第304話

明日は忙しくなりそうで、UP出来るか解り兼ねるので、先行してUP致します!!

時間あれば明日もUPしますので宜しくです!!


◇~~~~~~◇


色々と忙しい日々を過ごしながら京で過ごしていると、一つの知らせが俺の許に届いた。

お猿さんの宿老であり、俺も仲の良い、蜂須賀正勝こと小六さんが病の床にあるという。

丁度、京に居ると言う事で慌てて見舞いに伺った。


「小六さんご無沙汰してます」

「ああ、蔵人さんこのような床に伏した状態で申し訳御座らぬな」

「いや、病なのですから仕方無き事ですよ」

「そう言って頂けるのなら有難い」


久しぶりの旧知の仲の小六さんと色々と語り合った。

俺は勿論欧州でのあれこれを話した。

小六さんは今までの自分の行って来たことを話された。


「殿下(豊臣秀吉)は儂に阿波一国をお与えになろうとされたが、儂はもっとあの方のお側に仕えたいと思うての~辞退した」

「へ~後悔は無いのですか?」

「わはははは~ゴホゴホ・・・」


笑い過ぎて咳き込まれたが、お加減が悪い様だが大丈夫か?

「大丈夫ですか?」と聞いたが「大丈夫、忝い」と言われたので落ち着くのを待ってから話を続けた。

小六さんは後悔は全く無いと言われた。


「もし仮に、病が治るなら如何されます?」

「そのような事・・・蔵人さんならありえるのでしょうか?」

「まぁ・・・無いとは言いませぬ」


そう、ここはやはり「神饌」の出番だろう。

序に、千代も来て貰う様にと言付けて小六さんの状態を診てもらうこととした。

お狐様(千代)の診断には定評があるからね~

しかし、千代の診断結果は芳しいものではなかった。


「病は治せるが、寿命までは難しいのじゃ」

「え?」

「あの者の寿命は尽き掛けているぞよ」


千代曰、2回の「神饌」飲用で病気は治るらしい。

しかし、小六さんの寿命は尽き掛けているのでそちらは今からでは何ともし難いという。

「神饌」を飲み続ければ・・・いや、1人の延命に使える量の確保は俺でも言い出せない。

なにせ、俺の配下の人々にも生命線となっている。

特に、藤林の諜報の方などでは「神饌」で命を繋いだ者も多い。

そう言う理由もあり、俺が年間に使える「神饌」の量は多いとは言え限りもあり、また、一人に大量に渡すなぞ出来ない。

小六さんに事の経緯含め話すと、ニコリと笑いながら言われた。


「己が長くない事など百も承知の上です。病が治り、一時とは言え殿下のお手伝いがまだできる事こそ誉!どうぞよしなに」


そう言って深々と頭を下げられた。

その忠誠心に感動した。

お猿さんが天下人と成れたのはこういう人々の支え合ってのことだと改めて思う。

そうそう、彼の息子とも昔からの顔なじみで、彦(蜂須賀家政)・蔵人殿と呼び合う程の仲だ。

彦の親父殿の小六さんが俺の事を「蔵人さん」と呼ぶので同じでも良いと言ったのに「蔵人殿」と呼ぶが、彦とも気心も知れているし、もう癖のような物だと諦めてお互いの呼び方なぞ気にせず付き合っている。

