第11話
俺の知る全ての簿記知識を伝授し終わったので紹さんに伝えると深々と一礼された。
「丸目蔵人佐様、本当に何から何までお世話になりました」
「紹さん、止めてくださいな、某とあなたの仲じゃないですか」
「長さんらしいですね~では、お約束通り援助させて頂きますが、簿記だけじゃなく他にも色々お世話になりましたし色は付けさせてもらいますよ」
「まぁ程々でお願いします。そうじゃないとまたこちらに伺い辛くなりますから」
「何を仰る!長さんはもう家族同然ですよ!!でもお武家様に失礼ですかね~」
「いえいえ、大変うれしいです」
1週間後に博多を後にすることとなった。
その間に貞坊から泣きつかれたり、茂さんからまたの再会を言われたりと博多で知り合った者たちと別れを惜しんだ。
紹さんの調べたところ現在、上泉師匠の所在は関東である。
まだ弟子では無いだろうって?はははは~ウケる~未来で弟子なのだから今から名乗っても何も問題無いんだよ!!
上泉師匠の元々の居城の
関東までは長旅でもあるし、紹さんのお願いで堺に立寄りある人物に出来るだけで良いので神屋に教えた内容を伝授して欲しいと頼まれた。
まぁ急ぎの旅では無いから引き受けたが誰にと聞けば
紹さんは数年前に亡くなった
「宗久さんは気さくな方なので長さんとも馬が合うと思いますよ」
「へ~まぁ紹さんがそう言うなら違いないですね~」
この人物の名は知っている!!
確か~堺の三・・・何とか!!・・・まぁ紹さんのセレブ友なのは間違いない。
丁度届いた呂宋からの例の物を見せてみては?と提案してみると悪い顔で紹さんが「其れは名案!!」と言って手を擦り合わせて気合を入れている。
俺の滞在費代わりに壺を1つ今井さんに渡してみることとしたようだ。
ある意味これこそが商人の鞘当てなのかもしれないな。
博多から出る堺行の神屋の船に同乗させてくれると言う至れり尽くせりで堺へと向かうのだが、何と案内役として金蔵が堺までは付いて来てくれることとなっている。
此奴とは色々あったがその後は気心も知れ仲良くした。
そろばん、簿記以外も前世の昭和から令和までに培った接客術を叩き込んだことでクレーマーすら簡単にあしらうスーパー店員となって紹さんも彼には期待を寄せているようだ。
失敗から学ぶって重要だよね~
さて、いざ行かん堺!!
「そこな船に丸目何某と言う者は乗っておるかー!!」
「何某は乗っておりません!!」
嘘じゃないよ~何某と言う名前の人はいない!・・・わざとだけどね~丸目?って俺の事かな?何の用だ?
船には旗印として「上」の字があると言う事は村上海賊団!!俺など探さずに1つのピース探して7つの海に行けよ!!
さっきシッカリと通航料は渡したし問題無い筈だけど、問題は俺を探していること。
「蔵人さん良いんですか?」
「さぁ?知らん!!見つからなければ問題無いし、嫌な予感しかせん!!」
「そうですか・・・」
金蔵もアタフタしてるとバレるだろうが!あ・・・バレた様で俺を指さしている。
人を指さすとは失礼な奴め。
「そこのお前、若侍!お前が丸目何某じゃないのか?」
「何某じゃない!!」
「ではお前の名を教えろ!!」
「おお、我が名は丸目蔵人佐長恵じゃ!!」
「お前が丸目何某じゃないか!!」
「何度も言うが何某じゃない!!」
「もういい、大人しくついて来い!!」
「何処にだ!!」
「毛利様がお前に会いたいそうだ!!」
は~何だよもう!大友と言い毛利と言い大きくなれば偉そう・・・実際偉いんだけどな・・・戦国時代は特に力こそパワーだ!!的な領地一杯持った者が強い。
大内倒してイケイケドンドンの毛利は今が一番ノリノリだよね~この後は大友さんと尼子さんと熾烈な争いが待ち受けてるけどね~
まぁ来ないと船沈めるとかいうから付いて行ったよ・・・脅しに屈した訳じゃないよ~神屋さんの船を傷付ける事とか申し訳ないし。
そして、連れて来られましたるは元就の前。
元就ってあの真ん中の爺様?あ~ドラマだと歌舞伎俳優でまだこの頃は若く見えたけど本物は50超えた爺様だよな~人間50年の時代だから令和の時代と違って50歳超えた人々は大体爺さん爺さんしてるよね~
しかし、眼光は鋭く
横に居るのは息子たちか?
