第353話

小十郎殿(片倉景綱)より弟君(伊達政道)の傅役もりやくの二人が姿を消したという報告を受けた。

「何か企んでいる恐れあり。用心されたし」と言う事を言われたが、何を用心するの?である。

毒は長年忍者の藤林家を配下に抱えているので耐性が出来る様に訓練して貰ったし、最悪は「神饌」使えば問題無いだろう。

暗殺の定番と言えば狙撃?・・・狙撃で真里を失っているので気分のいい物ではないが、あの時と違い、今なら何とかなる様な気がする。

他に何があるかな?

一応、藤林の者に探らせてはいるが、関東以北はまだそれほど人員が充実していないので中々に厳しい所が有る。

それに、あまり大きく動けば伊達家の忍びと揉めそうなので動けていない。

北条家の風魔みたいな協力関係が得られればいいのだけど、先ずは今回の訪問で伊達政宗という統治者と仲良くなってからの話なので正直に言えば後手に回っている感じとなっている。


「長様、ご自愛ください」

「う、うむ・・・」


美羽に諭される。

言っても俺も48歳だ、この時代で言えば爺の様なものだからな。

仙術の影響だろうが見た目は30代で通じると思うし、肉体はまだまだ衰えていないと思うが・・・

そう言えば、嫁さんたちも仙術の影響を大きく受けているのだろう、20代で通じる程若々しい。

前世でよく耳にした美魔女と言うやつだ。

美羽も今年で・・・


「長様!」

「何だ?」

「何やら私に対して失礼なことを考えておらませぬか?」

「カンガエテナイヨ~~~」


女性の年齢を聞くのは失礼と聞くが、考えるのも・・・

少し睨まれたので考えるのをよそう。


「注意と言っても何すればと思うが、注意しておこう」


そんな事を言っていたが、早速、事が起こった。

朝稽古の途中、銃撃される。

銃弾は木刀でいなし幸いにして怪我人は無しで実行犯を捕まえたが、毒を煽って死んでしまった。

今日は稽古に参加しに来ていた政宗君と小十郎殿に平謝りされたが、特に問題無い。


「恐らく、玉が当っても大丈夫ですよ」

「蔵人様!何を言っておられるのですか?」


うん、政宗君たちには解らないよね~

美羽たちや息子たち等々俺の関係者は知っている。

仙術の硬気功が中々に狙撃に有効。

千代曰だけど、至近距離から撃たれない限り弾を貫通させる事は出来ないらしい。

硬気功を使えば悪くて青染み出来る程度で、実際には少し赤くなる程度で済む。

勿論、目や口の中や鼻の孔や耳の穴に当ればその限りではないけど、それでも死にはしないだろうとのことだ。


「では証明いたしましょう」


百聞は一見に如かず、捕まえられたけど自害した暗殺者の持参した鉄砲を使い実演!!

羽(羽長)に頼んで俺に標準を合わせて鉛球を打ち込んでもらう。

良い子はマネしないでね!!


「な!!」「嘘だろ!!」「人なのか?」「剣豪とはこれほどの・・・」


立ち稽古に来ていた多くの者が驚愕している。

政宗君も口をあんぐり、小十郎殿も目をギョロリ、藤五郎殿(伊達成実しげざね)は何故か好戦的な笑みを讃えている。

一発目はわざと胸で受けたけど、衣には穴が開いたけど体には傷は無い。

少しだけ痛かったので取り合えずこれで当っても問題無い事を証明し、次に2発は弾を躱す。

3発目は脇差で弾き、4発目は同じく脇差で斬り飛ばす。

5発目は美羽から取って来て貰った太刀で居合斬りを披露。


「蔵人殿がばけも・・・並ではない達人であると言う事は理解致しました」


おい!「化け物」とか言おうとしただろ!!