その彦にも親父の小六さんの事で感謝された。

しかし、小六さんは病気を回復した後、少し体力を戻してから大坂に行ったそうなのだが、程なくして悲報が俺の許に届いた。


★~~~~~~★


蔵人さんに久方ぶりにお会いした。

眼光鋭くスキの無き佇まいは今も変わらずと言ったところだ。

初めて会った時よりも磨きが掛かっているとさえ思える程に彼の一挙手一投足にスキが無い。

儂が病床と知り訪ねて来て下さったという。

お忙しかろうに悪いと思いつつも何と嬉しき事か。

お互いに会わなかった間の出来事を語り合う。

蔵人さんの旅した外つ国に興味を持った。

そんな未知の経験を儂もしてみたいと胸躍り聞き入る。

儂もお返しにと今までの儂の人生を振り返るが如く、会わなかった五年程の歳月の儂の経験を聞かせた。

まるで芝居でも観るかの如く、蔵人さんは儂の話を面白き事の様に聞いて下さり楽しき時間は過ぎて行く。

久しぶりに調子が良く、長々と話してしまい疲れたのであろう、話途中で咳き込んだ。

そして、咳も落ち着いた辺りで蔵人さんは言う。


「もし仮に、病が治るなら如何されます?」

「そのような事・・・蔵人さんならありえるのでしょうか?」

「まぁ・・・無いとは言いませぬ」


神仏と対話し、数々の奇跡の様な事を起こされる蔵人さんならばもしやと思い、つい縋ってしまった。

彼曰く、秘蔵の酒で「神饌」と言う神に捧げてその御利益を得た摩訶不思議な酒をお持ちだと言う。

そして、使いの者を出し、少しすると、千代と呼ばれる蔵人さんの妹御が儂の枕元に来られた。

何と美しき女性にょしょうであろうか、もし仮に殿下が目にされれば「嫁に」と言われるかもしれぬ。

儂の顔を見て脈を取り、難しい顔をされた。

ああ、恐らくは儂も長くないのやもしれぬ。

病を治すのも難しかろうと思っていると、一度席を外された蔵人さんと千代殿が戻られて、儂に伝えて来た。


「小六さん、申し訳ありませぬが・・・」

「ああ、解っております・・・もう長くないのでしょ?」

「知っておられたので?」

「あははははは~自分の事ですから何となくは・・・」


力なく笑い、そう答えると、蔵人さんも千代殿も悲しそうな顔をされた。

解っていたことだがせめて病を治し命尽きるまで藤吉郎、いや、今は関白となり「殿下」と呼ばれるまでとなった我が主君に仕えたいという願いのみだが、それも叶わぬと思うておった。


「病気は治せますが・・・寿命までは・・・」

「な、治るのですか?」

「はい、この酒を二回飲めば治ります」

「ま、ま、ま、誠ですか?」

「はい」


一縷の望みが現れた。

儂はその最後の希望に縋りついた。

蔵人さんたちが言う通り、次の日に飲んだ酒で全快したが、落ちた体力を戻す為、少し時間を要した。


「おお!小六どん、やっと戻ったがね~」

「はい、殿下!またお側にて侍ることをお許しくだされ」

「勿論だがねー」


そうして束の間の幸せを満喫した。

しかし、儂の最後は不安とともに幕を閉じた。


「ち、ち、父上!!」

「如何した?慌てて」

「実は・・・」


息子の彦右衛門が言うには、殿下やその周りの者の一部が蔵人さんと反目するような事を企てようとしていると言う。

儂はゾッとした。

神仏の加護厚き蔵人さんと敵対?

それは天に唾吐く事ではないかと考えてしまう。

殿下もあれだけ世話になっているというに何という事だ!!


「不味い!!」

「それで・・・如何致すべきかと・・・」

「勿論・・・」


ああ、儂の寿命が尽きようとしているのを今更ながらに感じ、儂は即座にもう一言二言しか話せない様な気がして、息子に一言だけ述べ、その場に意識なく倒れ伏した。


「蔵人さんと絶対に対立するな・・・」

「ち、ち、父上!!」


息子の叫びを聞きながら、儂は意識を手放しこの世を去る事となった。


〇~~~~~~〇


今回は蜂須賀正勝と言う武将の死についての話でした。

時系列的に他の話と混ぜて分けても良いと思ったのですが、こちらの方がスマートかなーとか思っちゃいまして話を纏めて少し先の未来となりますが、彼の亡くなるまでの話を一気に書き上げました。

さて、歴史研究家の中には豊臣秀吉の出世を支えた第一の功績は彼にあるとも言われる程の人物です。

九州征伐の前の四国征伐の際は目付として出征し、総大将・羽柴秀長を大いに助けたようです。

秀長に長宗我部元親を説得するように勧めたのは彼だと云われており、もし仮に元親を説得して降伏させていなければ、土佐の出来人とも呼ばれる彼に大被害を与えられていたかもしれません。

四国征伐の論功行賞では秀吉から阿波一国(約17万石)を息子の家政に与えられたそうですが、元々は戦勝の暁には正勝に阿波一国を与えるという内意を与えていたそうですが、隠居の身であることと、秀吉の側近として仕えることを望んでこれを辞退したそうです。

代りに息子に与えられたという経緯がありますが、その忠誠心が凄いですね。

残念ながら物語と同じく、京で伏せっていたのですが、一度回復し、大阪に向かったのですが、程なく亡くなっています。

61歳での死去ですが、豊臣政権にとっては恐らく、秀長に次ぐ程の重要な人物の死だったと思います。

最後の遺言めいた言葉で息子の家政の動きも今後書く予定です!!

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