第217話

名前を付けるとか中々に大変なのでそのまま以前の名前を使おうとしたのであるが、美羽が自慢げに「長様に付けて頂きました」と言うので、俺が付ける事となったよ。

何かヒント的に情報欲しかったのであるが、以前の名前など色々なプロフィールは教えて貰えないらしい・・・

う~ん、そうなると外見で付けるより無いな。

彼女を上から下まで見回すと、赤毛の長い髪にキリっとした美人顔で、少し緑色した目と言うことは北欧系かな?

ご立派なオーパーツを装備し、縊れたウエストとスタイル抜群。

う~む、名前を外見からと考えると髪色か眸の色?


翡翠ひすいってのはどうだ?」

「ヒスイ・・・どういう意味ですか?」

「エメラルドの事をこの国では翡翠と呼ぶ」

「ヒスイ・・・気に入りました!」


どうやら気に入ってくれたようだ。

この北欧系美人元女騎士を「翡翠ひすい」と名付けた。

もう一人は金髪碧眼の美少年、彼は10歳前後の少年である。

碧眼と言うが、ブルーアイと言った感じかな?

綺麗なアイスブルーの目で何とも神秘的だ。

この少年は一切話さない。

喋れないのかと思いきや、奴隷商人曰く、話せるが無口と言うことらしい。

何でも災いの子として親から売られたそうだ。

何が災いかよく解らんが、その親曰く、この子が生まれてから流行り病で親族たちが死んでいったそうだ。

そして、呪術師から「災いの子じゃ」と言われたので、売られて今ここに至るとのこと。

普通は眉唾物と思うけど、神関連の人材なのであながち間違いではないのかもしれない所が怖いな。

しかし、里子の奨めで買う事となった。

うん、里子のお願いなら仕方ないね。


★~~~~~~★


僕は父親に災いの子として4歳の時に売られた。

もう奴隷としては5年程となる。

産まれた時に母親は難産で死んだと僕を売った父から何度も聞かされた。

その父親と呼んでいた者は口を開けば「お前さへ生まれて来なければ」と何度言い、聞き飽きる程何度も、何度も聞かされた。

そして、暴力を振るう。

僕が生れてから親族が次々に死に、何かの呪いかもと騒ぎ出した親族がまじない師をある日頼った。


「この子が災いを振り撒いておる」

「え?この子が?」

「そうじゃ!」

「ではこの子を殺せば・・・」

「いかん!この子には守護神が着いておる。自ら手を下し殺そうものなら祟られるぞ!!」

「では、どうすれば・・・」

「手放す事じゃな、どこか遠くに行って貰うのがよかろうが・・・」


そんな会話を自分の目の前でされた。

何故覚えているのかは解らないが、昔から覚えることは得意で、一度見た物は忘れないようだ。

ただ、その光景を見た当初は僕にとっては悪い話をしていると言う事位しか分からなかった。

そして、数日後に丁度僕の住む所に通りがかった奴隷商人に僕は売られた。

その奴隷商人は僕の見た目が良いのに安く手に入ったことを最初は喜んだが、1年間も売れ残ると扱いが酷くなっていった。

僕の扱いが酷くなった頃からだろうか?