一応は嫁さんたちも硬気功で撃たれても大丈夫。

でもね~玉の肌に何かあったら大変なので出来るだけ躱す様にと指導しているよ。

息子たちも追々出来る様にと指導中。

子供たちで俺と同じことが出来るのはまだ里子だけなんだよね~

今回、里子とは別行動。

千代とともに派遣中だ。


★~~~~~~★


縫殿助ぬいどのすけ様」

「首尾は?」

「失敗、致しました・・・」

「何?」

「いえ、銃撃はしたのですが木刀でいなされ・・・」

「はぁ~?何を言っておる?」

「実は・・・」


手の者から報告を受ければ信じられる事を言って来る。

刺客の鉄砲上手の者は二位蔵人様の眉間に狙いを付け見事に狙撃したそうだ。

しかし、当ると思った瞬間、手に持つ木刀でいなされたという。

持っていた木刀が一部吹き飛んだので間違いないという。

銃撃を受けるや否や二位蔵人様の配下の者が動き捕まえられそうになった為、刺客の者は毒を煽り自死したという。

その後には恐ろしい事を始めたという。

刺客の者が持ち込んだ鉄砲を二位蔵人様の息子の帯刀先生様(羽長)が親目掛けて銃弾を撃ち込んで行ったという。

一発目は胸で受けられたという。

普通の者ならそれで終わりだが、二位蔵人様は平然と「次」と言い次の銃撃を催促されたという。

次からは躱したり逸らしたり、終いには太刀で斬り落としたという。


「化け物か!!」

「はい・・・あやかしの類か神仏の生まれ変わりと言われても驚きませぬ・・・」

「あははははは~相手として不足なしじゃな」


儂の武士もののふとしての魂が歓喜で震えておる。


「次の手を用意じゃ!!」

「流石に・・・良いのですか?」

「既に進退極まっておる!!お主も既に只では済まぬ事位解っておろう?」

「それは・・・解りました。次の手を準備致しまする・・・」


配下の者に命じ次の手を準備することとした。

後は無い、二位蔵人様だけではなく、藤次郎様にもその命を我らに捧げて頂かなければなるまい。


〇~~~~~~〇


少しだけ主人公と別行動の千代たちの事を書いておりますが、伊達家の件が落ち着いたらそこも書きたいな~と思っております。

千代たちが今何をしているか?

ある意味で重要です。

さて、久しぶりに主人公が剣豪らしい?事をしました。

いや、剣豪だから銃撃受けて大丈夫とか無いですね・・・

「気功」と聞くと宗教的なイメージを持つと思いますが、道教・仏教などの宗教でも利用されてきた経緯がありますのでそこからのものかと思います。

「気」というものは東洋医学において目には見えないながらも何らかの働きのあるものとして「気血きけつ」と呼び気と血は体を巡る物と捉えました。

血は血管を通して全身を巡り、気は経絡けいらくを巡る物とされています。

これは陰陽五行の思想で体系付けられていますが、それは置いておき、気功は主に2つに大別されると言われています。

体内の気を循環させコントロールする能力を高める内気功と良い気を外から体内に取り入れて悪い気を体外に排出させるなどの気の入れ替えを行って体を癒やす外気功の2つです。

今回作中で主人公の蔵人が使用した「硬気功」はどちらに大別される物かと言われると両方となりますが、日本独自の分類方法の一つで護身術など相手を倒したりするものを「硬気功」と呼び、美容や病気の治癒など健康面に関する気功を「軟気功」と呼んだりもしますが、今回の「硬気功」とは少し意味合いが違うかもしれません。

中国武術の1つに「通背拳つうはいけん」というものがあります。

これを聞くと 漫画家の前川たけし先生の「鉄拳チンミ」や同じく漫画家の大暮維人おおぐれいと先生の「天上天下」を思い出す方居るかもしれません。

中国の伝説上の猿「通臂猿猴つうひえんこう」に由来した武術と云われます。

「西遊記」の二次創作とでもいうべき立ち位置の作品で「後西遊記」という作品に「通臂仙」という者が出て来ます。

この人物は斉天大聖(孫悟空)に仕える物乞いの恰好をしたギョロ目の老人で、本性は猿のような妖怪とされています。

恐らくは「通臂猿猴つうひえんこう」モチーフのキャラでしょうけど。

話を戻し、この憲法は迅速果敢な攻撃が最大の武器とされ、腕を鞭の様にしならせ遠くまで打撃を放ったり、目にも止まらぬ速い打撃を特徴とすると云われます。

その修練の中に「硬身法」という物があるそうですが、早い打撃という事はそれだけ体にも負担が大きく自分も傷つく恐れがあります。

そうならない為に体を硬質化させる修練法らしいのですが、それに近いかもしれません。

ということで、本来の意味合いの「硬気功」というより創作的な「硬気功」と言う事になるかもしれません。

そう言えば、佐島勤先生の「魔法科高校の劣等生」で鋼気功がんしこうという気功術を元に皮膚の上に鋼よりも硬い鎧を展開する魔法を思い出しました。

イメージ的にはそれに近いかも?

まぁあの魔法程の防御力は無い物となるのでしょうけど・・・

次回は更なる行動で主人公無双します。

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