第305話

朝早くと隙間時間で何とか一話!!

暇つぶしの糧にどうぞ~


◇~~~~~~◇


九州征伐、そう、俺はある人物に誘われて物見遊山の様にその人物に付き合い、九州に舞い戻り、戦観戦としゃれこんでいる。


「長さん、島津は手強いと聞きましたが実際どうなのですか?」

「そうですね~手強いですが、この軍勢で攻め立てられれば流石に・・・」


そう、九州征伐は島津征伐と言っても過言ではない。

お猿さんが九州入りするとこぞって降伏の使者を送って来た者は多い。

恐らく、竜様の影働きが効いているのもあるのかもしれないが、大軍勢で押し寄せられ、抗えないと悟って即座に降伏して者たちが多いのであろう。

そんな中、島津は未だ降伏をしていない為、攻め立てられている。

俺は今、現在では大和大納言と呼ばれる秀さん(豊臣秀長)の軍に同行している。

彼は日向方面軍の総大将を任されているのであるが、俺はそれにオブザーバー的にお声掛けされて同行している形だ。

秀さんは俺に同行を求めた時に言った。


「長さんは島津と何度か戦われた経験がお有と聞いたが?」

「まぁ、初陣と仕えておった相良家の最後の戦で戦いましたけど・・・」

「ほう!それならば、是非ともお知恵を借りたいので同行して頂きたい」

「いや、初陣は戦場に親父殿と遅刻して現れ、挽回する為に取り合えず軍勢に率いる軍を突っ込ませて暴れたら運よく手柄となっただけだし・・・相良家での最後の戦では知っていると思うけど、逼塞ひっそくを命じられる程にやらかして・・・」


歯切れ悪く俺がそう答えると、秀さんは笑いながら言う。


「戦の勝敗は時の運ですし、その時は長さんが相手の策略に気が付き動かれたことで、実際は多くの者が一時的とはいえ救われたと聞き及んでいますが?それに、長さんの言に従っていれば結果も変わったのではと言われているそうですな~」

「いや、相良家で浮いて居ったから俺の言など通らなかっただけだよ」

「相変らず長さんは謙遜が過ぎますね」


いや、事実です。

京で大活躍して故郷に凱旋したという事で、当初は相良の殿様からは・・・いや、勝手に出奔したりとしていたからあの当時の相良の殿様(相良義陽)からは毛嫌いされていたと思うし、一応はそれなりの地位に行き成り大抜擢された形だったので、同僚の者たちからも遠巻きにされて距離を置かれたいた様な気がする。

トップが毛嫌いするのだから下もそれに倣うのは当然かもしれないけど、あの当時は本当に浮いた存在となっていたとしみじみと思う。

現在は高城という城を包囲している。

そんな中、うちの諜報が重要な情報を持ち帰って来た。


「蔵人様」

「何かあったか?」

「はい、島津に動きがあり、援軍として島津又四郎殿(島津義弘)が出陣されたとの知らせが参りました」

「解った」


それを聞いた秀さんは「流石は長さんの配下!優秀ですな~」と言って褒めた後、各軍に使いをやり警戒するようにと伝えたようだ。

鬼島津が援軍としてやって来るのか。

史実ではどんな動きをしてどんな戦果になったかは知らないが、島津が最終的に降伏してお猿さんの軍門に降ることは知っている。

さて、結果を知っていると言う事は大きい。

どこにどんな恩を売り付けるが良いか長門守たちと吟味だな。

吟味した結果、え?早いって?「早い・安い・美味い」は基本だぞ!!

え?牛丼じゃないだろうと?・・・知らないのか?この三拍子が揃ってこその黄金比なんだよ!!

おっと、牛丼の話はさておき、やっぱり牛丼かい!!というツッコミが聞こえる様だが、「早く・易く・上手く」行動するのは何にでも必要な大原則であることは間違いない。

俺は秀さんに提案し、島津の降伏斡旋を行うこととした。

上手くすれば、島津家とお猿さんの所の両方に恩が売れるという美味しいお仕事です!!