小早川君には会いたかったんだよね~また一人会ってみたい人物コンプリート?
「急ぎの所態々来てもらい悪いの~」
お偉いさんの「悪いの~」は軽いよね~お笑い芸人の「ごめんねごめんね~」位軽いよ、風船に入れたら多分大空の彼方に飛んで行く位軽いよね~
「それで、私に御用とか?」
「わっははははは~そう急くな急くな」
いやいや、こっちの予定を大幅に遅らせてて悠長な事言うなよ元就爺ちゃん、こちとら肥後国は火の国の
「それで?ご用向きは?」
「スマンな、先ずは挨拶をさせてくれぬか?」
「では、丸目蔵人佐長恵と申します。兵法修行にて旅の途中の者にて候」
「うむ、
実に面白い事を言う爺様だ。
確かにその通りだがそれを初めて会った若侍の俺に言うとは・・・
「父上!そのように自分を卑下なさってはなりません!父上はあの大内を倒した英雄ぞ!!」
「兄上その位で・・・」
態度から行動から考えると順に次男(吉川元春)、三男(小早川隆景)か?
「その英雄殿が一介の兵法修行者に何用で旅の同中をお引止めで?」
お前、何を旅の途中で邪魔してくれてるの?と言う裏の意味をふんだんに込めて見据えると、元就爺さんはこちらを観察するような眼で見詰める。
「無礼な!!」と吉川元春であろう人物が怒鳴るが知るかよ!!
元就とにらみ合いは続いたが、不意に元就爺様が話し出す。
「いやな~あの伴天連かぶれの大友を震え上がらせた若造を見てみたくてな」
「え?毛利さんとこは既に大友さんとこに
大友宗麟と俺のやり取りは限られた者しか見ていないはず。
勿論、人の噂に戸は建てられないの
「わははははは~それは蛇の道は蛇と言うじゃろ?色々有るのよ色々な~」
「左様ですか・・・」
「時に、「天啓」を受けると聞いたが誠か?」
「さぁ?知りません」
とぼけるとまた横合いから「無礼な!!」と言うBGMが流れて来るが小早川さんが必死に抑えて止めている。
横目でその様子をチラリと見ると元就爺さんも気がついて、「五月蠅い、話のじゃなするなら下がっておれ」と窘める。
「知らぬとはどういう事ぞ?」
「声を聴いたり夢を見たりしますが、相手が何々であると名乗るのを信じているだけで本当かどうかは・・・」
いや~ここでも「天啓」が足を引っ張るな~少し乱発し過ぎたか?・・・いや、もう遅いような気もするが自重しよう。
「そうかそうか・・・それで、儂らの事は何か「天啓」で言われぬか?」
「そうですね~聞き及びだと思いますが、大内家の滅亡は大友様への神罰ですから・・・逆に何か思い当たる様な奇跡的な勝ちを毛利様が御拾いでは無いですかな?」
大内氏はハッキリ言ってしまえば内紛による自滅に近い。
大大名の大内が毛利と言う1国人にしてやられたのは運が味方したのは言うまでも無いし、武士とはゲンを担ぐ生き物だ、神が味方したと言われて否定する口は持っていないはずである。
「さようか・・・」
戦国時代に通用するかは知らんがヤレヤレポーズを決めて見せると元就爺さんは機嫌良さそうに大笑いして「引き留めて悪かった」と深々と頭を下げた。
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