第325話

今回はフォロワー様1,300名オーバー、お星様800超え、応援数18K目前と言う事で、お礼と記念に小話一話献上。

少し短めですがお楽しみください。

お読み頂ました皆様、フォロワー様、評価して頂きました皆様、感謝申し上げます!!


◇~~~~~~◇


徴兵され切原野にやって来た者たちはここで恐ろしい体験をすることとなった。

多くの者が目撃しているにも関わらず、誰しもが予想だに出来なかった様な事だった為、歴史研究家の中にも後に空想されて出来でよもや話の類であるとか、集団白昼夢等々であるとして云われており、真実として捉える者は居なかったが、この戦を経験したというある村の翁が晩年に子供たちに語って聞かせた話である。


この軍を率いるお武家様が一人で現れたお武家様と話されておる。

うちら私たちの位置からではよう聞こえんが、揉めとることは解る。


あっがあれが丸目様じゃ」

「ほう!初めて見るばってん、強かとか強いのか?」

「強からからしかぞ」

「ばってんか一人じゃ何も出来んじゃろ?」


交渉は決裂したごたるようだ

二人は刀を構え斬り結ぶかと思もっちょったらお味方のお武家様の首と胴が泣き別れした。

そして、丸目様が大きか声で叫ばれた。


「先ずは一人!!向って来る者はお相手致そう!ここを去る者には手を出さぬで掛かって参られよ!!」


その声はうちら私たちの位置まで聞こえる程の大声で、何を言いよるかと思えば、一人斬っただけなのに何を言いよるかと嘲笑う者も多く、「あのお侍様は気でも触れたか?」などと馬鹿にした様な声すら聞こえて来よる。

十数名の騎馬武者が「おのれ!!」と怒りの形相で丸目様に一斉に挑み掛かる。

それはほんの一瞬のことじゃった。

丸目様がまるで飛ぶごつして騎馬武者の首を斬り飛ばしてしまわれた。


「何じゃ?・・・」

「五助、ありゃ化け物じゃ・・・」


隣りの家から徴兵でおいと同じく連れて来られた五助が驚き慄き口から出た言葉に応える様においも自分の思もっちょる事を言った。


「ばってんか、まだ鉄砲衆がおる」


見やれば鉄砲衆が一斉に玉込めを始めておる。

百名程の虎の子の兵で、一斉に撃つようじゃ。


「構え!!・・・撃て!!」


バン!ババババンーーーー!!


お味方の指揮者が号令し一斉に撃つったことで煙で視界が悪くなったが、煙が晴れるとその場に丸目様は何事も無いように立っておる。


「へっ?鉄砲が全部外れたのか?」

「流石に・・・」


信じられんが全ての鉛球が丸目様を避けたように感じられた。

そして、走られて鉄砲衆を撫で斬りされてしまわれた。


「甚兵衛・・・丸目様は去る者には手を出さんと言うちょったな?」

「ああ・・・」


五助はおいにそう確認してきよった。

指揮者のお武家様が何やら叫ばれた。

多くの者が斬り掛かったり槍を突いたりして丸目様に群がったので「一斉に掛かれ?」とでも命じたのかの?

遠目から見ておれば丸目様は危なげなく群がる者たち斬り伏せていく様子が何となくだが判る。

近くに居たら何が何だか解らぬ間にあの世に旅立つことも理解できる。

ついておるのは丸目様とおいたちがまだまだ可成り離れている事であろう。

その時、突然にして旋風が舞い多くの将兵が空に投げ出された。


「神罰じゃ!!」


誰かが叫んだと同時に皆が逃げ惑う。

おいが呆然と立ち尽くしていると、幼馴染の五助がおいの腕を掴み言う。


逃ぐっど逃げるぞ!!」

「お、おお・・・」


おいもそれを聞き我に返り五助と共に逃げて何とか生き永らえた。


★~~~~~~★


戦目付など居ない状況での戦闘だった為、記録は残っていない。

しかし、生き延びた者たちの口から色々と語られたことから人伝に噂となる。

また、生き延びた武士も居りこの日の事を日記に書き残していた。

内容としては丸目蔵人一人で千五百の軍団を退けた事が書き記されており、一人で二百余名斬り伏せた事や、百名程の鉄砲衆の銃撃を防いだこと等が書き残されていた。

戦闘途中で神風が吹き軍を壊滅せしめたとも書き記されていたが、荒唐無稽過ぎるとして後の歴史家は大きく誇張されたものとして処理された。

日記を書いた者が最後の一文で「これは夢での出来事やもしれぬ」と書いていたことから、丸目蔵人の率いる軍に奇襲され混乱し白昼夢を見たかPTSDとなりその夜にそのような夢を見たものであろうという認識がなされたことが大きい。

この事をモチーフに刀を振るえば旋風を出現させる武士キャラクターがゲームや漫画、小説、アニメ、等で登場する事となる。

また、丸目蔵人は天狗の弟子だけに風すら自在に扱うと嘯く者も居たという。

真実は闇の中である。

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