか?」

「今九朗判官と噂される」


この時点で俺は驚く。

何で俺訪ねてくる?

しかし、ハタと気が付いた、動物園にパンダとかコアラとか見に行く感覚かな~とか思うと納得だ。

要は珍獣を見に来たのだ!自分で珍獣言うなと?ははははは~他に言いようあるなら言ってみろ!!


「丸目蔵人佐殿とお会いしたい」

「某にですか?」

「其方、いや貴殿が丸目殿か?」

「はい、丸目蔵人佐長恵と申します」

「これは失礼、某は武藤むとう喜兵衛きへえと申す」


喜兵衛君は師匠と俺に会いたくて訪ねて来たと言う。

まだ見た目13歳位だと思ったが、聞けば御年12とのことだ、惜しい!

晴信君の近習をしているとのことで、先日、晴信君に師匠がお呼ばれした際に師匠とは少しだけ話したがもっと話したかったのと俺に是非会いたいと思い態々訪ねて来たそうな。


「そうですか、師匠と会えなかったのは残念でしょうけど、私で良ければお相手しましょう」

「それは有難い!!」


キラキラお目目で純真無垢な感じで見詰められると眩しいぜ!!

色々話した。

俺の九州からの旅の話は相当に面白かったようで喜兵衛君は大興奮。

それと、俺が実家でやった農法に興味を持った様で本当に12歳?と言う程俺には聡明に見えるぞ。

俺の12歳の頃は・・・丸目姓の人を探したり、山で腐葉土取って来て肥料作ったり、剣術の鍛錬したり、エトセトラ、エトセトラ・・・

まぁ俺の事はどうでも良いか、喜兵衛君の生い立ちを聞けば、三男で家督を継げないので7歳で武田の人質として甲府に住むこととなったらしい。

最近、武藤家の養子となり武藤姓に変り、最近は兵も率いる様になったと言う。

マジかよ!!12歳で兵役!!・・・ああ、そう言えば俺も似たような物か・・・昔過ぎて忘れてたよ。

そして、元の姓を聞けばと言う。

ほ~真田か~でも、真田喜兵衛・・・知らん!!

まぁ知っている武将と会うという事は中々無いだろうしね~まぁ真田と言えば、今は真田幸綱ゆきつなの時代かな?そして、幸村、じゃなかった信繁の親父の昌幸まさゆきが多分彼のお兄さんなんだろう!!

ほほ~これは武田信繁大好き一族と信繁談義をしなければ!

そして、武藤君と信繁談義で語り合ったよ!!

宗治さんと定国さんが様子を見に来たけど、一瞬、胡散臭そうに見られたが、少年と語らうだけの俺を見て安心したような顔して去って行ったが、ゲセヌ!!


「丸目殿はお側に居る某より信繁様の事お詳しいですね」

「そんな他人行儀な、もう喜兵衛とは友と思うとる、好きな様に呼んでくれ!!」

「それは・・・では、何とお呼びすれば?」

「そうだな~仲の良い者はながと呼ぶからそう呼んでくれ」

「わ。分かりました・・・長・・さん」

「おう!!」


いや~喜兵衛には俺の知らない武田信繁の人となり等も聞けて有意義な時間を過ごした。


(武藤喜兵衛は真田幸綱又は幸隆ゆきたかという武田二十四将の1人に数えられる名将の三男に生まれました。幼名、源五郎げんごろう、武藤家の養子になりこの時は武藤喜兵衛と名乗っていたようです。第四次川中島の戦いが初陣で、これは甲陽軍鑑こうようぐんかん(武田家の軍事に関する事を載せた軍学書)にその記載があるそうです。

元服前の参戦である可能性が高かったようで、当時の時代情勢が伺えます。武田家の中で真田家は可成りのエリート一族で、武田二十四将には父だけでなく喜兵衛の兄の信綱のぶつな昌輝まさてるも入っていたそうですが、そんな家は他にありません。そんなエリート一族の三男です。)


★~~~~~~★


有意義な時間を過ごせた。

上泉信綱様に会えなかったことは残念至極ではあるが、今九朗判官と呼ばれ数々の噂が流れてくる御仁と会い、語らう事が出来た。

この御仁は丸目蔵人佐長恵殿と言う。

仲良くなりと呼んでくれるほどの仲となった。

某は呼び捨てで喜兵衛と呼んでくれとお願いした。

そして、かの御仁は長と呼ぶようにと言う。

某は長さんと呼ぶこととした。

彼の話は実に面白い。

九州から態々上泉様に剣術の手解きを受けたくて上野まで行ったと言う。

彼の話で「天啓」「天狗様」という話は出なかったが、噂では「天啓」を受け、「天狗様」より数々の英知を授かったと聞く。

その事をおくびにも出さぬとは実に奥ゆかしい方だ。

噂に聞く者と長さんが同一人物とは思えぬほど実物は気さくで面白き方だ。

彼の行った農法は実に興味深い。

稲を塩水に浸ける?稲を育ててから植える?植えるのは規則正しく間隔を開ける?・・・興味深いが真似ることは難しそうだ。

こやしの作り方は真似できそうなので知行地にて試してみよう。

長さんは晴信様の弟君おとうとぎみの信繁様の事にとても詳しく側で見て来た某よりも余程に詳しかった。

尊敬する御方であるが、長さんの話を聞いて行く内に更なる尊敬の念が生まれた。

これは子が出来たら是非にも聞かせねばならぬな。

長さんは信繁様をべた褒めする一方で亡くなった時の危惧も語られた。

不敬!!と最初は思ったが、聞けば成程納得できる。

まるで先の世でも見て来たかのような的確な言い様である。

流石は天啓を受け天狗様の教えを受けた大人物である。

そう、信繁様をご敬愛する事とは別にお亡くなりになった時のことも考えねばお仕えする武田家は飛んでもないこととなる。

不敬ではあるが心の片隅には留めて置き想定をしておこう。

それにしても、子が出来たら是非とも敬愛する信繁様の名を付けたいものぞ。

後に子供たちに武田信繁の素晴らしさを昏々と語る彼の姿があったと言う。

その話を聞いた息子たちが武田信繁の信者のような存在となったとしても不思議ではない。

そして、息子の名前に・・・


★~~~~~~★


武藤喜兵衛は後の真田昌幸まさゆきです。

将来「表裏比興ひょうりひきょうの者」と呼ばれるほどの戦国時代でも屈指の智謀の戦上手の武将です。

食わせ者とも言いますが・・・

彼も武田二十四将の一人に数えられるので真田家はトータル4人が武田の代表武将に名を連ねます。

武田家行くなら出したいよね~と思っていた武将の一人です。

前の話で武田信繁、真田家のエピソードを詳しく書いたのはここの伏線でした!!

書くと思った方、挙手!!

フムフム、筆者の思考が半分の者に読まれて御座る・・・

もう一人出したい人物居るのは居るのですが、話作れるかな・・・数日中に考えられなければ・・・諦めます!!

そして、うんちく入れるかな~是非に語りたいその人は・・・現在生れていないので関係者を・・・なんか難しそう・・・

あ~でも、今回のこの物語では出番がないかも・・・どうすべ~

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