その商人の経営する商家が傾きだした。

売る際に「災いの子」と言う事を聞いていた商人は別の商人に格安で僕を売った。

そして、僕を手に入れた商人は身代が傾く事となり、何時しか「呪われた奴隷」と呼ばれるようになっていった。

そんなある時、現在、僕を所有する商人が面白がって僕を購入した。


「おい!今から海の先にある島国にお前さんを連れて行く」

「はい・・・」

「その国に物好きな方で掘り出し物の奴隷をご所望とのことだから、お前を連れて行きその方に売るつもりじゃ」

「そう、ですか・・・」

「その方は神の使いとも呼ばれる方じゃから、お前の呪いも解いてくれるかもしれんな~」

「・・・」

「おい!ここは笑う所だぞ!!」

「・・・」

「まぁいい、と言う事でお前をその国に連れて行くから、その国の言葉を覚えろ」


その日から訳の分からない言葉を覚えさせられることとなった。

そして、教師役の男は名前が無いと呼び辛いと言い、僕に名前を付けた。


「「シンガ」それがこれからお前の名前だからな」

「はい・・・」

「何だ、由来とか聞かんのか?」

「由来は・・・何ですか?」

「おう!よくぞ聞いてくれた!!」


いや、貴方が聞けと言うから僕はそれに答えただけで、名前なんてどうでもいい。

本当の親からも「おい」とか「チビ」としか言われなかった。

本当の名前すら知らない僕としては名前なんてどうでもいい。


xingamentoシンガーメント(呪い)のシンガだ」

「呪い・・・」

「どうだ!面白いだろう!!」


そう言って男は笑う。

僕は全く面白くなかったが、「笑えよ」と言われたので笑った。

そして、何日も船に乗り遠くの異国へとやって来た。

町行くこの国の人々を見れば変わった格好をしているし、顔も違うので異国だと言うのが本当に感じられた。


「父上!!」

「ん?どうした里子?」


親子なのか?全く似ていない親子が僕を見て何か話している。

少し聞き耳を立てると少し言っている単語が聞き取れた。


「この子・・・守護・・・」

「え!?里子は解るのか?」


僕を指さして綺麗な女の子が何か言っている。

何だろうか?僕の次の所有者になるであろう男が似ていない我が子に向って「解るのか?」と聞いている。

何が解るのか?・・・それにしても綺麗な子だ。

こんな綺麗な子を今までに見た事無いよ。

本当に見惚れてしまった。

名前は「リコ」と言うらしい、どんな意味だろうか?

少し他人に興味を持った。

活きて来て初めての経験かもしれない。

そんな事を考えていると、一緒に連れて来られた元騎士の女がこの場に連れて来られた。

何がどうなったのかはよく解らないのだが、この人たちと元騎士の女が決闘すると言う。

この元騎士の女は戦奴の男をも倒す強い人だから、これから主人となる人でも叩きのめすんだろうな~と思い観ていると、その男、いや、ご主人様が圧勝した。

あんな元騎士の女の姿は今まで見たことがない。

驚いたのは「リコ」と言う名の少女も互角に戦い、勝利した。

本当に驚く事ばかりだ。

この方たちが僕の次の主人かと思うと何だか楽しくなって来た。

そして、僕は今までの人生が嘘であったかのような、いや、物語の中に飛び込んだような不思議な人生をその後送る事となる。


〇~~~~~~〇


第二の新キャラ登場です!!

中々に不幸な生い立ちの子ですが活躍予定?

さて、「呪いの子」と言えばハリー・ポ〇ターでしょうか?

日本でも「呪いの子」と言うのは歴史上で何度も登場します。

日本風に言えば「ご・こ」と呼ばれますね。

代表的な歴史上の人物としては安倍晴明・武蔵坊弁慶が有名でしょうか?

さて、日本では他にも双子の事も「忌み子」と呼びましたし「畜生腹」等とも呼びました。

双子以上の三つ子や四つ子等々も忌み子とされましたが、日本古代史上最大の英雄とも言われる倭建命やまとたけるのみことも忌み子と呼ばれ、父親である第12代景行天皇に忌み嫌われました。

「望まれずに産まれた子」「不吉な・忌まわしい・呪われた等の背景があり産まれた子」「存在そのものが忌避される子」等を「忌み子」と言いますが、上記に上げた「双子」も何故かここにカテゴライズされ、昭和位でやっと普通の子として認知されたようです。

女の子の忌み子は「斎女いつきめ」等と呼ばれました。

実際の「斎女いつきめ」とは神に奉仕する未婚の女性のことで、人柱の女性を指したのですが、女の子の忌み子の場合は神の捧げ物として人柱に殆どされていた為に女の子の忌み子=斎女となったようです。

物語で登場した「シンガ君(仮名)」の場合は「不吉な・忌まわしい・呪われた等の背景があり産まれた子」になります。

日本でも「犬神憑き」「狐憑き」等の呼ばれ方があり、超常的な存在が憑いた子供は同じように親族一同から嫌われて酷い扱いを受ける事となったようです。

さて、「忌み子」の「シンガ君(仮名)」はどうなるか!!

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