第352話
政宗君が会いに来た。
春(春長)と和解という、筋を通してからの会見なので特に思う所はない。
実際問題として、最上さんとこと鮭談義をしていた俺も悪いと思っていたからな。
「二位蔵人様には非礼をお詫び申し上げまする」
「あ~此方も思慮が足らず申し訳ない」
お互い謝罪して手打だ。
小十郎殿も気持ちホッとした感じの顔をしている。
「それと・・・何やら我が弟がご迷惑お掛けしているようで・・・」
「あ~まぁよくあることですよ」
政宗君が済まなそうに言って来るけど大したことではない。
切原野や京などで俺を訪ねて来る腕に覚えのある血気盛んな者たちあるあるなので気にしない。
「しかし・・・いえ、もしやすると弟の
「ほう、何か仕掛けてきますか?」
「そ・・・そうですな・・・何か仕掛けて来ると思われまする」
政宗君は歯切れ悪くそういう。
まぁ悪戯程度ならいいんだけど、政宗君の渋面見るとそうではないのかもしれない。
「悪戯ならば遊んでやらんでもないですが、度を越せば」
「勿論!度を越した場合は処断いたします!!」
「いえ、相手が度を越して来れば此方の方もそれなりの対処をしますが宜しいですか?」
「・・・出来れば此方に任せて頂きたいところですが・・・ご随意に・・・」
まぁ命のやり取りに・・・なるかもしれないという腹積もりで居た方が良いだろう。
さて、何を仕掛けて来るか。
それとは別に政宗君は色々な事を話した。
「二位蔵人様は」
「ああ、蔵人で結構ですよ」
「然らば、蔵人様は某から見ると自由に生きておられ羨ましく存じます」
「あははははは~まぁある程度の自由は謳歌しておりますが、
あ~お殿様に比べたら自由だろうね~
お殿様は絶対権力者だから自由に振舞えると思うかもしれないけど、そうではない。
意外と決まり事も多く自由に振舞えない。
勿論、家臣よりも自由だけど、好き勝手すれば家臣も良い気がしないから裏切られたりと言ったことが起こる。
権力者が好き勝手すればしっぺ返しを食らうからそれなりの立場になれば自由は奪われる。
俺も自由に見えて自由ではない。
え?自由だろうと?あははははは~一般的な武士から見れば自由だろうね。
天の声さんには俺のことが自由奔放に見える様だ。
「蔵人様も不自由なので御座いますか?」
「う~ん・・・不自由と言う事はないですが、自由ではないですな」
「不自由でないのに自由でもない・・・」
「曲がりなりにも官位官職を頂いておりますから、偶に面倒事を頼まれますし、多くの方に支えられておりますので
「蔵人様でもそうなのですね・・・」
うわ~政宗君から見ると俺は好き勝手の自由奔放に見える様だ。
「
お!一緒に聞いていた藤五郎殿(伊達
そうそう!!自由に好き勝手しているんじゃなくて行雲流水な人なのだ!!
何となくいい感じで話が収まったので良かったよ。
★~~~~~~★
「
「藤八郎殿(粟野秀用)、主は何を甘い事を言っておる!!」
「しかし・・・」
「主が恥を掻かされたのですぞ?」
「いや、小次郎様(伊達政道)が勝手に動いて二位蔵人様を怒らせただけだし、立合いは普通に指導を受けただけで・・・」
「恥は恥!!面子を潰せばそれなりの報復があると二位蔵人様も心得ておられるじゃろう」
無茶苦茶だ!!
確かに主に恥をかかされればし返すは道理じゃ。
しかし、命を狙うなぞは・・・
「縫殿助殿考え直されぬか?」
「くどい!!」
恐らく縫殿助殿が動けば大事になり裁かれるは一蓮托生であろう。
小次郎様が「知らぬ存ぜぬ」と言っても通じるか?
いや、藤次郎様(伊達政宗)もお許しにはなるまい。
小次郎様の命は助かったとしても我らは間違いなく腹を召す事となるであろう。
「藤八郎殿、漏らさば命は頂くぞ!」
「う!・・・分った・・・」
目が逝っている・・・聞く耳は無いようじゃ。
止められぬとなれば逃げるよりなかろう。
下手に藤次郎様たちに渡りを付けようなぞしたら斬られる。
事が起こる前に伊達家を出奔することを決めた。
命あっての物種じゃ、泥船には乗っておれぬ。
止められなかった儂を藤次郎様が赦すとは思えぬし、逃げるが勝ちじゃ。
「儂は伊達家を捨てるぞ!」
「好きに致せ。邪魔立てせねば命を奪う気は無い」
伊達家より粟野秀用が姿を消す。
後の歴史書には何かしらの罪を犯して伊達家に追われ出奔したと云われるが、何の罪を犯したのかを詳しく書かれた物はない。
後に豊臣秀吉に仕える事となる。
伊達家より引き渡しの打診が秀吉になされたというが、秀吉はこれを拒否。
その事を知った粟野秀用は感激し更なる忠勤に励み戦功を立て大名となる。
そして、豊臣秀次の家老の一人となる大出世を遂げる事となるが先の話である。
〇~~~~~~〇
「行雲流水」中々に良い言い回しですね!!
「天衣無縫」と何方にするか迷いました。
「天衣無縫」は自然で美しいという意味で用いられる言葉で、人柄が飾り気がなく純真で無邪気なさまや天真爛漫なこと人などを「天衣無縫な人」等とも言い間ますが、悪い意味で無造作で飾り気がなく地味という意味でも使われる為、誤解を招いてしまう恐れのある言葉でもあります。
ということで、「行雲流水」をチョイスしました。
「行雲流水」は空を行く雲と流れる水と書いてある言葉から何となく想像つくと思いますが、物事に執着せず、淡々として自然の成り行きに任せて行動することを意味します。
本文中では物事に執着せず、淡々として自然の成り行きに任せて行動することで事を成して来たので自由に見える的な意味合いで使用しました。
この言葉は11世紀後半の北宋(中国)で活躍した政治家にして多くの芸事で有名で「宋代随一の文豪」とも呼ばれた
似たような言葉では「
「
さて、四文字熟語はこれ位にして、きな臭くなってきました。
粟野秀用は歴史通りに伊達家出奔し秀吉に仕える事となります。
この物語では四国征伐などでは活躍しないので小田原征伐辺りで活躍するのでしょう。
多分、詳しくは書きませんが・・・
粟野秀用は罪を犯し、死罪に処せられることを知って逃亡(出奔)したと云われますが、今回のケースの様に同僚がやらかすのを知りつつ当主に報告しないというのは裏切り行為ですので、そのやらかし程度によって変わりますが、伊達家にとっての要人の暗殺計画ですので死罪かそれに近い罪に問われる可能性は大です。
現代で言えば隠匿罪て所ですかね?
次回、事件勃発!!
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