早速とばかりに、俺は長門守と数名の彼の手の者と共に援軍の島津又四郎殿(島津義弘)の軍勢の許に向った。

彼の軍勢はどうやら夜襲準備中だったようで、殺気立っていた。


「何奴!!」

「久しいですね~又四郎殿」

「おや・・・丸目殿か・・・何をしに参られた?」

「貴方に会いに来たのですよ」

「ほう!豊臣に尻尾を振り、我らが領土ん道先案内を買うて出ちょらるっおられる其処許そこもとが儂に会いに?」

「はい、お猿さんに降伏されませぬか?」

「はん!ないをゆかち何を言うかと思えば、戦わずして降伏などありえん!!」

「あ~因みに、既にあなた方の存在は敵方にばれて警戒されていますよ」

誠け誠か?」

「はい、某が秀・・・豊臣方の日向方面軍総大将の大和大納言殿に教えましたから」

「!!!」


又四郎殿は一瞬驚き、苦い顔でこちらを睨みつけて来た。

まぁ夜襲が成功しようが失敗しようが、島津が降伏するのは変わらないし、被害出なければお互いに遺恨も少ないだろう。


「丸目殿・・・」

「何でしょう?」

「お主は降伏を勧めけ来たちゆたな勧めに来たと言うたな?」

「はい、如何されますか?」

「・・・受くっどうけよう・・・」


諦めた顔でそう言われたので、そのまま夜襲は行わず又四郎殿は引き上げるというので、俺は秀さんに伝言をしつつ、又四郎殿に同行して薩摩に向かう事とした。

そして、久しぶりに薩摩の地を訪問した。


「お久しぶりですな」

「丸目殿、よう参られた」


又四郎殿は先触れを出していた様で、久しぶりに会う、現島津家当主である又三郎殿(島津義久)は事情を知らされているので、落ち着いた面持ちで俺を待っていたようだ。

既に話し合いは済んでいるようであるというより、当主である又三郎殿(島津義久)は弟である又四郎殿(島津義弘)に家督を譲る予定で、今現在、彼を当主として扱っているらしいので、その当主候補が決めた事なので即座に受け入れたようだ。


「それで、某としては島津家の降伏の斡旋は行いますが、条件等は決められませんから、出来れば豊臣方の総大将の大和大納言殿と話をして頂きたいのですが?」

「相分かりもした。使者としてとっじょん弟の又七郎に交渉を任せっで任せますので、御仲介、よしなに」

「はい、承りました」


そして俺は、島津家のネゴシエイター、島津家久と共に秀さん(豊臣秀長)の許に向かい、仲介して仕事を果たした。

そう!俺はあくまでも仲介!!

難しい事は当事者同士で宜しくやってくれ!!


〇~~~~~~〇


一部薩摩弁でお送りしました!!

さて、史実として豊臣秀長が日向方面軍総大将として島津家と戦いました。

実際に高城を包囲したようで、島津家は島津義弘を総大将にして援軍を出します。

島津義弘が秀長伴い従軍していた宮部継潤の陣に夜襲を仕掛けることを実際に行いましたが、抗戦中に他の豊臣方の軍の援軍が駆け付けた為、島津義弘の軍勢は夜襲に失敗して薩摩に引き返しております。

この戦いは根白坂ねじろざかの戦いと呼ばれており、豊臣秀長麾下の藤堂高虎と宇喜多秀家麾下の戸川達安の手勢らが宮部継潤の救援を行い、島津義弘の軍勢を追い返しております。

この時、豊臣秀長は追撃しようとしていたようですが、配下の者に意見され安全策を取り、追撃を行わなかったようです。

更に、小早川隆景・黒官率いる軍勢が挟撃を仕掛けた事で島津軍は大打撃を受け、島津忠隣・猿渡信光などの大将格の武将を失う事となりました。

さて、根白坂の戦いでは宮部継潤が最初に島津義弘と戦闘に入り、抗戦しましたし、その後も島津家久の軍勢を撃退したなどの功により、豊臣秀吉にお褒めの言葉を貰ったようです。

これ以上の抵抗は無理だと判断した様で、島津家は家久を豊臣秀長の許に派遣し停戦交渉を行ったようです。

この時の功で秀長は従二位権大納言へと昇進を果たしておりますが、秀長のやり手な所は裏で九州征伐に参加した大名たちに割高な兵糧を売り付けようとしたらしいです。

財テク秀長さんらしいと思えるエピソードですが、秀吉が待ったを掛けて実際には割高取引にはならなかったようですが・・・

九州征伐は作中でも書いていますが、殆ど島津征伐と言える物でした。

何故ならば、九州の大半が島津領だったからです。

そういう理由から豊薩合戦などとも呼ばれます。

実際にこの島津との戦いの裏では豊臣秀長の依頼で水面下の和平交渉が行われていたそうです。

丁度、作中の主人公の役所は別の者がやっていた訳です。

では、誰が担当していたか?

足利義昭や木食応其もくじきおうごが動いており、この時の島津家当主の義久が義昭の使者に会って講和受諾の意思を表明していたと云われます。

木食応其もくじきおうごというのは、真言宗の僧で元六角家に仕えていた元武将さんです。

またの名を深覚坊応其とも言います。

実は島津家との和睦交渉は茶聖・千宗易なども関わっているのですが、応其も秀吉の使僧として尽力しました。

この僧侶さんは連歌学者としても有名で、ある連歌の会で、応其や細川幽斎等々の歌道自慢・歌道好きの者たちが集まったのですが、島津義久や伊集院忠棟(島津家の筆頭家老)が参加していたらしいのですが、この時の縁からなのかもしれません。

九州征伐の時、秀吉は廃墟と化していた博多を復興させています。

そして、博多を直轄領としていますが、この物語では廃墟化していません。

十日えびす様の御利益かもしれませんね~(知らんけど)

また、肥前の長崎・浦上・茂木がイエズス会領となっていた様で、この事実を秀吉が知る事となり、そこから芋蔓式に奴隷の事などのあれこれが問題となり、伴天連追放令を秀吉が発令する事となります。

それらの事については今後書いて行くと思います。

次話は閑話的に主人公と別れて行動している奥様のお話!!

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