第326話
いや~怒られちゃいました・・・
美羽以外の者たちからお説教されました。
子供たちからも呆れられた様な視線。
うん、パパ悲しいよ。
長門守たちの勧めで一応は戦功報告を豊臣家に上げる事としたけど、2対約1,500名の軍団に勝ったとか誰が信じるよ?
戦目付とか着けてれば別だけど、まぁ普通に嘘報告とでも思われるだろうな~と思うけど、報告しておれば後で難癖付けられないだろうと言う事で、報告だけは挙げておいた。
手柄を挙げても俺自体が誰かに仕えていないので気にしていないんだけど、報告しない訳にもいかないことを知ったよ。
それから、相良家より依頼が来た。
内容は相良家が内蔵助殿(佐々成政)の命令で島津と攻防を行ったんだけど、実は島津はお猿さん(豊臣秀吉)の命令で肥後国人一揆の鎮圧の援軍に来たのに味方と思っていた相良家に戦いを挑まれて当初は困惑したけど、多少と言えども死傷者が出たことで御冠という話だ。
お猿さんも怒っているだろうけど、そっちは既に家臣を派遣して事情説明と陳謝をしているという。
島津の方は被害が出ていることからも激おこプンプン丸で取り合って貰えないらしい。
そこで、交流のある俺に依頼が来た。
今回の相良家の殿様は元家臣の俺に対して低姿勢でお願いして来たので受ける事とした。
まぁ交渉と言っても橋渡しだけで、詳しい内容は当事者同士の責任者で話し合いを持って貰うので、簡単に言えば島津に顔繋ぎして欲しいと言う事だ。
う~ん・・・相良家は元々が島津家に従属していたし交渉チャンネル持っている気はするけど、俺に依頼?
少し勘ぐってしまったが、特に裏は無いというのは調査済みだ。
現在の島津家の当主は鬼島津こと島津義弘、又四郎殿だ。
先般の借りを返して貰おうかな。
「蔵人殿、よう参られ申した」
「又四郎殿も大変でしたな」
にこやかに交渉はスタートした。
雑談などして場が温まったと感じたのか又四郎殿が切り込んで来た。
「して、相良は何と」
「行き違いであって島津家と事を構える気は無いとのことですな」
「
まるで魔王の様な笑い顔で相良家を詰る。
まぁ気持ちは解る。
島津家はお猿さん(豊臣秀吉)の命令で一揆鎮圧の加勢に来た。
しかし、内蔵助殿(佐々成政)はそれを島津家の領土侵略の野心と見て相良家にこれを防ぐようにと命令した。
相良家は命令に従って防衛した。
そして、相良家は少し前まで島津家の陣営で、相良宮内大輔殿(相良頼房)は人質として島津家に世話になっていた時期もあったと聞く。
「
「おさ、関白殿(豊臣秀吉)にも陳謝して許されたのでお互いに矛を収めませんかだそうですよ」
「関白様に・・・
球磨の士(国人)の何人かはこれを潔しとせずに又四郎殿(島津義弘)の家臣になっていると交渉の事前調査の段階で長門守に教えて貰った。
ようは、相良と島津には少なからず因縁があったのだ。
さて、どうしたものか・・・
俺はあくまでも交渉の窓口ではなく橋渡しだ。
「又四郎殿が相良に言いたき事があるのは重々承知しております。しかし、時の天下人がこれを許した以上、事を何時までも引き摺るは悪印象では無いですかな?」
「
「まぁそうでしょうな~取り合えず、某は交渉の橋渡し役です。文句は相良の者に言われては?」
そう、相良家が俺に依頼して来たのには理由がある。
島津家は大激怒して交渉の席にすら着いてくれなかったから困って俺に依頼して来た。
そうでなければ
何せ嫌われているからね~
さて、回答は如何に?
「
まぁ島津家としては業腹なんだと思うけど、お猿さんにまた何か言われるのも拙い事は理解している。
又四郎殿は渋々ではあるが交渉の席に着く事に同意した。
はい!ミッション終了!!
俺は次に又四郎殿にある提案をすることとした。
「時に、又四郎殿」
「何ですかな?」
「琉球と揉めているとか」
痛い所を突かれた様に渋面を晒す又四郎殿。
まぁ島津家は琉球支配を目論んでいるという藤林家諜報の分析だが、上手く行っていないようだ。
時は室町幕府の時代まで遡り、今から百年程前の話だが、島津家は自分たちが発給する琉球渡海朱印状なる免状を帯びない貿易船を取り締まる貿易統制権を室町幕府より得ていた。
琉球側はそんなものは勝手に島津家が決めた事であるとし、島津の渡航朱印状を帯びない船舶との交易の停止を要求黙殺した。
倭寇対策を名目に再度島津家は琉球王朝に対して言い募るが、琉球側は曖昧な対応を続けた。
琉球側からすれば武力で攻められるのは怖いが、島津に屈しない姿勢を示すことも重要と考えてのこの対応だったのだろうが、双方の不信感は募る一方となった。
更に、琉球側がお猿さんに使節団を派遣しようという動きもあるらしい。
島津家としては自分達の頭を飛び越えて上と交渉するなど面目丸つぶれで許せることではないだろう。
それ程に島津家と琉球王朝の関係は拗れている。
さて、ここで登場するのがスィーツ剣豪こと俺様だ!!
近年はお菓子の需要が伸びて黒砂糖の輸入量が増えているのだが、その輸入に俺が一枚噛んでいる。
勿論、島津家に渡航朱印状を貰った上でちゃんと取引しているよ。
でも、それだけでは俺が火を付けたスィーツブームの需要を満たせないので、島津経由以外の所からも砂糖を輸入している。
それに、琉球に黒砂糖の大量生産を提案して軌道に乗せたのは実は俺の配下の者だ。
そう、藤林の琉球草部隊を砂糖精製業に割り当ていて琉球の王族とはズブズブの関係でもある。
そこに島津を一枚噛ませて利益供与し、日向・薩摩の地域でお願いしたい事も話を進めたいと考えている。
どうせ明治維新でも中心になる様な大名家だし、今の内から取り入っておき、後々まで仲良く出来ればいいな~という考えもあり、今回は島津家の苦しい懐事情を何とかしてあげようという考えもあり、交渉を引き受けたのだ。
「実は島津家に良い話もお持ちしましたが・・・聞きますか?」
ニヤリと悪徳商人の様な笑みを浮かべて又四郎殿に聞く。
又四郎殿は俺のその笑みを見て引き攣り、「
★~~~~~~★
「実は島津家に良い話もお持ちしましたが・・・聞きますか?」
相良家との交渉の橋渡しの話を終いにして蔵人殿(丸目蔵人)は意味ありげな笑みで
「されば、某が琉球で大量に砂糖を買い付けておるのは御存知ですか?」
「勿論、
「実はあの砂糖の生産にも某が一枚噛んでおりましてな」
「な、
「事実です。それで、同じく島津家で育てて欲しい作物が御座います」
「作物?」
「はい」
そう申された蔵人殿は持参していた木箱より木の根の様な物を取り出し、儂の前に指し出す。
見れば赤い様な色味の得体の知れない物であった。
「
つい言葉が漏れる。
しかし、蔵人殿は待ってましたと言わんばかりに説明を始める。
「これは芋です」
「芋?赤こうしちょるが《赤いですが》?」
「はい、そういう品種です」
改めて見るが、表面はつるりと滑らかな皮に覆われている。
山芋とも里芋とも違うのは見れば解るが、成程、芋か。
そして、蔵人殿がこの芋栽培を日向・薩摩で行わせて欲しいと言って来た。
更に、優先的に買い取るとも言われ、おいは迷いながらも蔵人殿の提案に乗ることとした。
後に「薩摩芋」と呼ばれるこの芋が島津家の財政難を救う事となるが、島津義弘は晩年にこの時のことを思い出し、「人生最大の英断」と語ったという。
〇~~~~~~〇
薩摩芋登場!!
さて、サツマイモの起源は中央アメリカにあり、スペイン・ポルトガルに伝わり、そこからアジアにも持ち込まれたと云われます。
日本でこの芋をサツマイモとと言うのは日本で初めて栽培されたのが薩摩地方であることからそう名付けられました。
別名で、
では、甘藷は?というと、甘味のある芋という事からそうな名付けられましたが、当時の中国の方でも
他にもアメリカイモとか琉球芋などとも呼ぶことがあるようです。
因みに、英名は「Sweet potato(甘い芋)」です。
さて、薩摩芋の日本伝来は色々な説があります。
1611年に琉球出兵時に兵士が土産として持ち帰ったというものから、1613年にポルトガルの商人が坊津(島津家の所有する港)に持ち込んだ説などありますし、他にも幾つか説がありますが、古いものはこの2つで、1610年代頃に持ち込まれたのが始まりのようです。
ということは、物語はまだ1600年以前の話ですから、タイムパラドクスが起こった様な話です。
この芋は4000種程あるそうですが、日本で栽培されているのはその内の40種ほどだそうです。
さてさて、これで作中では大学芋に焼き芋、焼酎等々と料理の幅も広がりをみせる事でしょう。
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